嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)

第2-3節:シャロンの計画

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 でもそこに彼の優しさと誠実さを感じる。だからこそ、私もその想いに応えてずっと支えていってあげたい。

 もはや迷いなんか一切ない。私は真っ直ぐに彼を見つめ、強く言い放つ。

「私はあなたの妻です。リカルド様のためなら重荷でもごうでもともに背負います。その覚悟はとつぐことが決まった時からすでに出来ています」

「……フッ、出来すぎた妻だな、キミは。ということは、もちろん世継ぎのことも考えてくれているのだろうな?」

「っ! こ、こんな時に何をおっしゃるのですかっ!?」

「照れているのか? だが、ハッキリと言っておく。僕はキミとの間に子を成したいと真剣に考えている。キミと約束を交わしたあの瞬間、その決心が付いた」

「……っ……!」

 リカルド様の言葉を聞いた瞬間、心臓がバクンと大きく跳ねた。そのまま鼓動は即座に最高潮に達し、痛いくらいに血液を全身に送り出し続けている。それは収まる気配などなく、頭の先端から足の指先まで熱くなってくる。

 心の中では嬉しさと照れくささが混じり合って、顔から火が出そうだ。


 でもなんだろう、この満たされたような気分は……。


 気のせいかもしれないけど、彼に対する愛しさが一段と増したような気がする。気付けばついつい彼を見つめてしまっている。

「もちろん、無理強いはしない。あくまでも僕にはその気があるということだ。もしかしたらスピーナが何か余計なことを吹き込んでくるかもしれないが、これが僕の本当の気持ちだ。決して惑わされないでくれ」

「は……はいっ!」

 いつの間にか私の目元には涙の粒が浮かんでいる。それにこんなにも嬉しくて心強くて、勇気が湧いてくるなんて……。

「ジョセフよ、惚気のろけてすまないな」

「いえ……構いませんが……。ところで、リカルド様がおっしゃった『あの瞬間』というのは?」

「それは秘密だ。ただし、やましいことは何もしていないとだけ言っておこう」

「は、はぁ、そうですか……」

「僕はシャロンを信用している。彼女と出会えた運命に僕は感謝しかない」

「……リカルド様。そろそろ公務の話を進めましょう」

 私たちの話を淡々と聞いていたジョセフさんが、今のリカルド様の言葉を聞いた途端になぜか不機嫌そうな顔をした。声にも少し苛立いらだちが混じっていたように思う。

 何が気にさわったのだろう? リカルド様が私を信用しているということか、それとも出会えた運命が云々というところか? もちろん、真相は本人にしか分からないけど……。

 いずれにせよ、彼はそのまま何事もなかったかのように公務を再開させたのだった。





 その後、正午近くになってこの日の公務が終わり、私たちはそれぞれ書類の整理や道具の片付けなどを行っていた。

 ちなみにそれが済んだら3人揃って食堂へ移動して昼食。さらに午後になればリカルド様たちはナイルさんを加えて畑で農作業、私は自由時間となっている。日によって多少の違いはあれど、通常時はこれがおおまかなルーティーンだ。

 ――そしてこれから私はを始動させようとしている。これはリカルド様と約束を交わしたあの晩からずっと考え続けてきたもの。

 ただ、それを実行するためには彼の許可を得なければならないであろうことが含まれているので、食堂へ移動するまでの時間を利用して相談してみることにする。

 早速、早々に片付けを済ませた私はリカルド様のところへ歩み寄って声をかける。

「あの、リカルド様!」

「ん? どうした、シャロン?」

「私、領内を広く見て回りたいのです。まだ私は国境からこのお屋敷へ来る道中しか見ていないものですから。百聞は一見にしかずとも言いますし、各地域の状況を把握するためにもどうかお許しください」

「なるほど、確かにそれは今のシャロンにとって得るものが多いかもしれないな。うん、視察を許可しよう。では、明日の午前中にでも僕が一緒に――」

 リカルド様が軽快な口調でそこまで言ったところで、室内には強く机を叩く音が響いた。何事かと思い、私とリカルド様は驚愕きょうがくしながらその音がした方を振り向く。

 するとそこにあったのは、額に青筋を立てながら体を震わせているジョセフさんの姿。目から火花を散らし、リカルド様をにらみ付けている。まるでジョセフさんの心にある地雷をリカルド様が踏み抜いてしまったかのような感じだ。

「リカルド様! 最近は公務が立て込んでおります! 私だけで処理しきれない状態なのは、リカルド様もご存知でしょう! どうかお察しください!」

「う、うぅむ……」

「お察しくださいッ!!」

「わ、分かった。公務を優先するから、そんなに目くじらを立てるな……。だが、そうなるとシャロンに視察をさせてやることが出来ん。ひとりで行かせるわけにはいかないし、午後は僕には農作業があるからな……」

 ジョセフさんの鬼気迫るような迫力にたじろいだリカルド様は、ついに白旗を揚げた。そしてどうやっても時間の都合がつかない状態に頭を抱えている。

 さすがに彼の正論を突っぱねてまで公務を休むのは、良心が痛んだらしい。


(つづく……)
 
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