嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
33 / 178
第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)

第1-7節:執務室での初仕事

しおりを挟む
 
 食事が終わり、私はリカルド様やジョセフさんと一緒に執務室へ移動した。

 この部屋は屋敷の最上階に位置し、同じフロアには応接室やリカルド様の控え室などが設けられている。要するにこの一帯は公務や外交など、外向きのことに対応するための中枢ちゅうすうと言っていい。

 執務室の広さは私の個室の4倍くらい。室内の最奥にはひときわ渋くて重厚感のある机があって、そこには積まれた書類の山がいくつも連なっている。おそらくその席にリカルド様が座って書類に目を通したりサインをしたり、あるいは判を押したりといった公務を行うのだろう。

 さらに手前にはそれよりやや簡素な机がいくつかあるほか、中央には大きなテーブルと椅子が設置されていて会議も出来るようになっている。また、壁際には天井まで至る本棚がいくつも並んでいて、どの本も見るからに歴史を感じさせてくれる。

 そのほか、ペンや紙など文房具類が置かれた戸棚や手を洗うための流し台、右奥にはどこかの部屋に通じているであろうドアがある。

 早速、最奥の机の座席に着いたリカルド様は首を前後左右上下に動かしたり伸びをしたりしてから、大きく息をつく。

「さて、今日も公務を処理していくか。シャロンは僕の左横に立って、公務の内容ややり方を見聞きして学ぶといい。もちろん、疲れたら休んでいいし、気になることがあれば声をかけてくれ。この部屋での過ごし方はシャロンに任せる」

「承知しました。公務を拝見する際に、メモをとっても構いませんか?」

「この部屋から持ち出さないなら許可しよう。――そうだな、そういうことも考えるとシャロンにも専用の机が必要だな。あっちの机が空いているから、それを使うといい。ただ、そのためには机の上や引き出し内をなんとかしなければならないが」

「ありがとうございます。では、少しずつ片付けながら使わせていただきます」

 私は指定された机のところへ行き、状況を確認することにした。そして実際にそれを目の当たりにしてみると、思った以上に混沌としていることを理解する。

 まず机の上には書類や本が散乱し、場所によっては分厚くほこりかぶっている。少し触れただけでそれが舞い、たちまち鼻や喉を刺激してくる。さらにインクや紙の臭いも混ざって漂い、私は耐えられずにむせてしまう。

「ケホッ、ケホッ! う……っ……」

 思わず顔をしかめ、服の袖で口元をおおうう私。これでは確かに掃除をしなければ何も始まらない。もちろん、そのためにはバケツや雑巾などを用意する必要があるけど、部屋の中を見回してもそれらが置いてある様子はない。

 こういう時、精霊の力を借りれば道具がなくても綺麗きれいにすることが出来るんだけどな……。

 ただ、この場には少なくともジョセフさんがいるし、リカルド様だけだったとしても私の身を案じて力を使うことを止められる可能性がある。となると、やっぱり自力でやるしかない。

「リカルド様、机の掃除をしたいので自分の部屋に道具を取りにいってもよろしいですか?」

「あぁ、問題ないぞ。水をんだり捨てたりするなら、そこの流し台を利用するといい。僕たちはほとんど使っていないが、今も蛇口からきちんと水が出る。手洗い専用で、飲用ではないがな」

「ありがとうございます」

 リカルド様の許可も出たので、私は執務室を出て自室へ戻ろうとした。

 でもドアノブに手をかけようとしたその時、公務の準備をしていたジョセフさんが私を呼び止めて話しかけてくる。

「シャロン様、念のために申し上げておきますが、執務室への立ち入りはリカルド様と私が揃っている時だけにするようお願いいたします。もちろん、普段はドアに鍵が掛かっていますので、勝手に入れるということでもありませんが」

「はい、分かりました」

「文房具類はそこの戸棚に入っている物をご自由にお使い下さい。ただし、無駄遣むだづかいをしないようコスト意識をしっかりとお考えの上でお願いいたします。スピーナからお小言こごとたまわっても構わないというなら、その限りではありませんが」

「あはは……気を付けます……」

 こうして私は自室に戻り、執務室にバケツや雑巾などを持ち込んだ。その後は机の掃除をするとともに書類や本などの整理、引き出し内の片付けなどを進める。

 ちなみにそこに置いてある書類はどれも古くて重要性の低いものということで、それらは捨てても構わないらしい。ただ、万が一のことを考えて今はひもでまとめ、机の下や周りの空いているスペースに保管しておくことにする。

 もちろん、いずれその内容が私にも理解できるようになったら、あらためて精査して処理方法を考えるつもりでいる。

 また、本は本棚の空いている場所へ、まだ使える文房具類は戸棚へ、ゴミはゴミ箱へ、それ以外の物は箱の中にまとめて入れておくなど整理整頓を進めていく。

 結果、この日の午前中は机の片付けでほとんどの時間を費やしてしまい、公務には参加できなかったのだった。

 でもその公務に全力を傾けるためにも、まずは環境作りが必要だもんね。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...