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1章 奪う力と与える力
第8話 妨害工作
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「それではジュナ!また明日ですわ!」
「うん、また明日ね」
ピクニックのあと、ピャーねぇを自宅まで送り届けてバイバイと手を振る。ピャーねぇが玄関をあけると、優しそうな母親が迎え入れてくれていた。その母親に嬉しそうな笑顔を向けるピャーねぇを見て、僕も自然と笑顔になった。
僕自身も自分の家に帰るとしよう。
♢
ガチャ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おかえりなさいませ、ジュ……ご主人様」
「ただいま、ディセ、セッテ」
扉を開けると、小さなメイドが2人、頭を下げて迎え入れてくれた。僕よりも頭ひとつ分小さいメイドたちに挨拶を返し、リビングへと向かう。
僕の趣向を凝らしたミニスカメイド服に身を包んだ2人は、僕の後ろに続いてゆっくりとついてきてくれる。そして、僕がソファに座った後に、正面のソファに腰掛ける。
「それで、第四王子のスケジュールは分かったかな?」
「はい、ご主人様の予想通り、ギフト授与式前の1週間は、海辺の別荘で過ごすそうです」
薄い紫色のロングヘアーを揺らしながら、褐色肌のディセが答えてくれた。ディセは、腰あたりまで伸びた綺麗な紫髪をそのままおろしていて、頭の両サイドに小さいツインテールを作っていた。ツインテールといってもかなり小さく短めのもので、垂れたアホ毛のようにぴこぴこと動いている。
「そうか、馬車の準備は?」
「ちゃんと準備できてるよ!……できてます!ご主人様!」
隣にいる、これまた褐色肌のセッテがディセと同じ色の髪を揺らしながら答えてくれた。こちらも同じ髪型だ。でも、ツインテールをまとめている髪ゴムのデザインが違っていて、ゴムから垂れ下がっている星形の飾りが黄色だった。ディセの髪ゴムの星は青色をしている。
2人の顔は、双子なのでとてもよく似ている。優しそうな顔に、意思が強そうな金色の目を持っている、可愛らしい少女たちだ。まぁ、つまりは、褐色ロリ双子メイドだ。いつ見ても、完璧な僕の従者たちである。
「ありがとう、セッテ。じゃあ、僕は予定通りその1週間は、あいつの別荘に潜伏することになる」
「承知しました。ご主人様が留守の間、ピアーチェス様のことはお任せください」
「うん、任せた。もし姉さんに何か危険が及んだら、無理矢理にでもいいから城の外に連れ出してくれ」
「はい、そのときは国境のアジトで落ち合う手筈でよろしいでしょうか?」
「ああ、それでいい。頼んだ」
僕は2人に頭を下げる。
「じゃ、今日の報告会は終わりだね。夕食にしようか、今日は僕が作るよ」
「はい!では私がお手伝いしますね!」
「お姉ちゃんずるい!セッテ!セッテが手伝う!」
仕事モードを終えた2人が少女らしい表情を見せて騒ぎ出す。真面目なディセと無邪気なセッテが両腕に絡みついてくるのを僕は笑いながら相手をした。そのまま2人と夕食を作って、3人で食事を済ませてから、その日は眠ることにした。
♢♦♢
-翌日-
「これが、姉さんがスキルを授与する相手の候補リストですか……」
「ええ……この中から選べと言われましたわ……」
僕の自室で、ピャーねぇが持ってきた用紙を2人で眺め、2人して頭を悩ませていた。用紙に記載されている名前は、地方貴族の三男以下の人間ばかり。つまり、ギフトキーでスキルを授けたとしても、高ランクになる可能性が低い人たちしかいなかった。
地方貴族の中には大きな才能の持ち主は少なく、首都に住む有名貴族ほど大きな才能を持っている、というのが通説なのである。この候補者リストを見て、クワトゥル第四王子がニヤついていた理由が理解できた。
「お兄様、ですわね……」
「でしょうね。あのバカ王子が裏で手を回したんでしょう」
