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1章 奪う力と与える力
第9話 ギフトの授与候補者
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-キーブレス王国 首都 城下町-
ギフト授与式まで後1ヶ月、スキル授与候補の地方貴族たちが城下町に集められていると聞いて、ピャーねぇとお忍びで城下町に赴いた。
ピャーねぇが「スキルを授与する方は自分の目で見て判断したい」と言ったからだ。
2人とも平民らしい服に変装し、ピャーねぇには大きめの帽子被せて金髪を隠して、町中を歩く。
「授与候補の方はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「僕が把握しています。候補者は5人、順番に見にいきましょう」
「さすがジュナですわー!」
「ピャーねぇ、声大きいよ」
褒めてもらって若干気まずくなる。なぜかって、候補者たちの所在を調べてくれたのは、ディセとセッテだからだ。
まぁ、そのことはいい。とりあえず、今日はピャーねぇの好きにさせてあげるとしよう。
♢
1人目、2人目と、候補者を遠目から見た後、「少し休憩しましょう」という話になったので、城下町のカフェでお茶にすることになった。ここのカフェは、大通りに面していて、店の前にパラソルをいくつか立てた席が設置されている。僕たちはそのパラソルの下に座って、中世ヨーロッパのような町中で優雅なティータイムにしゃれこんでいた。
「先ほどの2人はどうでしたか?」
「うーん……イマイチですわね」
「理由を聞いてもいいですか?」
「まず1人目の方は、宿の店主の方に横柄な態度を取っていました。国民を大切にできない方は嫌ですの」
「ふむふむ」
内心では、王侯貴族はほとんどそんなやつですよ、と思ったが黙っておく。
「2人目の方は、服装を見ただけですが、無駄に着飾っていましたよね?」
「まぁ、地方貴族にしては裕福そうには見えましたね」
「あちらの方の領地は貧困問題で大変なはずですの。それなのに、三男であるあの方があそこまで豪華な服を着ているのは違和感を覚えますわ」
「そうですか?授与式に向けて気合を入れてきただけでは?」
「だとしても、あのように宝石の指輪をいくつもつける必要はありませんわ」
「なるほど、ピャーねぇは厳しいですね」
「そうかしら?わたくしからしたら普通ですわ」
「じゃあ、次の候補の人にいきますか。えーと、名前はセーレン・ブーケ、クリオ南部を治めるブーケ子爵の三男ですね。あの宿に泊まっているそうです」
紅茶を飲みながら、大通りの向かい側をピッと指を指す。
僕らが座っている建物と似たような建物がずらりと並んだうちの一軒に、宿屋と書かれた看板が掲げられていた。3階建ての宿屋で、貴族が泊まるには安っぽい印象を受ける外観だ。
「あら、そうなんですの?ですからこちらのカフェにしたんですのね?」
「そうですよ。紅茶でも飲みながらセーレンさんが来るのを待ちましょうか」
「わかりましたわ。ジュナのエスコートは素晴らしいですわね」
「はは、ありがとうございます」
それから1時間くらい待っただろうか。宿屋の入り口からシンプルな服装の男が現れた。高価な服ではないと思うが、身なりはしっかりとしていて、ドアの開け閉めがどこか上品な動作に感じた。貴族としてのマナーを学んだ者の動きに見える。
「彼でしょうか?」
「そうだと思います。聞いていた特徴と一致しますので」
細身で長身のその男は、緑色の長い髪を首の後ろでまとめていて、顔にはメガネをかけていた。資料には、年齢18歳と書いてあるので、容姿からして彼がセーレンさんで間違いないだろう。
「どこかに出かけるようですね。ついていきましょうか」
「いえ、ちょっとお待ちになって」
立ちあがろうとする僕をピャーねぇが制する。なんだろう?と思ってセーレンさんの方を見ると、セーレンさんの後ろから小さな男の子が2人走ってきて、セーレンさんを追い越したところで1人が転んでしまう。その子は転んだまま泣き出してしまい、もう1人のお兄さんらしき男の子はあわてて「どうしようどうしよう」と困っていた。
そこに、セーレンさんが近づく。彼は、泣いている男の子を起こしてあげて、ショルダーバッグからガーゼと小瓶を取り出した。
「あれは?」
「たぶん、ポーションですわ」
セーレンさんはガーゼにポーションを少しずつ垂らしてから男の子の膝に塗ってあげた。ポーションというのは、そんなに安いものではない。それなのに、見ず知らずの子どもに彼はそれを使っている。傷口にポーションを塗り終わると、たちまち擦り傷が治ったようで、泣き止む男の子、そして、その子たちは2人とも笑顔になってセーレンさんにお礼を言っていた。
セーレンさんはその子たちを笑顔で見送ってから、再び歩き出す。
「彼、いいですわ」
「やっとピャーねぇのお眼鏡にかないそうな人が現れましたね」
「追いますわよー!」
テンションが上がったピャーねぇが、僕をおいて駆けていくので、すぐに追いかけた。
前を歩くピャーねぇは、ぜんぜん身を隠そうとしない。一応、そろりそろりと足音をたてないようにしはいるが、姿は隠れていなかった。彼女には尾行というものがなんなのか、教え込まなくてはいけないな。と思うが、あえて黙って観察してみる。
そして、ふと気づいたように、細い外灯に隠れてセーレンさんの様子を伺うピャーねぇ。でも、セーレンさんがたまたま振り向かないだけで、ぜんぜん隠れれてないピャーねぇの姿を見て、つい笑ってしまう。
