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第3章 ヒロイン登場! 皇太子ルート行って、頼む!
第3章 ヒロイン登場! 皇太子ルート行って、頼む! ①
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アルフレッドは「修了式の日に決闘だ」と付け加えていた。突然の事で呆然としている私とセオドアだったけれど、私が先に正気を取り戻した。
「セオドア、断って」
「えぇー」
「え、もしかして受ける気?」
「うーん……差し出がましいようですが、殿下。俺は剣技の成績ではあなたより勝っていますが、それでもいいのですか?」
この学園は男子だけ剣技の授業があり、いつも授業ではセオドアがトップ。彼が剣の名手であることは私もよく知っていた。
「構わない」
「……そうですか。少し、悩む時間をください」
「わかった。だが、返事は早いうちに頼む」
そう言って、アルフレッドは踵を返していく。私たちはざわざわと私たちの話でうるさくなっていくテラスを離れるために、セオドアの腕を引っ張って人気のない校舎裏まで走る。
「何だよ、ティナ。昼飯ぐらいゆっくり食わせろよ」
「何で悩むのよ! 断りなさいよ!」
「いや、だって皇太子が申しこんできた決闘を断ったらあっちの面子にも傷がつくだろうし。ティナ、俺、わざと決闘負けた方がいいよな? さっきのやつだって、どうせ本心じゃないんだろ? お前だって、結婚できるなら誰でも良いってわけじゃないだろうし」
「はあ! セオドアがアルフレッドに負けたら、私がアルフレッドの恋人になるってことでしょ、あの決闘は! 何言ってるのよ!」
「だからだよ、ティナ。覚えてないの?」
「何よ、急に!」
この後に続くセオドアの言葉は、衝撃的なものだった。
「だって、ティナの初恋はアルフレッドじゃないか」
「……え?」
「あー、まじか、覚えてないのか。ほら、子どもの時の話だよ」
セオドアが始めたのは、私たちがまだ幼かったころの話だった。建国100周年記念の日、皇帝陛下と皇太子殿下がパレードをすると聞いて、私がどうしても見たいとセオドアにせがんだらしい。
「子どもだけで屋敷を抜けたら大目玉だって言うのにさ、俺もうずっとビビってたよ」
こっそり屋敷を抜け出した私たちは、王宮までまっすぐのびる街道に出る。人を掻き分けて最前列にたどり着いた時、ちょうど、皇太子が乗った馬車が通りかかった。
「その時、ティナが言ったんだよ」
「え、何て?」
「王子様、かっこいいって。目なんかキラキラさせちゃってさ。だから、俺はずっとティナの初恋は皇太子殿下だと思っていたし、今もずっと好きなんだと思ってた。だから、どうして殿下の告白を断りづつけるのか、不思議で仕方なかったんだけど」
そんな事があったなんて、全く記憶にない。前世の事はありありと思い出せたのに、幼かったころの思い出は頭の奥でしっかり封をされて、開かなくなってしまったらしい。私が戸惑っていると、その様子を見てセオドアは笑っていた。
「まあ、忘れているなら仕方ないな」
「……」
「決闘の事は自分でよく考えるよ。お前もさ、自分のこれからの事、ちゃんと考えた方が良いぜ」
そう言って、セオドアは校舎裏に私を一人残していなくなってしまった。私はそのまま、地面に座り込む。建国100周年記念の日のことは、あまり覚えていない。パーティーの事も朧気にしか記憶に残っていない。そんな事があったなんて……いまいち信じられない。けれど、セオドアは正直者で、私に嘘をつくためだけに一から作り話をすることなんてしない。
「私の初恋がアルフレッド……?」
そんな甘酸っぱくて儚い想いすら忘れてしまっている自分に愕然としていると、チャイムが響き渡った。午後の授業が始まる、早く教室に行かないと!
