嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第1幕:前向き少女の行進曲(マーチ)

第4-2節:疾風迅雷(しっぷうじんらい)の展開

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「……疲れた」

 私は後ろへ体重を傾け、背中からベッドへ身を任せた。ふかふかのマットの感触が心地良くて、思わず大きく息をく。

 そのまま全身から力を抜いて天井を見つめつつ、ボーッとして休息をとることにする。というか、しばらくは動きたくない。


 …………。

 私の今の力じゃ、せいぜいフィルザード全域に弱い雨を数十分くらい降らせるので精一杯。それにこのやり方は事態の根本的な解決にもならない。一方、これでしばらくは作物も命を繋げられるから、その間に自然な形で雨が降ってくれたらありがたい。

 まぁ、それがなければまた私が精霊さんの力を借りることになるだろうけど……。

 だとすると、今後は最大魔法容量を高めるために瞑想めいそうや鍛錬をしていった方がいいのかもしれない。そうすれば増えた魔法容量の分だけ使用する体力を減らせて、疲労も軽減できるわけだから。

 そんなことを考えていた時のこと、不意にドアをノックする音が部屋に響く。おそらくポプラが戻ってきたのだろう。

 私は気楽な感じに『どうぞーっ!』と返事をして、顔だけをドアの方へ向ける。

「――失礼いたします」

「えっ? ルーシーさん!?」

 予想に反し、部屋に入ってきたのはルーシーさんだった。

 私との接触をあまり快く思っていない雰囲気だったから、彼女の方から会いに来るなんてちょっと意外な感じがする。表情は相変わらず落ち着いていて、クールな印象なのは変わらないけど。

 私はゆっくりと上半身を起こし、髪を手で軽く整えてから彼女の方を向く。

「ルーシーさん、どうしたんですか?」

「シャロン様、少々お時間をよろしいでしょうか?」

「は、はい。それは構いませんけど……」

「シャロン様とぜひともお話がしたいとおっしゃっている御方がいらっしゃいます。ご案内しますので、一緒においでいただけませんでしょうか」

「私と話ですか? わ、分かりました。でもこのまま部屋を離れたら、ポプラが戻ってきた時に私の姿がなくて心配するんじゃ……」

「シャロン様をご案内したあと、ポプラには私から事情を説明しておきますのでご安心ください」

「そ、そうですか、分かりました。では、私を案内してください」

 その返事を聞くと、ルーシーさんは小さく頷いて部屋を出る。私もすぐに立ち上がり、鏡の前で手早く髪と服を正してから彼女のあとを追う。

 そしてふたり揃ってやってきたのは、2階にある立ち入り禁止のエリア。前を歩くルーシーさんはそのことを気に留めることなく先へ進んでいく。このまま私も付いていって問題ないのだろうか……?

 私は戸惑い、さすがに歩を進めることを躊躇ちゅうちょする。

「ルーシーさん、ちょっと待ってください。ここは立ち入り禁止のエリアでは? 私が勝手に入るわけには……」

「今回に関しては許可が出ています。今後もそうなるかは私にも分かりかねますが」

 ふと立ち止まったルーシーさんは、顔だけをこちらに向けて言い放った。いつもと表情が変わらないから、彼女の考えも想いも私には分からない。

 ただ、これでハッキリしたことがある。それは――

「……やっぱりここには、どなたかがいらっしゃるんですね」

「はい。シャロン様をお呼びするよう、私に命じたのもその御方です。私はその御方の専属メイドをしております」

「今回は素直に答えてくれるんですね。――あ、私はこれからその人にお会いするんだから、隠す意味はないか」

 私のその言葉に、ルーシーさんはニタリと怪しい薄笑いを浮かべる。

「……私が本当のことを話しているとは限りませんよ? そう簡単に信じてしまってよろしいのですか? シャロン様をおとしいれるために、ここへ連れてきた可能性だってありますよ?」

「確かにそれも考えられなくはありませんが、沈着冷静なルーシーさんならもっと緻密ちみつな計画を立てると思います。それにこの段階でそういう話をすることこそが不自然ですよ」

「……ふふ、さすがシャロン様です。どうか私のつまらぬたわむれをお許しください」

 ルーシーさんはこちらへ向き直って丁寧にお辞儀をすると、再び前へ歩き始めた。依然としてミステリアスな人だけど、意外に気さくなところもあるのかもしれない。

 それから程なく私たちは突き当たりの部屋の前へ辿り着き、ルーシーさんがドアをノックする。

「ルーシーです。シャロン様をお連れしました」

「どうぞ、入って!」

 中から若い女性の返事がした。優しくて弾むような声。その穏和おんわで澄んでいる声質には、隠しきれない気品が漂っている。私のような“エセお嬢様”なんかとは根本的に雰囲気が違う。

 ルーシーさんという専属のメイドが付けられていることからも、それなりに立場のある人なのだろう。ゆえに私は緊張した面持ちで、ルーシーさんに続いて部屋の中へと入る。


(つづく……)
 
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