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101 事が大きくなる
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事が大ごとになり過ぎて理解が追いつかない。いやそうな顔を作らなかったけれど。イザークはクッキーを勝手に片付けてお茶のおかわりだけ用意されてしまった。外国にまで狙われるなんて最悪だ。そのくらい情報だけ集めて自分たちでしてほしい。ミカエラの脳裏にはまた危険なことに遭うかも知れないという危機感が過っていた。イザークはテーブルの上で握り込まれた彼女の手に触れる。
「定期的にというよりはしばらく私が専属でつくというだけです。拒絶しないでくださいね。」
「…ユーリ様にご迷惑ばかりおかけしていますね。」
「そのユーリ様の命令です。貴方を失う事が重大な損失になるというのが国の上層部の意見です。」
「家の中では自由にしてくださって構いませんが少しでも外に出る時は声をかけてください。」
「窮屈ですね。わかりました。」
多分いわゆる上の人たちは色々それ以上に気を遣ってくれているのだろう。私がわがままを言うなら自分の身は自分で守れという下町のやり方になるのだろう。それでまた誘拐でもされたら逃げ出せる自信は全くない。私の人生職場を首になってからあまりにも忙し過ぎないだろうか。肉体的にも精神的にも。もっとゆったりとした仕事をしているはずだったのに爵位だの婚姻だの。プレゼントの作成だの…こんな多忙すぎる日を過ごすつもりは全くなかった。しかも自称友人は現れるし、誘拐されるし、孤児院絡みの変な貴族との遭遇もある。それにおそらくとてもやんごとない身分のヘラルド様の愛人契約なんて普通の孤児にはありえない待遇だし。私の人生が華やかになったというよりも忙しく、騒がしくなった。良くも悪くも。それは良いのだけれども。良いのだろうか。多分良いはず。何だけれども…今は目の前の人と婚姻をどうすべきかという人生の中での一大イベントが立ち塞がっている。
「他国では我が国から魔石や宝石の原石を購入しているのでそこから技術一つで軍事力が上がるのであれば喉から手が出るほど欲しいでしょうね。それが爵位持ちの未婚貴族であるなら尚更。」
「他国でそんなに魔石や宝石って取れないのですか?」
「鉱物資源は我が国が豊富でほかの国はなくはないけれど多くない感じですね。だから欲しい。少ない労力で新しい技術が手に入るなら。貴族は基本なりふり構わず情報戦からの搦め手ですから。なのでさっさと婚姻しても良いと承諾していただけると皆幸せになると思うのですが?」
良い笑顔で提案されてしまったけれど、私からしたらそれはあまり有難いお話でもない。それに子爵になるのが確定で話が進んでいるが、私はまだ男爵だ。しかもやる気のない男爵で城での仕事は魔導士たちの道具作成のお手伝いくらいで城できちんと仕事をしていない。
そんな仕事のことで結婚すべきというのがまだしっくりこないし、結婚願望はやはりない。ミカエラはそう思いながら目の前にいる護衛を見る。ただの護衛ではないし、次期侯爵様の腹心でもあるイザーク様だ。
「とりあえず、考える材料になるかわかりませんが、子爵になったら降ってくる仕事内容をお伝えいたします。それを基本1人でするか仕事ができる人を雇うことになるのですが…」
もうすぐしたら降ってくるだろうという仕事の内容を教えてもらうとミカエラは貼り付けた笑顔になってしまった。そんなことをできる人を雇えるわけがないし、1人でできるわけもない。ツテも何もないのだが…そんな仕事をしたくない。
「定期的にこんな話をしないと危機感を持てないのですね。」
「うぅ…私の仕事じゃないですもん。欲しくて爵位がきたわけでもなくて大人の都合で爵位が来たのだからその辺りの忖度はしてほしいです。」
「忖度が知り合いの近くの土地なんですけれどね。」
「とりあえず私から贈り物とかしたいのですが、虫除け含め。何か欲しいものでもありますか?」
「…装身具なら自分で作りますけれど。」
「プレゼントしたいのにそれを作らせることはしないと思いますけれど。」
「…今の流行は私が作っているものなんですが。」
そうなんだよなぁ。私が作っているものが今の流行りで、国宝などの職人の作品は見るのが好きなだけで。プレゼントを作ってもらうにしても自分でつくったほうが安上がりで最近の流行りを作ることができる。商業ギルドに相談しても私に発注書が回ってくるだけだ。それなら私に直接言ってくれたほうがいい。
