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羊の毛刈り2
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囲いに連れ込まれた羊を男たちが1頭ずつ捕まえて納屋に連れて行く。
そこで毛を刈り、束にする。
チャーリーの仕事は毛を刈り終えた羊をまた隣の囲いに連れて行くことだ。
他にも、刈った毛を納屋の二階に運ぶ役だとか、分業が決まっていて、ローテーションを組んでいるみたい。
「チャーリーは今年、初めて毛刈りをするんだよ」
アリスちゃんが教えてくれた。一人前の男性への一歩みたいな位置づけなんだね。
台所の女性陣も大忙しだ。休憩も昼食もみんな一緒ではなく何回かに分かれてだから、ひっきりなしにパンを切って、チーズを切って、皿に並べていく。
コップやカトラリーはそれぞれ自分のものを持ってきているし、パンが取皿がわりだけど、それでも、大皿がものすごい勢いで空になっていく。
「なんだ、これうめえ!」
森のチキンの南蛮漬けは大好評だった。一人二切れまでです、と厳しく制限したよ。あと、「森のチキンですからね!」としつこく念を押した。アレルギーで倒れられたらたまらないもの。
「森のチキンにつつかれる人はダメですよ」
「お嬢さん、いい奥さんになるよ!」
村の人に声をかけられるのを曖昧に笑ってやり過ごす。
褒め言葉のつもりなんだろうけど、いい奥さんになりたいとか、思わないんだよ……。
気の合う同居人と暮らせたら良いだろうなとは思う。
一日の仕事を終えたあと、楽しかったこと、つらかったことを分かちあえる相手はほしい。
だけど、それは「いい奥さんになる」というのは違う気がする。
好きな人と暮らすのと、「いい奥さんになる」というのも違うような気がする。
結婚に全然夢を持てない私が思うのは、私のことを「いい奥さんになりそうだ」と思うような人とは絶対に一緒に暮らせないだろうなということ。
これだけは確か。
きっと、こんなふうに面倒なことを考えているから、私はこの前の人生でもお一人様だったんだろうな……。
なんか、考えていたら気分が重くなったので、台所に引っ込んでリジーさんの手伝いに専念することにした。
「どうしたの、マージョ、気が重そうな顔をして?」
リジーさんが、それとなく気をつかってくれる。
「ん~なんでもないです……」
曖昧に笑ってやり過ごそうとしていたんだけれど、「いい嫁さんとか言われたこと?」と、言い当てられて顔が赤くなる。
「……」
「マージョは、お母さんのこともあるし、色々と思うこともあるわよね」
おー。
なんか、突然私はアナスタシアに、ものすごく感謝した。
マージョのお母さんは貴族の愛人の子供(かもしれない)っていう設定だった!
そうか、この世界の人がなんとなく「マージョが結婚に夢を持てなくても仕方ない」と思える設定をアナスタシアは考えてくれたんだな。
私がする説明が最低限で良いように。
私、アナスタシアが好きだな。
諸悪の根源なんだけど、でも、自分ができる範囲内でものすごく色々と考えてくれているもの。
羊の毛刈りは、とにかく飲み物をたくさん作って、パンを切って、ゆで卵を切って、豆の煮物や南蛮漬けを皿に盛って、みたいな仕事の連続で、でもメンストンさんたちを手伝って良かった、と私は思った。
「粗いラノリンも後で渡すけど、羊毛も3束、後でチャーリーに持たせるわね。よろしくお願いね」
帰り際にリジーさんにものすごく感謝された。3束って羊2頭分くらいだからかなりの量だ。
ラノリンや羊毛はこちらで処理してから一部返すから、まるまる自分のものになるわけじゃないんだけど、それにしても例年より多い。
びっくりしてリジーさんの顔を見たら「色々とお世話になってるから」と微笑み返された。
おお……。なんか、コミュニティにちゃんと入り込んだ感じがする!
南蛮漬けも、ピタも、コーディアルも、ものすごく評判が良くてリジーさんは鼻高々だった。
まあ、コーディアルには砂糖がいっぱい入ってたからね。
ガタイのいい大人の男性の目の色が変わって微笑ましかった。
美味しいものが毛刈りのお昼ごはんに出ると噂になると、人手が集まりやすくなるんだって。
最低限はもちろん義理やしがらみで集まるわけだけど。義理で1家庭から一人来るのと、もう一人ついてくるのでは作業効率が違う。
しかし!
洗浄されていない羊毛を束で渡されるとなると、これはこれでかなりの手仕事が発生した……ってことだよね?!
羊毛は嬉しいけれど、これを効率よくさばくにはまずは事業用資源ごみのスキルを修得したいよ……!
