嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第1幕:前向き少女の行進曲(マーチ)

第4-3節:美しき女性と想定外の危機

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 するとそこはさわやかな花の香りに包まれていて、壁には暖色系の色が中心のタペストリーが数枚。大きな窓にはフリルの付いた可愛らしいデザインのカーテンが設置されている。

 そしてその窓の横にあるベッドには、ルーシーさんと同年代の女性が上半身を起こして座っている。


 あぁ……なんて綺麗きれい女性ひと……。


 リカルド様と同様の黒い髪をストレートのセミロングにして、肌はそれとは対照的に雪のような白さ。さらに通った目鼻立ちと黒い瞳で、息を呑むような神秘的な美しさがある。同性の私でさえ思わずかれてしまいそうだ。

 彼女は私と目が合うと、ニッコリと優しく微笑む。

「いらっしゃい。初めまして、シャロン。私はシーファ。リカルドの姉です。年齢はあの子より10歳くらい上になるかな」

「お義姉様ですかっ!? こちらこそ初めましてっ! シャロンと申します! あ、あのっ、私は何も存じ上げず、ご挨拶が遅れて申し訳がありませんっ!」

 彼女の素性を知った私は色を失い、慌てて深々と頭を下げた。

 最初に見た瞬間になんとなくリカルド様と顔立ちが似ているなと思ったけど、まさかお義姉様だったとは! なぜ誰も彼女の存在を私に教えてくれなかったんだろう。機嫌を損ねていないか、心配になる。

 内心、ビクビクと震えながら棒立ちしていると、お義姉様はクスッと吹き出す。

「気にしないで。ほら、ご覧の通り私は体が弱くてベッドからあまり離れられないの。だからリカルドも私の体調を気遣って、しばらくはあなたに私のことを紹介する気はなかったでしょうから」

「そ、そうだったんですか……」

「あ、ルーシー。私はシャロンとふたりだけで話がしたいから外してもらえる?」

「かしこまりました。では、ポプラを見つけて事情を話したあとは、彼女と一緒にドアの向こうで待機しております。何かありましたらお呼びください」

 そう言うとルーシーさんは静かに部屋から出ていった。こうしてこの場は私たちだけの空間となり、ますます私の緊張感が高まる。

 まさか豹変ひょうへんして罵倒ばとうされたり意地悪されたりしないよね……?

「シャロン、こっちに来て座って。緊張せず楽にしてくれて構わないから」

「は、はい。失礼します」

 お義姉様の手招きに応じ、私は恐る恐るベッドへ歩み寄っていった。そしてそのすぐ隣に置いてある椅子へ腰掛ける。

 静まり返っている室内。響いているのは、窓ガラスの外側で柔らかく降り続ける雨の音だけ。どうやら雲はまだ消えずに残っているらしい。さっきと比べれば、だいぶ空は明るくなってきているようだけど。

 精霊は使役したタイミングとその能力の発動している時間にズレがある。特に天候系はその振れ幅が大きいし、いつも全く同じ状態になるわけでもない。そういったランダム性も含んでいる。

 今回の場合、空模様から察するともうしばらく雨が降ってくれると思う。

 ――と、私が外を眺めていると、お義姉様がポツリと呟く。

「雨、降ってるね。何か月ぶりかな。ほかの地域から見れば弱い雨だろうけど、これでもフィルザードではまとまって降っている方なんだ」

「そうなんですか。でもこれで作物には恵みの雨になりましたね」



「……この雨を降らせたの、シャロンだよね?」



 落ち着いた口調で放たれたお義姉様の言葉――。

 その全く想定していなかった指摘に、私の心臓は大きく跳ねる。瞬時に最高速まで高鳴った胸の鼓動は、今も血液を激しく全身に送り出し続けている。不意を衝かれたということもあって、動揺がなかなか収まらない。

 ただ、ここでこれ以上に明確な反応をしてしまうと、それこそ『藪をつついて蛇を出す』だ。

 そもそも現段階ではお義姉様が正確に何もかも理解しているとは限らない。私が天候魔法や儀式などによって雨を降らせたと思っているのかもしれないし、あるいは当てずっぽうや思い込みで言った可能性だってある。

 もちろん、精霊を使役したという真実に辿り着いていなかったとしても、天候を操る力があると思われるだけでもマズイことには変わりないけど……。

 だから私は薄笑いを浮かべて平静さを装い、冗談めかして否定する。

「え? まさか私にそんな力はありませんよ」

「うんうん、使としては当然の反応だね。その力を持つことを無闇に明かすことは危険だもんね」

「何をおっしゃっているのか、私にはさっぱり分かりませんが」

 依然として素知らぬ振りをしつつも、私の心の中では明確に緊張感が高まった。

 なぜならお義姉様は『雨を降らせたのが精霊の力』だと確信しているようだから。そうじゃなかったら『精霊使い』という言葉がピンポイントで出てくるはずがない。

 私は自然と身構え、周囲に警戒を向ける。いざとなったら脱出や戦闘をしなければならなくなるかもしれない。それはワナや隠された武器、暗殺者アサッシンなどの存在も意識しておかなければならないということでもある。


 ――っ!?

 もしかしてルーシーさんを外させたのは、私の逃げ道をふさぐため? ドアの向こう側にいるのなら、あちらから部屋を脱出するのは難しい。先手を打たれたか……。

(つづく……)
 
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