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この国には悪い魔女がいました。彼女は強い魔力で魔物を従え、生贄や財宝を求めた。そして王族とその側近達で魔女を撃ち倒したそうです。魔女が消えたこの国には平和が齎され、王族は権威を強め、側近達は四侯爵家として重要な役割を持つようになる。
それがこの国の建国のお話だ。
その絵本の話は聞き飽きた。
魔女の名前がディアナリリス。
今ではその名前すら忌避されて子供の名前をつけることさえも避けられているほどに嫌われている。
メイド達が複雑そうな笑顔でベッドを覗き込んで身体に異常はないのか、色々気にをしていた。
死んだはず。
呪詛に飲み込まれて自我も保てなくて色々と朧げで死んだ。
終わった。
その時に少し鮮明になった意識で色々と終わったはずなのに。
ディアナリリスの記憶を持ったままあの英雄の国の貴族の子供に転生してしまった。
と言っても赤子で、シュヴァリエ公爵家という家で、父親が騎士団長をしている。
2人の兄がいる。
だけど、私はこの家の公爵と母親の子供ではないということ。
母アルテアは見目麗しいシュヴァリエ家の至宝、美姫と言われており、父パーシヴァルは伯爵家令息で恋愛結婚で鴛鴦夫婦とまで言われていた。
その父が遠征で王都を離れた時に母は当時の国王に襲われた。
そして、できたのが私だという……何とも生まれる前から波乱万丈で、シュヴァリエ家は友好国の王族の子孫でこの国の王族の血を引いたということで庶子、公爵家の娘でありながら非公式王位継承権第一位らしい。
それだけではなく、母アルテアは私を降ろすことも許されず、襲われてから精神的にも病んでしまった。
父はそれでもアルテアを愛しているので側にいるのだが、母は私ヴェロニカを殺しにくる。
さて、生後間もない私、ヴェロニカの中身は幾年も生きたディアナリリスの精神、記憶持ちは余計なことで泣いたりしないし、大人しく寝ることでメイド達の育児を煩わせないようにしている。
アルテアに私を認識させないように父は居住を分けて接触させないようにしている。
メイドたちが世話をすることがほとんどで、本邸ではなく別邸で生活をしているようだ。会話で理解した。
本邸ではアルテアが生活をしている。
接触する回数を減らさなければヴェロニカの命が危うい。自分の状況と常時命の危機を理解した私は大人しくするだけだ。
赤子が泣くのはただ暇だから。
というのはないだろうか。という結論に至った。
今すごく暇だ。食べて寝て終わりだ。暇がつぶれない。時間が無駄に長い。
この身体でも魔法が使えるようだけれど、制御がままらない。
ヴェロニカは天井を見上げて寝ようかとうつらうつらとしていると扉が開いた。
メイドだろうか。下着はまだ無事なのだが…そう思っているとひょっこりとベッドを覗き込んできた。誰かと思ったら2人の兄だ。
この兄2人はちゃんと両親の間にできた子供で、シュヴァリエ公爵家の特徴である銀髪に青い瞳だ。兄たちも美形である。
「あ、ヴェロニカ起きてた。」
「可愛い…」
「プニプニしてる。」
抱き上げられてもちもちと頬を突かれたりする。兄2人デオン・リオンは学生で休みの時にしかこちらに来ないのだが、メイド以上に世話を焼いてくれる。貴族令息なのにこの2人は哺乳瓶の消毒からおむつの交換などをメイド達から習って実践をする。最近は離乳食の作り方を料理長から習って作る練習をしているなど近況と育児に携わろうとして勉強中だと色々教えてくれる。
中身が子供のままだったら良かったのだろうけれど。
「奥様!?こちらは別邸でございます!!!!」
メイドの嗜める声に兄2人のうちヴェロニカを抱いていたデオンはベッドの下に潜り込んだ。リオンが部屋に残る。
「ヴェロニカ、しー。」
ベッドの下で腕の中でそう言われた。普通の赤子ならぐずったりするかもしれない。空気を読めるので泣いたり動いたりしない。
リオンがアルテアの応対をして部屋に戻ってもらうように会話をしているようだが、その会話を聞き取ることができない。
「母上、人形をおいているだけですから。お部屋でお茶を飲まれてはいかがですか??邪魔でなければ私も同席したいですし。最近の学園のこととか。」
「デオンはどこ?」
「デオンは邸の外に出たようです。最近交代で市井を見て回るのが楽しみになっているんです。珍しい食べ物とか書物などが流れてきたりしますから。」
それで部屋から出て行ったようだ。デオンは念のためヴェロニカの口を手で軽く塞いで物音一つ立てないようにしていた。
「デオン様、どちらにいらっしゃいますか???」
「あぁ、ここにいる。」
ベッドの下からヴェロニカを抱き上げて長椅子に腰かける。きちんと掃除もされているので汚れも少ない。お湯に浸してしぼったタオルで妹の顔や髪を拭う。
「ヴェロニカ、父上もあまり来れないと思うけれど、僕たちが顔を出すから寂しくないよ。」
父親でありパーシヴァルはあまり別邸に顔を出さない。母と恋愛なのだだからアルテアを優先しているのだろうと思っていた。だが、デオン、リオンはアルテアがこちらに来ないために近寄らせないようにこちらに来ないという選択肢を選んだと聞かされた。托卵されたのだから会いたくもないだろう。