あ、それに羊毛処理用の鍋も欲しい。料理の鍋では処理できないもの。
わー。
そこで毛を刈り、束にする。
チャーリーの仕事は毛を刈り終えた羊をまた隣の囲いに連れて行くことだ。
他にも、刈った毛を納屋の二階に運ぶ役だとか、分業が決まっていて、ローテーションを組んでいるみたい。
「チャーリーは今年、初めて毛刈りをするんだよ」
アリスちゃんが教えてくれた。一人前の男性への一歩みたいな位置づけなんだね。
台所の女性陣も大忙しだ。休憩も昼食もみんな一緒ではなく何回かに分かれてだから、ひっきりなしにパンを切って、チーズを切って、皿に並べていく。
コップやカトラリーはそれぞれ自分のものを持ってきているし、パンが取皿がわりだけど、それでも、大皿がものすごい勢いで空になっていく。
「なんだ、これうめえ!」
森のチキンの南蛮漬けは大好評だった。一人二切れまでです、と厳しく制限したよ。あと、「森のチキンですからね!」としつこく念を押した。アレルギーで倒れられたらたまらないもの。
「森のチキンにつつかれる人はダメですよ」
「お嬢さん、いい奥さんになるよ!」
村の人に声をかけられるのを曖昧に笑ってやり過ごす。
褒め言葉のつもりなんだろうけど、いい奥さんになりたいとか、思わないんだよ……。
気の合う同居人と暮らせたら良いだろうなとは思う。
一日の仕事を終えたあと、楽しかったこと、つらかったことを分かちあえる相手はほしい。
だけど、それは「いい奥さんになる」というのは違う気がする。
好きな人と暮らすのと、「いい奥さんになる」というのも違うような気がする。
結婚に全然夢を持てない私が思うのは、私のことを「いい奥さんになりそうだ」と思うような人とは絶対に一緒に暮らせないだろうなということ。
これだけは確か。
きっと、こんなふうに面倒なことを考えているから、私はこの前の人生でもお一人様だったんだろうな……。
なんか、考えていたら気分が重くなったので、台所に引っ込んでリジーさんの手伝いに専念することにした。
「どうしたの、マージョ、気が重そうな顔をして?」
リジーさんが、それとなく気をつかってくれる。
「ん~なんでもないです……」
曖昧に笑ってやり過ごそうとしていたんだけれど、「いい嫁さんとか言われたこと?」と、言い当てられて顔が赤くなる。
「……」
「マージョは、お母さんのこともあるし、色々と思うこともあるわよね」
おー。
なんか、突然私はアナスタシアに、ものすごく感謝した。
マージョのお母さんは貴族の愛人の子供(かもしれない)っていう設定だった!
そうか、この世界の人がなんとなく「マージョが結婚に夢を持てなくても仕方ない」と思える設定をアナスタシアは考えてくれたんだな。
私がする説明が最低限で良いように。
私、アナスタシアが好きだな。
諸悪の根源なんだけど、でも、自分ができる範囲内でものすごく色々と考えてくれているもの。
羊の毛刈りは、とにかく飲み物をたくさん作って、パンを切って、ゆで卵を切って、豆の煮物や南蛮漬けを皿に盛って、みたいな仕事の連続で、でもメンストンさんたちを手伝って良かった、と私は思った。
「粗いラノリンも後で渡すけど、羊毛も3束、後でチャーリーに持たせるわね。よろしくお願いね」
帰り際にリジーさんにものすごく感謝された。3束って羊2頭分くらいだからかなりの量だ。
ラノリンや羊毛はこちらで処理してから一部返すから、まるまる自分のものになるわけじゃないんだけど、それにしても例年より多い。
びっくりしてリジーさんの顔を見たら「色々とお世話になってるから」と微笑み返された。
おお……。なんか、コミュニティにちゃんと入り込んだ感じがする!
南蛮漬けも、ピタも、コーディアルも、ものすごく評判が良くてリジーさんは鼻高々だった。
まあ、コーディアルには砂糖がいっぱい入ってたからね。
ガタイのいい大人の男性の目の色が変わって微笑ましかった。
美味しいものが毛刈りのお昼ごはんに出ると噂になると、人手が集まりやすくなるんだって。
最低限はもちろん義理やしがらみで集まるわけだけど。義理で1家庭から一人来るのと、もう一人ついてくるのでは作業効率が違う。
しかし!
洗浄されていない羊毛を束で渡されるとなると、これはこれでかなりの手仕事が発生した……ってことだよね?!
羊毛は嬉しいけれど、これを効率よくさばくにはまずは事業用資源ごみのスキルを修得したいよ……!
あ、それに羊毛処理用の鍋も欲しい。料理の鍋では処理できないもの。
わー。
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