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第2航路:公用船契約に潜む影
第5-5便:ターボーチャージャー!
しおりを挟むさすが改造したのがライルくんだけあって、細かい部分が私より丁寧に仕上げられている。パーツの配置にも改善が見られて、確かにこれなら動作による負担も無理も軽減されると思う。
しかも工学整備をすることになった場合、作業がしやすいような組み方に変えてある。のちのちのことも考えて工夫してあるなんてすごい。うわぁ、勉強になる。ライルくんの整備技術は私の数倍は上だ。
表に見える部分だけでもこれだけ完成されているなら、内部にも同じように色々と改良が加えられているんだろうな。ワクワクとドキドキが止まらないーっ!
呼吸は乱れるし、全身は熱いし、気持ちを抑えきれない!
「は、早く分解したい……っ! あっ、でもまずは点検魔法でデータを見た方が! いやいやっ、実際に触りながら構造を理解していく方が楽しい場合もッ!! ああっ、どうすればいいのーっ!?」
興奮しすぎて考えがまとまらない。それゆえに何から手を付けるのがいいか決められない。
別に順番なんて最終的にはどうでもいいことなんだけど、ネタバレした状態で分解した方が楽しい時もあるし、逆に楽しさが減ってしまう時もある。
これは本当にケースバイケースだから、実際にやってみないと分からない。
――と、ここで私はライルくんが組んだ新型魔導エンジン・改を見ていてふとした疑問が浮かぶ。
「でもライルくん、よく設計図もなしにここまで作れたね?」
「そりゃ、壊れた新型魔導エンジンをフォレスさんから受け取ったからな。それを点検魔法で分析したんだ。それなら設計図があるのと変わらないだろう」
「えっ? どういうこと?」
「フォレスさんから依頼された仕事は3つ。まずは壊れた新型魔導エンジンを分析して、改善点などをまとめたレポートを作ること。それを反映させた同型機・改を組んでシルフィに引き渡すこと。そして壊れた新型魔導エンジンを処分すること」
それを聞いて私はようやく色々と合点がいった。
壊れた新型魔導エンジンはてっきり社長が処分したのかと思っていたので、その点は想定外だったけど。停職開けにドックへ行った時にはどこにもなかったから。
まさかこんな形で再利用されていたとはね……。
「シルフィ、エンジンの上に置いてあるレポートにも目を通しておけよ。現物を点検魔法で見れば構造は分かるが、文章として読んで初めて気付く部分もあるはずだからな」
「分かった。ちなみに今、概要を説明してもらえる? 一部でいいからさ」
私が問いかけると、ライルくんは『そうだな……』と呟いてから少し考え込む。
「例えば、魔力を供給する配管だが、シルフィは出力を上げるために口径のサイズも上げただろう? 結果、確かに設計上の出力は出せるようになったが、魔導エンジンが処理しきれなかった分の魔力はそのまま外部へ排出されることになった。要するに燃費が悪化したわけだな」
「あはは……やっぱりその点に気付いちゃったか……。そうなんだよね、でもそこを改良する前に使うことになっちゃってさ。今、新しく作り始めている魔導エンジンでは何か工夫を加えるつもりでいるけど」
「しかも無駄なエネルギーは熱に変換されて排出される。つまり稼働時間やフルパワーを出す時間が増えるほど、オーバーヒートを起こす可能性も高まるわけだ。もし燃費の改善が実現していれば、もっと低リスクでディックを助けられただろうな」
「……そっか、食堂でライルくんが『私の力不足』って言ったのは、そういう意味でもあったんだね」
「まぁな。一応、俺が改良を加えて魔導エンジンに流れ込む魔力の量を減らした。だからエネルギー損失と熱損失に関しては改善しているはずだ」
「だが、それだと設計出力は出せなくなってしまったのではないか?」
その時、私たちの話を聞いていたディックくんが、難しい顔をしながらライルくんに疑問をぶつけた。私としてもその指摘は鋭いと思う。
当然、ライルくんも目を丸くして感嘆の声を上げる。
「ほぅ、察しがいいなディック。専門外なのにそれを理解しているか。うん、その通りだ。だからその先の改良と工夫はシルフィに任せるつもりでそのままにしてある」
「単純に思ったのだが、無駄なエネルギー消費が起きているのならそれを活かすことは出来ないのか? 例えば、捨てられてしまう魔力や熱を何かに利用するとか」
「お前な……。簡単に言うが、それをどうやって実現するかが難しいんだ」
ライルくんは半ば呆れながら頭を抱えている。
確かに『言うは易く行うは難し』って言うもんね。専門外の人からすると単純そうに見えることでも、実際にそれを実行するには色々と複雑な問題が存在するという場合も多々ある。
…………。
捨てられてしまう魔力や熱を利用する――か。
ディックくんが言うように、ポテンシャルが残されている魔力や熱をただ捨ててしまうのは勿体ないよね。それを回収して、もう一度何かに使えればいいんだけど……。
「――っ!? そうかッ、その手があったか!」
不意に大きなヒラメキが天から頭の中へと降ってきて、私は思わず大声を上げてしまった。あまりの衝撃に、全身には稲妻が走る。再び興奮が高まってくる。
「ねぇ、ライルくん。本来ならただ捨てられてしまう魔力や熱を使って、魔力変換器に送られる魔力を濃縮できないかな? そうすれば魔導エンジンに送り込まれる魔力の体積は従来と同じでも、そこに含まれる魔力量は大きくなるでしょ? つまり今の魔導エンジンの能力のままでも効率よく大きな出力を得られるよ!」
「なるほどっ! いいアイデアかもしれないな! 言うなればその装置は過給器といった感じか!」
「過給器かぁ! いいな、そのネーミング!」
盛り上がる私とライルくん。彼の好感触な反応を見る限り、実現性も高そうだ。だってこれが荒唐無稽なことなら、もっと淡泊で冷静な受け答えをするはずだもん。
(つづく……)
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