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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)
第1-6節:精霊の力を借りて
しおりを挟むその後、私はポプラとともに水と揚げ花を配っていき、全員に行き渡ったのを確認してから荷車の荷台に腰を掛けた。
直後、おのずとみんなの注目が私に集まり、今までザワザワとしていたその場が静まり返っていく。緊張感に包まれる中、私は深呼吸をして心をより鎮めると、ポケットからオカリナを取り出して構える。
――これは表向きにはみんなに対するオカリナの演奏。
でも実際にはそれだけじゃなくて、大地の精霊を使役するためのものでもある。
もちろん、精霊の力を借りる目的は地面を柔らかい状態にして、水路を掘りやすくすること。トミーさんは私の演奏を聴くと作業がスムーズに進む気がすると言っていたけど、それは彼自身のやる気というほかにそういう理由があるわけだ。
当然、本当は大地の精霊の力を使ってそのまま水路を造ってしまう方が、手っ取り早くて効率的なのは言うまでもない。ただ、それだと周りから見たら短期間で勝手に大規模な施設が完成してしまうことになるわけで、明らかに不自然な現象となる。
そうなれば誰かに私の能力を悟られる危険性があるし、なにより全てを精霊に任せてしまうと私自身の体に掛かる負担も大きくなる。
水路の規模や範囲を考えれば対価として消費する魔法力や体力の総量は莫大となり、おそらく私の持つそれらの容量では足りない。結果、確実に寿命を大きく削ることになるだろう。
個人的には私自身の体がどんな状態になっても構わないという覚悟はあるけど、無理をしないというリカルドとの約束があるから、それは奥の手として取っておきたい。
「ふぅ……」
私はあらためて大きく息をついた。そして精神の波長が整ったところで『大地の精霊よ、我が願いに応じたまえ……』と念じてから吹き口を唇に添える。
これから演奏するのは『愉快な旅芸人』。タイトル通り、楽しい雰囲気と旅情を感じさせる旋律の曲だ。気分が落ち込んでいても、聴いているうちに不思議と元気が出てくる。もちろん、それは演奏している側も同じだけど。
しばらくするとオカリナから音とともに銀色の光が流れ出し、どこからかドワーフのような姿をした大地の精霊が現れる。最近は最もお世話になっている精霊だからか、お互いにすっかり顔なじみといった空気感だ。
私は目の前でフワフワと浮かんでいる彼に視線を合わせ、願いを念じる。
『大地の精霊さん、水路を掘る場所の地面を柔らかくしてください。すでに掘り終えたところは壊れにくいよう堅牢にしてください』
その想いを受け、大地の精霊は得意気な顔をしながら大きく頷いた。そして水路に近付いて、舞いのようなものを踊り始める。
するとそれに合わせて彼の体から緑色の光が放たれ、これから掘削する場所などへと染みこんでいく。傍目には変化が分からないけど、きっと私の願い通りに大地が改良されているのだろう。
それは一般的な工事の進捗状況よりも早く作業が進んでいることやトミーさんの証言などから推測できる。私自身も精霊の力を行使している手応えがあるし。
やがて演奏が終わり、大地の精霊は私に向かって大きく手を振るとその場から去っていった。一方、周囲は作業員さんたちからの盛大な拍手に包まれている。
それを目の当たりにした私は達成感と満足感に心を躍らせつつ、小さく息をついたのだった。
(つづく……)
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