僕の姉さんは本当に可愛らしい人だ。
ギフト授与式まで後1ヶ月、スキル授与候補の地方貴族たちが城下町に集められていると聞いて、ピャーねぇとお忍びで城下町に赴いた。
ピャーねぇが「スキルを授与する方は自分の目で見て判断したい」と言ったからだ。
2人とも平民らしい服に変装し、ピャーねぇには大きめの帽子被せて金髪を隠して、町中を歩く。
「授与候補の方はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「僕が把握しています。候補者は5人、順番に見にいきましょう」
「さすがジュナですわー!」
「ピャーねぇ、声大きいよ」
褒めてもらって若干気まずくなる。なぜかって、候補者たちの所在を調べてくれたのは、ディセとセッテだからだ。
まぁ、そのことはいい。とりあえず、今日はピャーねぇの好きにさせてあげるとしよう。
♢
1人目、2人目と、候補者を遠目から見た後、「少し休憩しましょう」という話になったので、城下町のカフェでお茶にすることになった。ここのカフェは、大通りに面していて、店の前にパラソルをいくつか立てた席が設置されている。僕たちはそのパラソルの下に座って、中世ヨーロッパのような町中で優雅なティータイムにしゃれこんでいた。
「先ほどの2人はどうでしたか?」
「うーん……イマイチですわね」
「理由を聞いてもいいですか?」
「まず1人目の方は、宿の店主の方に横柄な態度を取っていました。国民を大切にできない方は嫌ですの」
「ふむふむ」
内心では、王侯貴族はほとんどそんなやつですよ、と思ったが黙っておく。
「2人目の方は、服装を見ただけですが、無駄に着飾っていましたよね?」
「まぁ、地方貴族にしては裕福そうには見えましたね」
「あちらの方の領地は貧困問題で大変なはずですの。それなのに、三男であるあの方があそこまで豪華な服を着ているのは違和感を覚えますわ」
「そうですか?授与式に向けて気合を入れてきただけでは?」
「だとしても、あのように宝石の指輪をいくつもつける必要はありませんわ」
「なるほど、ピャーねぇは厳しいですね」
「そうかしら?わたくしからしたら普通ですわ」
「じゃあ、次の候補の人にいきますか。えーと、名前はセーレン・ブーケ、クリオ南部を治めるブーケ子爵の三男ですね。あの宿に泊まっているそうです」
紅茶を飲みながら、大通りの向かい側をピッと指を指す。
僕らが座っている建物と似たような建物がずらりと並んだうちの一軒に、宿屋と書かれた看板が掲げられていた。3階建ての宿屋で、貴族が泊まるには安っぽい印象を受ける外観だ。
「あら、そうなんですの?ですからこちらのカフェにしたんですのね?」
「そうですよ。紅茶でも飲みながらセーレンさんが来るのを待ちましょうか」
「わかりましたわ。ジュナのエスコートは素晴らしいですわね」
「はは、ありがとうございます」
それから1時間くらい待っただろうか。宿屋の入り口からシンプルな服装の男が現れた。高価な服ではないと思うが、身なりはしっかりとしていて、ドアの開け閉めがどこか上品な動作に感じた。貴族としてのマナーを学んだ者の動きに見える。
「彼でしょうか?」
「そうだと思います。聞いていた特徴と一致しますので」
細身で長身のその男は、緑色の長い髪を首の後ろでまとめていて、顔にはメガネをかけていた。資料には、年齢18歳と書いてあるので、容姿からして彼がセーレンさんで間違いないだろう。
「どこかに出かけるようですね。ついていきましょうか」
「いえ、ちょっとお待ちになって」
立ちあがろうとする僕をピャーねぇが制する。なんだろう?と思ってセーレンさんの方を見ると、セーレンさんの後ろから小さな男の子が2人走ってきて、セーレンさんを追い越したところで1人が転んでしまう。その子は転んだまま泣き出してしまい、もう1人のお兄さんらしき男の子はあわてて「どうしようどうしよう」と困っていた。
そこに、セーレンさんが近づく。彼は、泣いている男の子を起こしてあげて、ショルダーバッグからガーゼと小瓶を取り出した。
「あれは?」
「たぶん、ポーションですわ」
セーレンさんはガーゼにポーションを少しずつ垂らしてから男の子の膝に塗ってあげた。ポーションというのは、そんなに安いものではない。それなのに、見ず知らずの子どもに彼はそれを使っている。傷口にポーションを塗り終わると、たちまち擦り傷が治ったようで、泣き止む男の子、そして、その子たちは2人とも笑顔になってセーレンさんにお礼を言っていた。
セーレンさんはその子たちを笑顔で見送ってから、再び歩き出す。
「彼、いいですわ」
「やっとピャーねぇのお眼鏡にかないそうな人が現れましたね」
「追いますわよー!」
テンションが上がったピャーねぇが、僕をおいて駆けていくので、すぐに追いかけた。
前を歩くピャーねぇは、ぜんぜん身を隠そうとしない。一応、そろりそろりと足音をたてないようにしはいるが、姿は隠れていなかった。彼女には尾行というものがなんなのか、教え込まなくてはいけないな。と思うが、あえて黙って観察してみる。
そして、ふと気づいたように、細い外灯に隠れてセーレンさんの様子を伺うピャーねぇ。でも、セーレンさんがたまたま振り向かないだけで、ぜんぜん隠れれてないピャーねぇの姿を見て、つい笑ってしまう。
僕の姉さんは本当に可愛らしい人だ。
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