***
教室に戻る間、私はずっとひそひそという話し声の真ん中にいた。私を巡ってアルフレッドがセオドアに決闘を申し込んだという噂は、まるで光の速さで学園中を駆け巡って、ほんの数十分の間で皆が知ることとなった。教室に入ると、私は注目の的になる。チクチクと刺さるような視線が不快だったけれど、私はそれを我慢して自分の席に着いた。同じように噂の渦中にいるはずのアルフレッドとセオドアは、私とは対照的に涼しい顔をしていた。
「あら、随分モテモテでいらっしゃるティナじゃない」
ねっとりとした声が私の背筋とぞっと撫でた。振り返ると、額に青筋を浮かべたベロニカが立っていた。その後ろにいるマリリンは興味津々で今すぐにでも話を聞きたいというような表情をしているけれど、今の私はそれどころではない。またベロニカの怒りを買ってしまった。
「幼馴染だけじゃなくて皇太子殿下まで手を出すなんて、節操のない事ねぇ。そんなふしだらな事ばかりしているから、お見合いも上手くいかないんじゃない?」
ベロニカは声を張り上げてそんな事を言うから、教室のどこからか「へー、お見合い上手くいってないんだ」「シモンズさんの家って、お兄さんもうつつを抜かしていたから」なんて声が聞こえてくる。私は悔しくて何も言い返すことも出来ないまま、嵐が通りすぎていくのを待った。幸いすぐに先生がやって来て授業が始まったからベロニカの嫌味もそこでストップして、そこからはひたすら授業に集中した。
そして放課後になった瞬間、私はセオドアの腕を引っ張って教室を飛び出した。そのまま先ほどの校舎裏へ向かう。
「お願いセオドア! 決闘、勝って欲しいの!」
「それはあれだろ? 俺とどうにかなりたいってわけじゃなくて、噂とか嫌味を何とかしたいだけだろ?」
「もちろんそうよ! それ以外になんか理由ってある!?」
「決闘に勝ったら、俺とティナは付き合うってことになるけど、いいの?」
「……セオドアがいいなら」
私がそう言うと、セオドアはため息をついた。
「嘘つき。俺と付き合いたいなんて少しも思ってないくせに」
「そ、それは……っ」
セオドアの事は、確かに次男だし、よく知っている間柄だし、うってつけの相手なんじゃないかと思ったけれど……けれど、心のどこかでそれにストップをかけている自分がいる。よく知っているからこそ、これ以上の関係になれそうにない。それはセオドアもうすうす思っていたに違いない。
「俺も、あんまりティナの事が好みじゃないって言うか……」
「何ですって!」
「ほら、怒るなよ」
怒らせたのはそっちじゃない、私は腕を組みセオドアを睨む。
「それなら、しばらく付き合っているふりをして、ほとぼりが冷めたら別れるっていうのはどう?」
「ふりって……それ、うちの親父とかティナの親父さんに知られたらどうするつもりだよ」
私の脳裏に、大喜びするお父様の姿が現れた。確かに、セオドアのお父様と私の父は親しい間柄である。もし子供同士がそんな関係になっていると知れたら……。
「きっとセオドアの婿入りの用意が始まるわね」
「だろ? ティナの家業って確かに立派だし、楽しそうだと思うけど……」
セオドアの胸には、きっとこれから抱く夢の種が芽生えようとしているのかもしれない。私はそれに触れず、そうねと小さく呟いた。
「まあ、俺も色々考えたけれど……殿下の面子を潰さないためには、決闘は受けるべきなんだよ」
確かに。このままセオドアが断ってしまったら、公衆の面前で決闘を申し込んだアルフレッドがただ恥をかくことになる。
「まあ、俺なりに考えてみるから。ティナは心配しなくてもいいよ」
「……信じるわよ」
「おう、大船に乗ったつもりでいてくれ」
セオドアとアルフレッドの決闘の話は、やがて先生方も知ることになった。私は廊下で誰かにすれ違うたびに、「頑張ってね」とか「うらやましい」とか声をかけられるようになっていた。
***
ベロニカからの嫌味に耐えつつ、とうとう修了式の日がやってきた。そして、この日は二人の決闘の日でもある。あの翌日、セオドアは決闘を了承した。アルフレッドはそれ以来剣技の先生に特別な稽古をつけてもらっていた、らしい。それを目撃した子が親切に私に教えてくれた。
