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1 異世界トリップは突然に
1 異世界トリップは突然に ③
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「この世界では、魔王の血が繋がっているのであれば王位継承者です。たとえそれがそこら辺の雑草でも」
「雑草でも……それはすごいですね」
「ええ。しかし、問題は、次期魔王の決め方です」
「そ、それで、私の体を使おうと……」
「そうですよ。ミサキ様、召喚された花嫁と先に子ども作った方が次の魔王。それが、魔王様が決めた今回のルールです」
「うわぁ……」
「まあ、ミサキ様はされるがままにしていたらいいのですよ」
「でも、私、そういうことしたことないですし……されるがままって言っても」
体をあちこち触られて……未だかつて。自分でも他の男にも触れられたことのないトコロに、親しくもない男が踏み込んでくるのだ。怖くないわけがない。
「何かあったら、私にご相談くださいね」
「え?」
この不毛な争いをやめ、穏便に元の世界に帰る手段をシャルロッテが知っているのかもしれない。ミサキが瞳を輝かせると、シャルロッテはにっこり笑う。
「殿方を悦ばせる手練手管に困ったら、いつでも私を頼ってください」
「……は?」
「私、そういうコト大好きなので。ベッドの中でのテクニックなら自信ありますよ。殿方を悦ばせることができたなら、すぐにお子は出来ますわ!」
「……ははは」
ミサキが乾いた笑いをあげる。その虚しい気持ちを知ってか知らずか、シャルロッテは胸を張った。
「さて、ミサキ様……到着いたしましたよ」
目の前に、大きな扉が現れる。それがゴゴゴ……と重たい音を立てながらゆっくりと開いていく。ミサキは一歩後ずさりをして、ぎゅっと唇を噛んだ。
「お待ちしておりました、ミサキ様」
その扉の内側に、セルゲイが立っていた。初めて出会った召喚儀式のときと同じマントを着ていた。
ミサキは大きく深呼吸して、室内に入っていく……だが、シャルロッテの脚はそこで止まったままだった。
「それでは、私はこれで失礼いたします」
「え? シャルロッテさん、もう行っちゃうんですか?」
「ええ、私が抱かれるわけじゃありませんから。それでは、ミサキ様、ごゆっくり」
シャルロッテはにっこり笑って、深々と環球を下げた。セルゲイはそれを尻目に、再びゆっくりドアを閉めてしまう。この世界に来てから、わずかだが気を許していた相手がいなくなり、言いようのない不安に駆られていた。
「ミサキ様、マントを」
「え? あ、あの」
マントの下には、生地の薄く肌が透けて見えるネグリジェしか着ていない。その衣装を用意したのは、他でもないセルゲイだった。セルゲイは「仕方がない」と言わんばかりに大きくため息をついた。
「それなら、私は目をつぶってますから。マントを脱いだらあちらに」
セルゲイが「あちら」と指した方向には……紅の厚いカーテンがかかった天蓋付きの大きなベッドがあった。
「セルゲイさん、あの、約束……」
「大丈夫です、反故には致しません。ミサキ様も、その代わり……」
「……がんばります」
セルゲイが目をつぶったのを確認したミサキは、はらりとマントを脱ぎ落す。室温は少し肌寒いが、緊張のせいかミサキの体が熱い。一歩足を踏み出すたびに、体がぶるぶると震える。寒さではなく……恐怖のせいだ。
「……うわっ」
あと数歩、というところでミサキの足がもつれ……体がふらっと傾く。危ない! とミサキは目をぎゅっと閉じた。
しかし、固い石畳の衝撃はいつまで経っても襲ってこない。その代わり、誰かがミサキの体に触れる感触があった。
「あれ……?」
「こんなところで転ぶなんて、ずいぶん注意力散漫な女だ」
「え……」
顔をあげると……あの爬虫類みたいな目がミサキを見下ろしていた。
「あの……あ、ありがとうございます」
「礼はいい」
「え、あ……きゃっ!」
ドラゴンとのハーフの王子、アレクセイはミサキの肩を抱き膝の裏に腕を差し込む。そのまま、ひょいっと簡単に抱き上げた。お姫様抱っこだ。
「……ずいぶん軽いな」
「あ、あの、あの……」
アレクセイはミサキを抱いたまま、カーテンの中に潜り込んだ。ミサキはぎゅっと目を閉じた。初めての相手はシャルロッテが話していた「優しい方」の王子ではなく、「強引な方」の王子だったようだ。覚悟だって大して固まっていないのに……今の自分にできること以上を求められたらどうしよう……とミサキは鬱々と考えていた。