イザークからしたらそれはちがうのでむすっと複雑そうな顔をしていた。複雑な顔をされても今のアクセサリー類を作っているのは私だ。そこをどうするかなら私に直接言って物を作ったほうがいいに決まっている。材料を持参してくれたらそれで作るし、手数料は何か美味しいご飯がいただけるならそれでいいと思う。材料調達が一番手間だし。職人としての自分の都合を考えていたが、イザークとしては贈る相手に作らせるのは何だか違うと思っているのだろう。そのあたりも意思疎通が必要だが、そこまでは至らないようだ。
「定期的にというよりはしばらく私が専属でつくというだけです。拒絶しないでくださいね。」
「…ユーリ様にご迷惑ばかりおかけしていますね。」
「そのユーリ様の命令です。貴方を失う事が重大な損失になるというのが国の上層部の意見です。」
「家の中では自由にしてくださって構いませんが少しでも外に出る時は声をかけてください。」
「窮屈ですね。わかりました。」
多分いわゆる上の人たちは色々それ以上に気を遣ってくれているのだろう。私がわがままを言うなら自分の身は自分で守れという下町のやり方になるのだろう。それでまた誘拐でもされたら逃げ出せる自信は全くない。私の人生職場を首になってからあまりにも忙し過ぎないだろうか。肉体的にも精神的にも。もっとゆったりとした仕事をしているはずだったのに爵位だの婚姻だの。プレゼントの作成だの…こんな多忙すぎる日を過ごすつもりは全くなかった。しかも自称友人は現れるし、誘拐されるし、孤児院絡みの変な貴族との遭遇もある。それにおそらくとてもやんごとない身分のヘラルド様の愛人契約なんて普通の孤児にはありえない待遇だし。私の人生が華やかになったというよりも忙しく、騒がしくなった。良くも悪くも。それは良いのだけれども。良いのだろうか。多分良いはず。何だけれども…今は目の前の人と婚姻をどうすべきかという人生の中での一大イベントが立ち塞がっている。
「他国では我が国から魔石や宝石の原石を購入しているのでそこから技術一つで軍事力が上がるのであれば喉から手が出るほど欲しいでしょうね。それが爵位持ちの未婚貴族であるなら尚更。」
「他国でそんなに魔石や宝石って取れないのですか?」
「鉱物資源は我が国が豊富でほかの国はなくはないけれど多くない感じですね。だから欲しい。少ない労力で新しい技術が手に入るなら。貴族は基本なりふり構わず情報戦からの搦め手ですから。なのでさっさと婚姻しても良いと承諾していただけると皆幸せになると思うのですが?」
良い笑顔で提案されてしまったけれど、私からしたらそれはあまり有難いお話でもない。それに子爵になるのが確定で話が進んでいるが、私はまだ男爵だ。しかもやる気のない男爵で城での仕事は魔導士たちの道具作成のお手伝いくらいで城できちんと仕事をしていない。
そんな仕事のことで結婚すべきというのがまだしっくりこないし、結婚願望はやはりない。ミカエラはそう思いながら目の前にいる護衛を見る。ただの護衛ではないし、次期侯爵様の腹心でもあるイザーク様だ。
「とりあえず、考える材料になるかわかりませんが、子爵になったら降ってくる仕事内容をお伝えいたします。それを基本1人でするか仕事ができる人を雇うことになるのですが…」
もうすぐしたら降ってくるだろうという仕事の内容を教えてもらうとミカエラは貼り付けた笑顔になってしまった。そんなことをできる人を雇えるわけがないし、1人でできるわけもない。ツテも何もないのだが…そんな仕事をしたくない。
「定期的にこんな話をしないと危機感を持てないのですね。」
「うぅ…私の仕事じゃないですもん。欲しくて爵位がきたわけでもなくて大人の都合で爵位が来たのだからその辺りの忖度はしてほしいです。」
「忖度が知り合いの近くの土地なんですけれどね。」
「とりあえず私から贈り物とかしたいのですが、虫除け含め。何か欲しいものでもありますか?」
「…装身具なら自分で作りますけれど。」
「プレゼントしたいのにそれを作らせることはしないと思いますけれど。」
「…今の流行は私が作っているものなんですが。」
そうなんだよなぁ。私が作っているものが今の流行りで、国宝などの職人の作品は見るのが好きなだけで。プレゼントを作ってもらうにしても自分でつくったほうが安上がりで最近の流行りを作ることができる。商業ギルドに相談しても私に発注書が回ってくるだけだ。それなら私に直接言ってくれたほうがいい。
イザークからしたらそれはちがうのでむすっと複雑そうな顔をしていた。複雑な顔をされても今のアクセサリー類を作っているのは私だ。そこをどうするかなら私に直接言って物を作ったほうがいいに決まっている。材料を持参してくれたらそれで作るし、手数料は何か美味しいご飯がいただけるならそれでいいと思う。材料調達が一番手間だし。職人としての自分の都合を考えていたが、イザークとしては贈る相手に作らせるのは何だか違うと思っているのだろう。そのあたりも意思疎通が必要だが、そこまでは至らないようだ。
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