決闘が行われる中庭には多くのギャラリーが詰めかけていた。
「ねえねえ、今、どんな気持ち?」
「家柄も申し分のない二人の殿方が自分を奪い合って決闘をするなんて、羨ましいわ」
「どっちを応援しているの? 皇太子さま? セオドア君?」
私は誰が作ったのか分からないけれど、どこからともなくやって来た豪華なソファに座らされ、ただ質問攻めをされていた。
「お、来たぞ!」
王宮の方角でもある北側からアルフレッドが、その反対方向からセオドアが姿を現す。二人とも胸に一輪の赤いバラを差し、腰には木製の模造刀があった。授業でも使用しているものらしいく、本物の剣では怪我をするかもしれないからと剣技を担当している先生が貸してくれたみたいだ。
「ルールは先日通達したとおりだ、胸のバラが散った方が負け」
アルフレッドの声が中庭に響き渡る。
「あぁ、分かってますって。この国の昔のルール、授業でもさんざんやったし。早く始めましょう」
二人は刀身2本分の距離を作り、深々とお辞儀をする。私の胃はぎゅっと縮こまり、胸はハラハラとまるで時計の秒針のように脈打っている。そして、始めの合図がないまま、その決闘は始まってしまった。
「セオドア、断って」
「えぇー」
「え、もしかして受ける気?」
「うーん……差し出がましいようですが、殿下。俺は剣技の成績ではあなたより勝っていますが、それでもいいのですか?」
この学園は男子だけ剣技の授業があり、いつも授業ではセオドアがトップ。彼が剣の名手であることは私もよく知っていた。
「構わない」
「……そうですか。少し、悩む時間をください」
「わかった。だが、返事は早いうちに頼む」
そう言って、アルフレッドは踵を返していく。私たちはざわざわと私たちの話でうるさくなっていくテラスを離れるために、セオドアの腕を引っ張って人気のない校舎裏まで走る。
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「はあ! セオドアがアルフレッドに負けたら、私がアルフレッドの恋人になるってことでしょ、あの決闘は! 何言ってるのよ!」
「だからだよ、ティナ。覚えてないの?」
「何よ、急に!」
この後に続くセオドアの言葉は、衝撃的なものだった。
「だって、ティナの初恋はアルフレッドじゃないか」
「……え?」
「あー、まじか、覚えてないのか。ほら、子どもの時の話だよ」
セオドアが始めたのは、私たちがまだ幼かったころの話だった。建国100周年記念の日、皇帝陛下と皇太子殿下がパレードをすると聞いて、私がどうしても見たいとセオドアにせがんだらしい。
「子どもだけで屋敷を抜けたら大目玉だって言うのにさ、俺もうずっとビビってたよ」
こっそり屋敷を抜け出した私たちは、王宮までまっすぐのびる街道に出る。人を掻き分けて最前列にたどり着いた時、ちょうど、皇太子が乗った馬車が通りかかった。
「その時、ティナが言ったんだよ」
「え、何て?」
「王子様、かっこいいって。目なんかキラキラさせちゃってさ。だから、俺はずっとティナの初恋は皇太子殿下だと思っていたし、今もずっと好きなんだと思ってた。だから、どうして殿下の告白を断りづつけるのか、不思議で仕方なかったんだけど」
そんな事があったなんて、全く記憶にない。前世の事はありありと思い出せたのに、幼かったころの思い出は頭の奥でしっかり封をされて、開かなくなってしまったらしい。私が戸惑っていると、その様子を見てセオドアは笑っていた。
「まあ、忘れているなら仕方ないな」
「……」
「決闘の事は自分でよく考えるよ。お前もさ、自分のこれからの事、ちゃんと考えた方が良いぜ」
そう言って、セオドアは校舎裏に私を一人残していなくなってしまった。私はそのまま、地面に座り込む。建国100周年記念の日のことは、あまり覚えていない。パーティーの事も朧気にしか記憶に残っていない。そんな事があったなんて……いまいち信じられない。けれど、セオドアは正直者で、私に嘘をつくためだけに一から作り話をすることなんてしない。
「私の初恋がアルフレッド……?」
そんな甘酸っぱくて儚い想いすら忘れてしまっている自分に愕然としていると、チャイムが響き渡った。午後の授業が始まる、早く教室に行かないと!