しかし、現実はミサキの想像をはるかに高い所を越えて行く
キングサイズよりも大きなベッドの中心に、アレクセイはミサキをそっと置いた。恐る恐る目を開けると……枕もとにはもう一人の王子、ミハイルが姿勢を正して座っていた。
「ご機嫌いかがですか、私たちの花嫁さん」
「え……」
「緊張してますか?」
「そ、そうなんですけど、あの……!」
「突然のことで戸惑っているのでしょう? 申し訳ございません、こちらの都合で振り回してしまって」
ミハイルは柔和な笑みを見せる。それを見たミサキも、つられてぎこちなく笑顔を作る。そんなやり取りを見たアレクセイは、大きくため息を吐いた。
「兄上、何を悠長なことを言っているのやら。俺たちの勝負が始まるというのに」
「だとしても、可愛そうじゃないですか? こんなに震えて……」
「そうですか。それなら、兄上はそこから指をくわえてただ見ていたらいい、背に腹をかえられないのは兄上も同じでしょう? この女に先に孕ませた方が次の王、その座を虎視眈々と狙っているのは周知であるのに、わざとらしく余裕ぶって」
「そういう訳ではありません。……このように緊張されていたら、スムーズに行為が進まない。彼女の緊張をほぐすのも、大切だと言いたいのです」
「あの!!」
この世界に来てから、初めて声を荒げた。ミハイルとアレクセイは、目を丸くさせてミサキを見つめる。
「どうして、二人ともいるんですか!?」
「……どうして、と言われましても」
「こ、こういう事って、普通は一対一でするものじゃないんですか?! ど、どうして二人ともする気満々なんですか!」
「何馬鹿馬鹿しい事を」
「な……っ! 私だって、真剣に言ってるんです!」
緊張のせいか、大きな声を出すといつも以上に体力を消耗してしまう。ミサキが肩を上下して呼吸をしていると、アレクセイは少しため息を吐いた。
「どうやら、セルゲイの説明不足のようだな」
「セルゲイから、どのような話を聞いていましたか? 花嫁」
「……セルゲイさんからは、この国のために子どもを作ったら元の世界に返してくれるって……」
「その話は、私たちも聞いていてすでに了承しております。しかし、花嫁との初夜については、何も聞いていないのでしょう?」
初夜。
その言葉に秘められた淫靡な香りに、ミサキは頬を染める。
「雑草でも……それはすごいですね」
「ええ。しかし、問題は、次期魔王の決め方です」
「そ、それで、私の体を使おうと……」
「そうですよ。ミサキ様、召喚された花嫁と先に子ども作った方が次の魔王。それが、魔王様が決めた今回のルールです」
「うわぁ……」
「まあ、ミサキ様はされるがままにしていたらいいのですよ」
「でも、私、そういうことしたことないですし……されるがままって言っても」
体をあちこち触られて……未だかつて。自分でも他の男にも触れられたことのないトコロに、親しくもない男が踏み込んでくるのだ。怖くないわけがない。
「何かあったら、私にご相談くださいね」
「え?」
この不毛な争いをやめ、穏便に元の世界に帰る手段をシャルロッテが知っているのかもしれない。ミサキが瞳を輝かせると、シャルロッテはにっこり笑う。
「殿方を悦ばせる手練手管に困ったら、いつでも私を頼ってください」
「……は?」
「私、そういうコト大好きなので。ベッドの中でのテクニックなら自信ありますよ。殿方を悦ばせることができたなら、すぐにお子は出来ますわ!」
「……ははは」
ミサキが乾いた笑いをあげる。その虚しい気持ちを知ってか知らずか、シャルロッテは胸を張った。
「さて、ミサキ様……到着いたしましたよ」
目の前に、大きな扉が現れる。それがゴゴゴ……と重たい音を立てながらゆっくりと開いていく。ミサキは一歩後ずさりをして、ぎゅっと唇を噛んだ。
「お待ちしておりました、ミサキ様」
その扉の内側に、セルゲイが立っていた。初めて出会った召喚儀式のときと同じマントを着ていた。
ミサキは大きく深呼吸して、室内に入っていく……だが、シャルロッテの脚はそこで止まったままだった。
「それでは、私はこれで失礼いたします」
「え? シャルロッテさん、もう行っちゃうんですか?」
「ええ、私が抱かれるわけじゃありませんから。それでは、ミサキ様、ごゆっくり」
シャルロッテはにっこり笑って、深々と環球を下げた。セルゲイはそれを尻目に、再びゆっくりドアを閉めてしまう。この世界に来てから、わずかだが気を許していた相手がいなくなり、言いようのない不安に駆られていた。
