出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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21思惑

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ヘラルドが王宮の中をスタスタと歩くと人が道を開けて頭を垂れる。
そして向かった執務室の扉を開けると歳の近い男が書類仕事をしていた。

「おぉ、ヘラルドどうした?」

「国王陛下、人払いを。」

人払いをしてクーフィアが持っていた箱を広げる。

「ミカエラ嬢は見分けていたのか?」
「あぁ。知識と言うより技術と経験で指摘していた。」
「恐ろしいね。」
「それで宝飾師の作り方ではなく贋作製作者が作ったものだと。」
「そういう才能を持つ物が埋もれていたのが残念なのか…出てきてよかったのか。彼女には子爵をあげないと釣り合わないね。兄上の養女にでもしますか?」

ヘラルドは近くにあった本でばしっ。と、国王の頭を叩く。

「バカを言うなジルクニフ。」
「兄上の懐刀の弟が可愛がっているから手は出さないですか?…取り敢えず何時からすり変わっていたのか…公表するか?」
「…正直に申告したら不問にするとでも?」
「取り敢えずそうしておけばいいだろう?詳細を伏せておいて。バカ正直に返すならこちらとしても弱みは握れるし、家探しして出てきたら更に追加で請求も出来る。」

王宮で調度品の整理をしていたら国宝の宝石類が贋作とすり変わっていたことを公表。期日を決めて盗んだものが不明で本物を返したら不問とする。ただし、それ以降は保管庫に入ることが出来た家の行動を今後厳しく見させてもらう。と、宣言した。今後王族に警戒されて要職に付けなくなるのか、今正直に差し出して置くのか…



休日、レオンハルトが私服に着替えていた。ミカエラと同程度の楽な服装で納品する商品を木箱に詰めて馬車に詰め込む。

「これで全部かな。」
「そうですね、疲れてるのではないですか?」

ミカエラは貴族が外出に着るような布をたっぷりと使った衣装ではなく普段の楽な服装をしており靴も踵の低いブーツだ。

「全然。別日が休みにもなるし、ミカエラの行くところって初めて行く場所ばかりだから結構楽しいよ。」

素直なのか…大変だな。馬車に乗って商業ギルドに向かう。

「ミカエラは自分で作ったものを付けないのか?」

雑に纏めていたがメイドに直された髪に触れる。亜麻色の癖のある髪は柔らかく指に絡めて見たりするとミカエラはバシッと手を払う。

「折角整えられた髪が崩れます。」
「ごめん…」
「それに仕事で邪魔だから伸ばしてないんです。」

商業ギルドに行き、納品をするのだが…

「ミカエラさん大変です!!!」
「何がですか?」

応接間に通されてドンドンと積み上げられた発注書が現れる。

「…ミカエラさんの新作の腕輪とか色々殺到です!!!止めてるのに再開したら優先的にばかりなんです!!!他の工房はダメだって言われてますし!!!!」

「…有難いお話です。頑張ります…」

「ミカエラさんが思ったより早く納品されるので文句は出てませんよ。取り敢えず忖度して並べてますのでよろしくお願いします。」

夫婦ペアのブレスレットは旦那様からの注文のようで家紋の図柄と色指示が添えられている。

「ミカエラ、人を雇ったりしたら?」
「雇いたいんですけど、女の宝飾師の下につきたい人がいるかどうか。それとかなり細かいのでできる人があまりいないと思うんです。」

人手不足だけど手先が器用な人…エイスで細かいカットや削ることができる人を知らない。いたとしても既に職人でも親方やそれなりに仕事をしている人で職に溢れている人なんていないと思うし。



発注書今回処理分を抱えて商業区を歩くのだが、食べ歩きを教えてはダメな人に知られてしまったと思った。レオンハルトは屋台で気になるものを抱えて休憩と称してベンチで美味しそうにかぶりついている。

「ミカエラは食べないの?」
「食べないというか、これだけで足りますから。」
「初めて会った時みたいに気楽に話してくれていいんだけど。むしろそっちの方が嬉しい。」

「…レオンハルト様は侯爵家令息で私は平民ですよ?一応勉強して弁えています。」
「…じゃあ叙爵したら気楽に話して欲しい。レオンハルトじゃなくてレオンでいいし。」
「レオン様…垂れてますよ。ソース。」

串焼きからソースが垂れそうだ。指摘すると慌ててかぶりついて続きを食べる。騎士団での訓練で塩味とか量が足りてないんじゃ???邸の献立は肉体労働をするには薄味すぎるだろうから。
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