***
教室に戻る間、私はずっとひそひそという話し声の真ん中にいた。私を巡ってアルフレッドがセオドアに決闘を申し込んだという噂は、まるで光の速さで学園中を駆け巡って、ほんの数十分の間で皆が知ることとなった。教室に入ると、私は注目の的になる。チクチクと刺さるような視線が不快だったけれど、私はそれを我慢して自分の席に着いた。同じように噂の渦中にいるはずのアルフレッドとセオドアは、私とは対照的に涼しい顔をしていた。
「あら、随分モテモテでいらっしゃるティナじゃない」
ねっとりとした声が私の背筋とぞっと撫でた。振り返ると、額に青筋を浮かべたベロニカが立っていた。その後ろにいるマリリンは興味津々で今すぐにでも話を聞きたいというような表情をしているけれど、今の私はそれどころではない。またベロニカの怒りを買ってしまった。
「幼馴染だけじゃなくて皇太子殿下まで手を出すなんて、節操のない事ねぇ。そんなふしだらな事ばかりしているから、お見合いも上手くいかないんじゃない?」
ベロニカは声を張り上げてそんな事を言うから、教室のどこからか「へー、お見合い上手くいってないんだ」「シモンズさんの家って、お兄さんもうつつを抜かしていたから」なんて声が聞こえてくる。私は悔しくて何も言い返すことも出来ないまま、嵐が通りすぎていくのを待った。幸いすぐに先生がやって来て授業が始まったからベロニカの嫌味もそこでストップして、そこからはひたすら授業に集中した。
そして放課後になった瞬間、私はセオドアの腕を引っ張って教室を飛び出した。そのまま先ほどの校舎裏へ向かう。
「お願いセオドア! 決闘、勝って欲しいの!」
「それはあれだろ? 俺とどうにかなりたいってわけじゃなくて、噂とか嫌味を何とかしたいだけだろ?」
「もちろんそうよ! それ以外になんか理由ってある!?」
「決闘に勝ったら、俺とティナは付き合うってことになるけど、いいの?」
「……セオドアがいいなら」
私がそう言うと、セオドアはため息をついた。
「嘘つき。俺と付き合いたいなんて少しも思ってないくせに」
「そ、それは……っ」
セオドアの事は、確かに次男だし、よく知っている間柄だし、うってつけの相手なんじゃないかと思ったけれど……けれど、心のどこかでそれにストップをかけている自分がいる。よく知っているからこそ、これ以上の関係になれそうにない。それはセオドアもうすうす思っていたに違いない。
「俺も、あんまりティナの事が好みじゃないって言うか……」
「何ですって!」
「ほら、怒るなよ」
怒らせたのはそっちじゃない、私は腕を組みセオドアを睨む。
「それなら、しばらく付き合っているふりをして、ほとぼりが冷めたら別れるっていうのはどう?」
「ふりって……それ、うちの親父とかティナの親父さんに知られたらどうするつもりだよ」
私の脳裏に、大喜びするお父様の姿が現れた。確かに、セオドアのお父様と私の父は親しい間柄である。もし子供同士がそんな関係になっていると知れたら……。
「きっとセオドアの婿入りの用意が始まるわね」
「だろ? ティナの家業って確かに立派だし、楽しそうだと思うけど……」
セオドアの胸には、きっとこれから抱く夢の種が芽生えようとしているのかもしれない。私はそれに触れず、そうねと小さく呟いた。
「まあ、俺も色々考えたけれど……殿下の面子を潰さないためには、決闘は受けるべきなんだよ」
確かに。このままセオドアが断ってしまったら、公衆の面前で決闘を申し込んだアルフレッドがただ恥をかくことになる。
「まあ、俺なりに考えてみるから。ティナは心配しなくてもいいよ」
「……信じるわよ」
「おう、大船に乗ったつもりでいてくれ」
セオドアとアルフレッドの決闘の話は、やがて先生方も知ることになった。私は廊下で誰かにすれ違うたびに、「頑張ってね」とか「うらやましい」とか声をかけられるようになっていた。
***
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決闘が行われる中庭には多くのギャラリーが詰めかけていた。
「ねえねえ、今、どんな気持ち?」
「家柄も申し分のない二人の殿方が自分を奪い合って決闘をするなんて、羨ましいわ」
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私は誰が作ったのか分からないけれど、どこからともなくやって来た豪華なソファに座らされ、ただ質問攻めをされていた。
「お、来たぞ!」
王宮の方角でもある北側からアルフレッドが、その反対方向からセオドアが姿を現す。二人とも胸に一輪の赤いバラを差し、腰には木製の模造刀があった。授業でも使用しているものらしいく、本物の剣では怪我をするかもしれないからと剣技を担当している先生が貸してくれたみたいだ。
「ルールは先日通達したとおりだ、胸のバラが散った方が負け」
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