嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第4-2節:無意識の仕草

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 確かにポプラは私の使用人という立場だけど、それと同時に大切な親友でもある。だから出来ることならもっと労ってあげたい。ただ、状況的になかなかそれが出来ないのが歯がゆい。

 せいぜい言葉で気持ちを伝えたり気遣きづかってあげたりすることくらいで、お給金や待遇面ではほとんど報いられていないのが悔しいし、悲しい。

「ポプラにはいつも申し訳なく思ってる。こんなことくらいしかしてあげられなくてゴメンね」

「うぅ……シャロン様は……ぐすっ……充分に私に大切なものを……くれているのです……すんっ……」

「大切なもの?」

「ぐすっ……シャロン様は……変なところで鈍感なのです……」

「よく分からないけど、まぁいっか。さぁ、周りに人が増えてきたら食べづらくなっちゃうし、どんどん毒味をしていって。私のための大切な役割だよ」

「はい……はいなのですっ!」

 涙で頬を濡らしながらも太陽のようないつもの無垢な笑顔を取り戻したポプラは、元気よくうなずいた。そして遠慮のない感じで、テーブルの上に並べられている料理に手を付けていく。

 こうして見ていると、彼女は本当に美味しそうに食べている。ただ、夢中になっている割に上品さを失っていない食べ方なのは素晴らしいし、見事だと思う。

 まるで幼い頃からしっかりテーブルマナーをしつけられていて、無意識のうちにそれが出ているかのような感じ――。


 無意識のうちに……か……。


 でも確かポプラは一般的な平民の家で生まれ育ったんだよね? 以前にそういう感じの話をしていたような気がするし。もちろん、それは本人がそう言っているだけで、証明されているわけじゃないけど。

 ……そっか、それって今まで気にすることじゃなかったから、ポプラの話を信じ切っていて第三者にその確認をしたことがなかった。

 いずれにせよ、フィルザード家にメイドとして雇われる時にジョセフとかスピーナさんとか、採用に関わった誰かがある程度の下調べをしているはず。そして特に何の言及もされていないところを考えると、彼女は平民出身で間違いない――と思う。



 …………。

 あらためてポプラをじっくりと眺めてみると、綺麗きれいな顔立ちでどことなく気品も感じる。

 ただ、彼女の少し抜けたような性格がそれをかすませて、普段は目立っていないだけなのかも。仕草や雰囲気だけを見れば、どこかの良家のお嬢様と言われても不自然さはあまりない。

「……ん? シャロン様、どうなさったのです? 私の顔をジッと見つめて……」

「えっ? ううん、なんでもない! 本当に美味しそうに食べるなぁって思って」

「てはは、そうだったのですか……。それにしても、ご領主様たちはなかなかお見えにならないですね」

「そうだね。リカルドならこの会場に来たら真っ先に私を捜して飛んでくるはずだから、気付かないってことはないもんね。つまりきっとまだ応接室での挨拶あいさつが続いてるんだと思う。ノエルくんやカイン様、アラン様も姿がないし」

 舞踏ぶとう晩餐ばんさん会は開始の時間がキッチリと決まっているわけじゃなくて、主賓しゅひんや主催者側の裁量に任されている部分が大きい。当然、彼らの都合が優先され、挨拶あいさつや歓談が長引けば会場に入るのも遅くなる。

 もちろん、待たせる側に配慮すべき重要な相手がいるなら、それを切り上げるということもあるだろうけど。話の続きは会場ですればいいわけだし。

 それを考えれば、現時点で会場内にいるのは主賓しゅひんの一族およびその側近や使用人がほとんどということになる。それ以外には主催者側の関係者と警備兵といったところか。

 ――と、そんなことを考えていた時、こちらに向かってどこかの令嬢とそのメイドが真っ直ぐ歩み寄ってくることに気付く。

 その令嬢は私よりも二、三歳くらい年上。赤色や黄色を基調としたきらびやかな色彩に、フリルやレースなどを複雑に組み合わせたデザイン性の高いドレスを身につけている。

 さらに頭や耳、首元、指などには宝石を散りばめたアクセサリーが輝き、ヒールもよく磨かれている。

 一方、絹の自然な色合いを活かした私のドレスは細かなデザインこそ凝っていてスタイリッシュではあるけど、それと比べたらハッキリ言って地味。アクセサリーだって銀のティアラとクリスタルのネックレスくらいしかない……。

 ただ、いずれもフィルザード家の女性に代々伝わってきた由緒と格式の高いものだとお義姉様やスピーナさんから伝えられている。何も恥じることはない。

 私はあらためて気を引き締め、内面の緊張を隠しつつその場にたたずむ。


(つづく……)
 
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