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第二部 根を張り始めた私
本神殿の事情
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「本神殿は百年ほど前に、神学論争で揺れたんです」
一ヶ月はあっという間にたった。神官補の足もずいぶん良くなった。まだ片足を引きずっているし、長距離はちょっと大変そうだけれど、そろそろバグズブリッジに帰る日を決めても良さそう。
こればかりは道次第だ。新年を迎えても、雪は深い。
馬車の準備をすれば無理をすれば通れるかな……?くらいの感じ。
現在、神官補の目の前には山程のあんまん。
今日は午後からチャーリーもやってくる予定なので、少し多めに作ったのだ。
せっかく神官補がいるということで、チャーリーも時々やってきて神学の基礎の話を聞いている。
「冷めちゃうから食べ始めちゃって。チャーリーの分はまだまだあるから」
と言うと、神官補の目が光った。
ふかしている間中ソワソワしていたものね。
思う存分召し上がれ!
本当に甘いものが好きなのは、アーロンに似てる。ケーキが焼けたらきっと楽しかっただろう。
自分一人だとオーブンがなくてもそんなに不便を感じないのだけれど、食べさせる相手がいると作りたい料理が増える。
アーロンも喜ぶだろう。
夏雪草でおカネが溜まったら絶対に買おう。
なんて思いながら私は肉まんを半分に割る。
「……ちゃんと聞いてますか?」
神官補がジトッと聞いてくる。
「もちろん聞いてますよ~」
だって神学論争ですよ?
これほど自分に縁が無いものもないだろうって感じだよね。
こればっかりは、神学の基礎を聞きに通ってきているチャーリーに付き合ってる感じが半端ない。
「かつては数多くあった祈りの言葉の統一が行われました。古い祈りの中には失われた物もあります。これは本神殿の決定というよりは、本神殿に忖度した末端の神官達のせいではないかと言われています」
忖度ねえ。
それにしてもなんで神学論争なんかが起きたのかな。異端尋問が起きるとか、そこまで行くと政治と絡んでそうだけど……。
「それについては、いずれご説明します」
神官補は、真面目な顔でそう言うと あんまんをパフッと口に入れた。
「美味しい……」
ふふふ。思わず顔がにやけてしまう。そんなに喜んでもらえると作った甲斐があるというものです。
そういえば、実家の父は、黙々と食事をする人だった。
母が作った料理にお礼を言っているところを見たことがない。
何十年も食事を作り続けていて、作った料理に感謝の言葉もなかったなんて母もつらかっただろう。
そういう意味では、この世界で私は恵まれている。
チャーリーも口数は多くないけれど、美味しいものは美味しいとすぐ言ってくれるんだよね。
幸せそうな神官補を見て、ほっこりしていたら玄関がノックされた。
「いらっしゃい チャーリー。ちょうど お饅頭が蒸けたところだよ」
そう言ってドアを開けて、私はびっくりして立ち止まった。 ドアの前にいたのは チャーリーではなく、背の高い、がっしりとした男性だった。
「マージョ・ベルボームだな?」
威嚇するかのように 睨みつけてきた。
しかも帯剣している。
「本神殿の騎士……?」
神官補の小さな声が聞こえた。
「異端容疑がかかっている。キリングホールまで出頭を要請する」
はい?
「異端容疑って……」
「それについては 神殿で話してもらいたい。明日の朝一番に村をたつ。今日は見張りのものをつけるので、くれぐれも逃げようなどと考えないように」
はい?
はいいいい?
「なんなんだよ、マージョになんの話だ?!」
騎士さんの背後から、怒ったようなチャーリーの声が聞こえる。
あああ、チャーリー!!
これはマズい。
守ろうとしてくれるのはわかるけど、神殿関係者に喧嘩を売るのは、君、立場的に得策じゃないのよ……!
一ヶ月はあっという間にたった。神官補の足もずいぶん良くなった。まだ片足を引きずっているし、長距離はちょっと大変そうだけれど、そろそろバグズブリッジに帰る日を決めても良さそう。
こればかりは道次第だ。新年を迎えても、雪は深い。
馬車の準備をすれば無理をすれば通れるかな……?くらいの感じ。
現在、神官補の目の前には山程のあんまん。
今日は午後からチャーリーもやってくる予定なので、少し多めに作ったのだ。
せっかく神官補がいるということで、チャーリーも時々やってきて神学の基礎の話を聞いている。
「冷めちゃうから食べ始めちゃって。チャーリーの分はまだまだあるから」
と言うと、神官補の目が光った。
ふかしている間中ソワソワしていたものね。
思う存分召し上がれ!
本当に甘いものが好きなのは、アーロンに似てる。ケーキが焼けたらきっと楽しかっただろう。
自分一人だとオーブンがなくてもそんなに不便を感じないのだけれど、食べさせる相手がいると作りたい料理が増える。
アーロンも喜ぶだろう。
夏雪草でおカネが溜まったら絶対に買おう。
なんて思いながら私は肉まんを半分に割る。
「……ちゃんと聞いてますか?」
神官補がジトッと聞いてくる。
「もちろん聞いてますよ~」
だって神学論争ですよ?
これほど自分に縁が無いものもないだろうって感じだよね。
こればっかりは、神学の基礎を聞きに通ってきているチャーリーに付き合ってる感じが半端ない。
「かつては数多くあった祈りの言葉の統一が行われました。古い祈りの中には失われた物もあります。これは本神殿の決定というよりは、本神殿に忖度した末端の神官達のせいではないかと言われています」
忖度ねえ。
それにしてもなんで神学論争なんかが起きたのかな。異端尋問が起きるとか、そこまで行くと政治と絡んでそうだけど……。
「それについては、いずれご説明します」
神官補は、真面目な顔でそう言うと あんまんをパフッと口に入れた。
「美味しい……」
ふふふ。思わず顔がにやけてしまう。そんなに喜んでもらえると作った甲斐があるというものです。
そういえば、実家の父は、黙々と食事をする人だった。
母が作った料理にお礼を言っているところを見たことがない。
何十年も食事を作り続けていて、作った料理に感謝の言葉もなかったなんて母もつらかっただろう。
そういう意味では、この世界で私は恵まれている。
チャーリーも口数は多くないけれど、美味しいものは美味しいとすぐ言ってくれるんだよね。
幸せそうな神官補を見て、ほっこりしていたら玄関がノックされた。
「いらっしゃい チャーリー。ちょうど お饅頭が蒸けたところだよ」
そう言ってドアを開けて、私はびっくりして立ち止まった。 ドアの前にいたのは チャーリーではなく、背の高い、がっしりとした男性だった。
「マージョ・ベルボームだな?」
威嚇するかのように 睨みつけてきた。
しかも帯剣している。
「本神殿の騎士……?」
神官補の小さな声が聞こえた。
「異端容疑がかかっている。キリングホールまで出頭を要請する」
はい?
「異端容疑って……」
「それについては 神殿で話してもらいたい。明日の朝一番に村をたつ。今日は見張りのものをつけるので、くれぐれも逃げようなどと考えないように」
はい?
はいいいい?
「なんなんだよ、マージョになんの話だ?!」
騎士さんの背後から、怒ったようなチャーリーの声が聞こえる。
あああ、チャーリー!!
これはマズい。
守ろうとしてくれるのはわかるけど、神殿関係者に喧嘩を売るのは、君、立場的に得策じゃないのよ……!
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