嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第3-5節:希望の報せと『あの人』の正体

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 そんなポプラを見て暗殺者アサッシンのひとりは不機嫌そうに舌打ちをしつつ、黒い感情とにらみをかせたような低く太い声で言い放つ。

「ポプラ、変な気は起こすなよ?」

「……わ、分かっているのです! 私はシャロンを殺すのですっ!」

「フフッ、それでいい。――さぁ、お前ら全員、俺たちから離れろ! ここから逃がしてもらおうか!」

 暗殺者アサッシンたちは手振りで道を開けるよう、周りにいるみんなにうながした。

 それに対して兵士さんたちは戸惑いと抵抗を感じるような表情で一歩だけ後ずさりをするが、その足取りは鉛のように重い。



 ――と、その時だった。

 不意に窓の外から何かの物音がしたかと思うと、室内に黒い影が飛び込んでくる。

 翼のはためく音と風、獣の臭い。それは鋭いクチバシや翼の先端に付いたかぎ爪が特徴的なバトルバードだ。

 彼は窓際に降り立つと、何度か翼をはためかせたから器用に折りたたんで『クエーッ』と低く鳴いた。その状況に私はもちろん、暗殺者アサッシンたちを含めてその場の全員が目を丸くしている。



 …………。

 ……いや、リカルドとナイルさんだけは落ち着いているというか、瞳を輝かせてどこかホッとしているような感じ。まるで彼の到着を待ちわびていたかのようだ。事実、リカルドもバトルバードもお互いに見知っているようで、警戒している様子はない。

 そういえば、このバトルバードにはなんとなく見覚えがある。

 そうだ、モーリスさんの家で飼われていたバトルバードの一羽とよく似ている気がする。ハッキリとは覚えていないし、見分け方だって知らないから私の単なる思い過ごしかもしれないけど。

 直後、冷静にバトルバードのところへ歩み寄るリカルドを見て、暗殺者アサッシンのひとりがあわてて叫ぶ。

「それはお前の使役したバトルバードかっ? 俺たちに近付けさせるな!」

「分かっている。どうやら僕に手紙を運んできただけらしいから安心しろ」

「動くなっ!」

「中身を読むくらいならいいじゃないか。むしろ手紙で僕の両手がふさがって、貴様らにとっては不意打ちされる危険性が減る。都合がいいだろう」

 狼狽うろたえる暗殺者アサッシンたちを尻目に、リカルドは全く意に介していない様子で淡々と答えた。そしてバトルバードの足にくくり付けられていた小さな筒を取り外し、その中から丸められた紙切れを取り出す。

 彼は無言のままその内容に目を通すと、何度か小さくうなずいてから顔を上げる。

「……なるほど。おい、ポプラ。お前にとって嬉しいしらせだ。アジトで拘束されていたお前の両親と幼い弟や妹たちは、僕の部下たちが保護したらしい。安心していいぞ」

「えっ?」

 リカルドの話を聞いてキョトンとするポプラ。どうやら事態が掴めていないようだ。

 何もかも分からない私の場合はチンプンカンプンで、反応のしようがなくて無表情になってしまっているけど。

「僕は『とある人物』からポプラが間者ではないかという調査報告を受け、その者にさらなる情報収集を命じて密かに探らせていたのだ。もちろん、詳細は明かせんがな。なぜならどこで誰が聞いているか分からんからな」

「ご領主様、そ、それじゃ、本当に私の両親たちは……」

「かつて僕は言っただろう。アンデッド事件でシャロンを助けてもらったあと、『いつかその恩を必ず返す』と。その時点でお前の家族の状況について、ある程度の報告を受けていたからな。ずっと救出のタイミングをうかがっていたというわけだ」

「あ……っ……」

 途端にパアッとポプラの表情は明るくなり、瞳には希望の光と輝きが戻った。

 涙は悲しみに包まれたものから嬉しさにあふれたものへと変わり、それはほほを伝って地面へとこぼれ落ちる。そして我慢することなく激しく肩を振るわせる。



 ……うん、確かにリカルドのそ言葉は私も覚えている。

 そっか、あの時に彼は全て知っていた上であんなことを言ったんだ。きっと暗殺者アサッシンたちのアジトの探索とか状況とか色々と事情があって、ポプラの家族の救出が今になってしまったに違いない。

 それにしてもポプラの素性を調べたり裏で色々と動いたりしている『とある人物』って誰だろう? まぁ、状況を考えればなんとなく想像がつくけど……。

 の正体はフィルザード家の諜報ちょうほう員――しかもおそらくジョセフ直属の諜報ちょうほう部隊に属しているんだろうな。私たちのすぐそばに自然な感じでいるから、全然そんなことは想像もしていなかった。

 でも彼がそういう立場だという前提で考えれば、色々と納得のいくことも多い。普段はのらりくらりとしているけど、やっぱり単なる一般人ではなかったんだ。


 ――すっかりだまされちゃいましたよ、モーリスさん!


 私はバトルバードに目をやりながら、今この瞬間もどこかで活躍しているであろうモーリスさんに対して想いをはせせた。


(つづく……)
 
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