鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

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1章 奪う力と与える力

第10話 セーレン・ブーケ

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 僕とピャーねぇは、セーレンさんの後をつけていく。彼は食事の買い出しに向かったようで、何種類かの野菜と肉類を買ってから、宿に戻ろうとした。
 そこで、セーレンさんは、膝が悪そうなお婆さんに遭遇する。そんなお婆さんに声をかけるセーレン氏、荷物を持ってあげて、ゆっくりとその人についていった。

「いいですわー!彼すごくいいですわー!」

 隣のピャーねぇのテンションはアゲアゲだ。
 しかし、ひねくれものの僕の方はというと、『なんだあいつ?いい人すぎて逆にうさんくせぇ』なんて思ってしまう。

 さらには、セーレンさんがおばあさんを送り届けたあと、彼は怪我をしている子猫に遭遇、またしてもポーションを使って治してあげる。

 姉さんは目をキラキラさせているが、僕のテンションはどんどん落ちていく。『いい人過ぎて草、怪しすぎるンゴ』というひねくれ根性が強くなってしまったのだ。

 宿への帰り道、広場に差し掛かったところで、「あの方にしますわー!ちょっとお話してきますの!」とかピャーねぇが言い始める。

「待ってください、ピャーねぇ」

 走り出そうとする姉の手首を握ってステイさせる。

「なんですのー?」

「胡散臭いので僕があいつの本性を暴いてきます」

「どういうことですの?」

「ピャーねぇはここにいて」

「わ、わかりましたわ」

 そして、僕だけがセーレンさんに近づいた。

「すみません。そこのあなた、セーレン・ブーケ様ですよね?」

「え?あ、はい、そうです。どこかでお会いしたでしょうか?」

「いえ、初めてお目にかかりました。私、サクリ北部を治めるファズ子爵の使用人を務めております」

「あぁ、たしかギフト授与候補の。これはご丁寧に」

 野菜などが入った紙袋を持ったまま、ペコリと腰を折るセーレン。

「それでですね。セーレン様にはお願いがあって参りました」

「お願い?なんでしょうか?」

「もし、あなたがギフト授与者に選ばれた場合、辞退していただきたいのです」

「な!?それは!?」

「大きな声を出さないでください。ファズ様は、ご子息にどうしてもスキルを得てほしいようでしてね。もちろん謝礼は差し上げます。前金としてこちらを……」

 僕は袋に入った金貨をちらつかせて見せてやる。

「ゴクリ……」セーレンさんはそれを喉を鳴らして見ていた。

『ほらな、こんなもんだよ、人間なんて』ゲスな僕は、心の中でニンマリとする。イイ人そうにしてたからって騙されないんだからね!

 しかし、すぐに首を振るセーレンさん。

「いえ……お断りいたします」

 ……あれ?

「ギフトの授与とは大変名誉なことです。それに、私になにか、領民のためになるようなスキルが発現するのならば、この機会、絶対にものにしたい。私は自分の領地の領民たちを代表してここに来たんです。ですので、お断り致します」

「な、なんだと……ぐぬぬぬ……」

「お引き取りを」

 僕が悔しそうにしていると、

「ジュナ!あなた悪趣味でしてよ!」

 後ろから我慢できなくなったピャーねぇが声をかけてきた。

「セーレンさん!あなたとってもいいですわー!ぜひ!私のギフトキーでスキルを授けたいですの!」

「え?え?ま、まさか!?ピアーチェス様!?」

 セーレンさんが狼狽し、膝をつこうとするが、

「目立つのでそういうことはやめてください」
 すぐにツッコんでおく。

「はっ!もしや、あなた様はジュナリュシア王子でしょうか?」

「スキル無しも有名になったものですね。少し人目のないところに行きましょうか」

「はっ!なんなりと!」



 僕たちは、町の中を流れる大きな川まで歩いてきた。川にかかる石畳みの橋を渡っていく。馬車がすれ違えるほどの大きい橋を歩き、中腹までやってきた。

「このあたりでいいでしょう。姉上、どうぞお話ください」

「セーレンさん!わたくし!あなたに決めましたわー!」

 そんな、ペットじゃないんだから、と思うが黙っておく。

「え?それは……先ほどもおっしゃっておられましたが、まさか私にギフトキーを?」

「ええ!ええ!わたくし!あなたのような人柄の人こそスキルを持つべきだと思いますの!」

「それは……大変光栄です!ピアーチェス第五王女様!」

 バッと膝をつく、セーレンさん。

「くるしゅうないですわー!おーほっほっほっ!」

「悪役令嬢みたいですよ、ピャーねえ」

「あら?そうかしら?とにかく!わたくし、あなたに決めましたの!素敵なスキルが発現するといいですわね!」

「はっ!ありがたき幸せ!」

「あ……でも……」

 なにかを思い出したように、急にシュンとするピャーねぇ。

「わたくし、スキルランクがEランクですの……ですから、あなたに才能があっても……よくてCランクのスキルしか……」

「そのようなこと!ピアーチェス様がお気になさることではありません!たとえEランクのスキルを授かったとしても!これは大変な栄誉だと考えます!」

 暗い顔をするピャーねぇに、力強くフォローを入れてくれるセーレンさん。

「そうですの?」

「はっ!地方貴族の三男である私にとっては、またとない機会!大変光栄なことです!」

「そうですか!それでは1ヶ月後!頼みましたわよ!」

「はっ!」

「では!帰りますわよ!ジュナ!ついていらっしゃい!」

 僕は、「おーほっほっほっ!」と高笑いしながら歩いていくピャーねぇを追おうとして、ピタリと足を止める。ピャーねぇに対して誠意を見せてくれた男に、謝らないといけない、と思ったからだ。

「セーレンさん」

「はっ!」

「さっきは試すようなことをして、すみませんでした」

「いえ!ジュナリュシア様にもお考えがあってのことでしょう!」

「僕は姉上を守りたかった。だから、悪い奴は遠ざけたいと思ったんです。すみません」

「ジュナリュシア様は、お優しいのですね」

「はは、いえ、僕は自分勝手な人間ですよ。1ヶ月後、授与式では姉上のこと、お願い致します」

「もったいなきお言葉!精一杯務めさせていただきます!」

「では、失礼します」

 僕は橋を渡ったところで僕のことを待っているピャーねぇのもとへと急いだ。

〈ついていらっしゃい〉そう言ったわりに、しっかりと僕のことを待っている彼女の姿は、とても可愛らしく僕の目に映っていた。
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