ラグビー部副将の歪んだ愛

熊次郎

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ラグビーエリートの葛藤

健太は中学からラグビーを始め、高校大学で活躍し、ニュージーランドでのラグビー留学の経験もあるラグビーエリートだ。
今のチームのOBからの強いラブコールで会社に就職して入部した。もちろん、チームの中心的存在だ。

178/86のマッチョ系ラガー体型、奥二重の男らしい顔のスポーツマンで女にもモテる。男友達も多く、誰からも好かれるサッパリした性格でチーム内も私生活も人気者だった。
ある男がチームに移籍してくるまでは。

その男は高梨勇次。健太の三つ上で初めて出会った2年前、勇次は28歳だった。
関西の出身で大学の時はそこまで有名でなかったが、社会人チームに入りメキメキと頭角を表し、最近ではラグビー界で有名な選手だった。
その男を監督が引き抜いてきた。
健太の第一印象は『イケメンマッチョ』だった。

勇次は抜群のラグビーセンスであっと言うまにチームにおけるプレイの中心人物となった。明るく強い責任感があり、人に対して心から親身になる勇次がプレイ以外でもチーム内での存在を高めるには時間はかからなかった。
また既婚者ながら勇次を応援する女性ファンが急増し、試合の観客も倍増した。華があるその存在感にマスコミも騒ぎ始めた。

健太はラグビーでは負けない思っていたが、勇次のセンスの方が一枚上手だった。
ルックス、体、性格、プレイ、全てにおいて健太を勝る勇次。本人は気にもしてないが、健太の中には羨望とも嫉妬とも分からない気持ちが少しずつこみ上げてきた。

ただ趣味やノリは合っていた為、勇次と同い年の悟と三人でよく飲む関係になった。

悟は185/100の巨漢で健太同様、大学卒業後から今にチームに所属している。プロップ(相手と直接組み合うスクラムの要)で、味方を持ち上げ、体で相手を押し込むパワーはチーム随一だ。
あまりクレバーなタイプではないが、後輩思いですぐヒートアップするがおバカキャラで、皆から慕われていた。

悟と勇次は既婚者、健太は独身だったが、悟が飲み好きでラグビー談話で盛り上がり、3人で夜を明かす日も多かった。
健太は勇次と一緒にいればいるほど仲良くなり、強い好意が増しながらも嫉みもあり、その感情に戸惑いを覚えていた。

勇次は移籍してから1年後の春のトーナメントでミスをし、優勝候補のチームは初戦を敗退した。
泣きながら謝る勇次にチームメイトの誰もが責める気持ちはなく、一緒にグランドで泣いた。
健太だけは(俺だったらありえないな)と冷ややかに思いつつ、勇次を抱きしめていた。

その後、チームの新体制とポジションの発表があった。

健太は当然、スタンドオフ(キック、パス、自ら走るなど瞬時に判断し、バックス陣を率いて攻撃を指揮する役割を担うチームの司令塔)で主将になると思っていた。
以前から周りのチームメイトから言われ、今度の発表では自分がなると当然に思っていた。

が、そのポジションは勇次に与えられた。
監督から『マスコミや観客受けもいいし、ポテンシャルは勇次の方が上だから、しばらくナンバーエイト(FWのリーダー、攻守に渡ってチームの中心)の副将として頑張ってくれ。』と言われた時、健太は理解はしつつも、何か煮え切らない感情が湧いて出ていた。
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