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第三幕:盗賊と商人
第二節:ギルドマスター
しおりを挟む俺はルナと食事の約束をしたあと、フリースペースのさらに奥にあるお頭の部屋へ向かった。
ここは出入りが激しいこともあって、部屋のドアは常に開け放たれたまま。そこを進むと、目の前には今にも崩れてきそうなくらい高々と積み上げられた本や書類の山がそびえ立っている。
この付近はあまり掃除をしていないのか、少しホコリっぽい。その隙間を抜けてさらに奥へ行くと、多少は整頓された空間が広がる。
そこに並べられた机では、お頭や補佐役のノインさんとカレットさんが書類に目を通したり判子を押したり、カネの勘定をしたりといった事務作業をしている。
ちなみに三人とも普段はギルドの管理や運営に関する仕事をメインにやっているが、難しい案件では依然として自ら現場に出ている。当然、盗賊技能は俺なんか足下へも寄りつけないレベル。
要するに、今も第一線で活躍している超一流の盗賊でもあるわけだ。
「……ん? おぅ、バラッタか。今日はどんな調子だった?」
俺の姿を確認したお頭は手を止め、顔を上げてこちらへ向けた。
白髪や深く刻まれたシワが、揺らめくランプの炎によって際立って見える。そのせいか、実年齢よりも十歳くらいは上のように感じられる。
「大したネタはないな。カネの集まりも普通だ」
俺は懐の中に収めていた布袋を取り出し、机の上に置いた。この袋には物乞いの時に集めたカネの全てが入っている。
当たり前の話だが、内緒で中身の一部を抜き取るようなことはしていない。なぜならそれはギルドやお頭、メンバーのみんなに対する裏切り行為になるからだ。
分け前ならギルドからきちんと受け取っているし、もしどうしてもカネが必要になったならお頭やみんなに相談すればいいだけのこと――。
他者を出し抜き、自分だけが豊かに暮らせればいいなんて思ってる商人どもと同類にはなりたくない。
あいつらは孤児院のみんなや俺をモノのように扱い、奴隷として鉱山へ売りやがった。最低の人種だ。商人なんてみんな滅びてしまえばいいのに……。
「物乞いの仕事はどうだ? もし退屈なら冒険者ギルドから回ってきている仕事に変更してやってもいいぞ?」
「遠慮しておく。どうせダンジョンのトラップ外しばっかりやらされるんだろ? そんなのもっと退屈だからな。しかもお宝を見つけても分け前は微々たるものらしいじゃん。もっとも、お頭がやれって言うんなら、どんな仕事でも全力でやるけどよ」
「はははっ! そこまでは強制しねぇさっ! ま、お前の盗賊技能レベルなら、いずれ大きな仕事が回ってくる。気長に待て」
「だといいんだがな……」
俺は小さくため息をつくと、お頭の部屋をあとにしたのだった。
(つづく……)
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