「ミサキ様、マントを」
「え? あ、あの」
マントの下には、生地の薄く肌が透けて見えるネグリジェしか着ていない。その衣装を用意したのは、他でもないセルゲイだった。セルゲイは「仕方がない」と言わんばかりに大きくため息をついた。
「それなら、私は目をつぶってますから。マントを脱いだらあちらに」
セルゲイが「あちら」と指した方向には……紅の厚いカーテンがかかった天蓋付きの大きなベッドがあった。
「セルゲイさん、あの、約束……」
「大丈夫です、反故には致しません。ミサキ様も、その代わり……」
「……がんばります」
セルゲイが目をつぶったのを確認したミサキは、はらりとマントを脱ぎ落す。室温は少し肌寒いが、緊張のせいかミサキの体が熱い。一歩足を踏み出すたびに、体がぶるぶると震える。寒さではなく……恐怖のせいだ。
「……うわっ」
あと数歩、というところでミサキの足がもつれ……体がふらっと傾く。危ない! とミサキは目をぎゅっと閉じた。
しかし、固い石畳の衝撃はいつまで経っても襲ってこない。その代わり、誰かがミサキの体に触れる感触があった。
「あれ……?」
「こんなところで転ぶなんて、ずいぶん注意力散漫な女だ」
「え……」
顔をあげると……あの爬虫類みたいな目がミサキを見下ろしていた。
「あの……あ、ありがとうございます」
「礼はいい」
「え、あ……きゃっ!」
ドラゴンとのハーフの王子、アレクセイはミサキの肩を抱き膝の裏に腕を差し込む。そのまま、ひょいっと簡単に抱き上げた。お姫様抱っこだ。
「……ずいぶん軽いな」
「あ、あの、あの……」
アレクセイはミサキを抱いたまま、カーテンの中に潜り込んだ。ミサキはぎゅっと目を閉じた。初めての相手はシャルロッテが話していた「優しい方」の王子ではなく、「強引な方」の王子だったようだ。覚悟だって大して固まっていないのに……今の自分にできること以上を求められたらどうしよう……とミサキは鬱々と考えていた。
しかし、現実はミサキの想像をはるかに高い所を越えて行く
キングサイズよりも大きなベッドの中心に、アレクセイはミサキをそっと置いた。恐る恐る目を開けると……枕もとにはもう一人の王子、ミハイルが姿勢を正して座っていた。
「ご機嫌いかがですか、私たちの花嫁さん」
「え……」
「緊張してますか?」
「そ、そうなんですけど、あの……!」
「突然のことで戸惑っているのでしょう? 申し訳ございません、こちらの都合で振り回してしまって」
ミハイルは柔和な笑みを見せる。それを見たミサキも、つられてぎこちなく笑顔を作る。そんなやり取りを見たアレクセイは、大きくため息を吐いた。
「兄上、何を悠長なことを言っているのやら。俺たちの勝負が始まるというのに」
「だとしても、可愛そうじゃないですか? こんなに震えて……」
「そうですか。それなら、兄上はそこから指をくわえてただ見ていたらいい、背に腹をかえられないのは兄上も同じでしょう? この女に先に孕ませた方が次の王、その座を虎視眈々と狙っているのは周知であるのに、わざとらしく余裕ぶって」
「そういう訳ではありません。……このように緊張されていたら、スムーズに行為が進まない。彼女の緊張をほぐすのも、大切だと言いたいのです」
「あの!!」
この世界に来てから、初めて声を荒げた。ミハイルとアレクセイは、目を丸くさせてミサキを見つめる。
「どうして、二人ともいるんですか!?」
「……どうして、と言われましても」
「こ、こういう事って、普通は一対一でするものじゃないんですか?! ど、どうして二人ともする気満々なんですか!」
「何馬鹿馬鹿しい事を」
「な……っ! 私だって、真剣に言ってるんです!」
緊張のせいか、大きな声を出すといつも以上に体力を消耗してしまう。ミサキが肩を上下して呼吸をしていると、アレクセイは少しため息を吐いた。
「どうやら、セルゲイの説明不足のようだな」
「セルゲイから、どのような話を聞いていましたか? 花嫁」
「……セルゲイさんからは、この国のために子どもを作ったら元の世界に返してくれるって……」
「その話は、私たちも聞いていてすでに了承しております。しかし、花嫁との初夜については、何も聞いていないのでしょう?」
初夜。
その言葉に秘められた淫靡な香りに、ミサキは頬を染める。
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