それがこの国の建国のお話だ。
その絵本の話は聞き飽きた。
魔女の名前がディアナリリス。
今ではその名前すら忌避されて子供の名前をつけることさえも避けられているほどに嫌われている。
メイド達が複雑そうな笑顔でベッドを覗き込んで身体に異常はないのか、色々気にをしていた。
死んだはず。
呪詛に飲み込まれて自我も保てなくて色々と朧げで死んだ。
終わった。
その時に少し鮮明になった意識で色々と終わったはずなのに。
ディアナリリスの記憶を持ったままあの英雄の国の貴族の子供に転生してしまった。
と言っても赤子で、シュヴァリエ公爵家という家で、父親が騎士団長をしている。
2人の兄がいる。
だけど、私はこの家の公爵と母親の子供ではないということ。
母アルテアは見目麗しいシュヴァリエ家の至宝、美姫と言われており、父パーシヴァルは伯爵家令息で恋愛結婚で鴛鴦夫婦とまで言われていた。
その父が遠征で王都を離れた時に母は当時の国王に襲われた。
そして、できたのが私だという……何とも生まれる前から波乱万丈で、シュヴァリエ家は友好国の王族の子孫でこの国の王族の血を引いたということで庶子、公爵家の娘でありながら非公式王位継承権第一位らしい。
それだけではなく、母アルテアは私を降ろすことも許されず、襲われてから精神的にも病んでしまった。
父はそれでもアルテアを愛しているので側にいるのだが、母は私ヴェロニカを殺しにくる。
さて、生後間もない私、ヴェロニカの中身は幾年も生きたディアナリリスの精神、記憶持ちは余計なことで泣いたりしないし、大人しく寝ることでメイド達の育児を煩わせないようにしている。
アルテアに私を認識させないように父は居住を分けて接触させないようにしている。
メイドたちが世話をすることがほとんどで、本邸ではなく別邸で生活をしているようだ。会話で理解した。
本邸ではアルテアが生活をしている。
接触する回数を減らさなければヴェロニカの命が危うい。自分の状況と常時命の危機を理解した私は大人しくするだけだ。
赤子が泣くのはただ暇だから。
というのはないだろうか。という結論に至った。
今すごく暇だ。食べて寝て終わりだ。暇がつぶれない。時間が無駄に長い。
この身体でも魔法が使えるようだけれど、制御がままらない。
ヴェロニカは天井を見上げて寝ようかとうつらうつらとしていると扉が開いた。
メイドだろうか。下着はまだ無事なのだが…そう思っているとひょっこりとベッドを覗き込んできた。誰かと思ったら2人の兄だ。
この兄2人はちゃんと両親の間にできた子供で、シュヴァリエ公爵家の特徴である銀髪に青い瞳だ。兄たちも美形である。
「あ、ヴェロニカ起きてた。」
「可愛い…」
「プニプニしてる。」
抱き上げられてもちもちと頬を突かれたりする。兄2人デオン・リオンは学生で休みの時にしかこちらに来ないのだが、メイド以上に世話を焼いてくれる。貴族令息なのにこの2人は哺乳瓶の消毒からおむつの交換などをメイド達から習って実践をする。最近は離乳食の作り方を料理長から習って作る練習をしているなど近況と育児に携わろうとして勉強中だと色々教えてくれる。
中身が子供のままだったら良かったのだろうけれど。
「奥様!?こちらは別邸でございます!!!!」
メイドの嗜める声に兄2人のうちヴェロニカを抱いていたデオンはベッドの下に潜り込んだ。リオンが部屋に残る。
「ヴェロニカ、しー。」
ベッドの下で腕の中でそう言われた。普通の赤子ならぐずったりするかもしれない。空気を読めるので泣いたり動いたりしない。
リオンがアルテアの応対をして部屋に戻ってもらうように会話をしているようだが、その会話を聞き取ることができない。
「母上、人形をおいているだけですから。お部屋でお茶を飲まれてはいかがですか??邪魔でなければ私も同席したいですし。最近の学園のこととか。」
「デオンはどこ?」
「デオンは邸の外に出たようです。最近交代で市井を見て回るのが楽しみになっているんです。珍しい食べ物とか書物などが流れてきたりしますから。」
それで部屋から出て行ったようだ。デオンは念のためヴェロニカの口を手で軽く塞いで物音一つ立てないようにしていた。
「デオン様、どちらにいらっしゃいますか???」
「あぁ、ここにいる。」
ベッドの下からヴェロニカを抱き上げて長椅子に腰かける。きちんと掃除もされているので汚れも少ない。お湯に浸してしぼったタオルで妹の顔や髪を拭う。
「ヴェロニカ、父上もあまり来れないと思うけれど、僕たちが顔を出すから寂しくないよ。」
父親でありパーシヴァルはあまり別邸に顔を出さない。母と恋愛なのだだからアルテアを優先しているのだろうと思っていた。だが、デオン、リオンはアルテアがこちらに来ないために近寄らせないようにこちらに来ないという選択肢を選んだと聞かされた。托卵されたのだから会いたくもないだろう。
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