「これでは……いよいよ、わたくしの命も危ないかもしれませんわね……」
「ピャーねぇ、何度も聞いたことですが、僕と国外に逃げる気はないんですね?」
「ええ、わたくしは王族として、その務めを果たします」
「わかりました。僕はピャーねぇを応援します。もし、なにかあっても僕が守ってみせます」
「うふふ、素直なジュナは本当に可愛いですわ」
「それで、この中の誰にスキルを授与します?できれば少しでも才能がある人がいいですよね。とは言っても、見分け方なんてないんですが」
スキル発現前の才能の強さについては、測定することはできないとされている。だから、ギフトキーでスキルを授与してみないと、その人がどんなスキル、どんなランクになるかわからないのだ。
ただ、スキルの系統や強さは家系に左右されるということはわかっていた。例えば、クワトゥル第四王子の取り巻きであるブラウとアズーは、水属性魔法の強いスキルが発現する貴族として名が売れていた。長男のブラウがAランク水魔法使いで、次男のアズーは今度の授与式でクワトゥルからスキルを授与されることになるだろう。
前評判では、Aランクのクワトゥルがアズーにスキルを授与すれば、少なくともBランクの水魔法が発現するだろう、と言われている。
「そうですわね。ジュナの言うように、才能がある方を選ぶという考えも理解できますわ。でも、わたくし、才能の強さよりも、その方の志を重視したいですの」
「それは、どういう意味ですか?」
「えっとですわね。スキルを授ける方は、国民や国のことを思ってくれる方がいいですの」
「ピャーねぇ……」
授与式で失敗すれば、自分の命が危ないかもしれないという状況なのに、それでも国のことを考えるピャーねぇの志に感動する。
こんなにいい子を死なせるわけにはいかない。絶対にギフト授与式で失敗なんてさせるわけにはいかない。
「なんですの?ジッと見て」
「ピャーねぇは素敵な女性だなぁ、と思って」
「まぁまぁ!最近のジュナはあれですね!デレ期というやつですわね!テンションあがりますわー!」
「ははは、そうかもしれませんね」
ピャーねぇを喜ばせる意図で言ったわけではなかったが、すごく嬉しそうにされて、抱きしめられてしまった。
僕はピャーねぇに抱かれたまま、ギフト授与式を成功させるプランについて考えを巡らせた。
「うん、また明日ね」
ピクニックのあと、ピャーねぇを自宅まで送り届けてバイバイと手を振る。ピャーねぇが玄関をあけると、優しそうな母親が迎え入れてくれていた。その母親に嬉しそうな笑顔を向けるピャーねぇを見て、僕も自然と笑顔になった。
僕自身も自分の家に帰るとしよう。
♢
ガチャ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おかえりなさいませ、ジュ……ご主人様」
「ただいま、ディセ、セッテ」
扉を開けると、小さなメイドが2人、頭を下げて迎え入れてくれた。僕よりも頭ひとつ分小さいメイドたちに挨拶を返し、リビングへと向かう。
僕の趣向を凝らしたミニスカメイド服に身を包んだ2人は、僕の後ろに続いてゆっくりとついてきてくれる。そして、僕がソファに座った後に、正面のソファに腰掛ける。
「それで、第四王子のスケジュールは分かったかな?」
「はい、ご主人様の予想通り、ギフト授与式前の1週間は、海辺の別荘で過ごすそうです」
薄い紫色のロングヘアーを揺らしながら、褐色肌のディセが答えてくれた。ディセは、腰あたりまで伸びた綺麗な紫髪をそのままおろしていて、頭の両サイドに小さいツインテールを作っていた。ツインテールといってもかなり小さく短めのもので、垂れたアホ毛のようにぴこぴこと動いている。
「そうか、馬車の準備は?」
「ちゃんと準備できてるよ!……できてます!ご主人様!」
隣にいる、これまた褐色肌のセッテがディセと同じ色の髪を揺らしながら答えてくれた。こちらも同じ髪型だ。でも、ツインテールをまとめている髪ゴムのデザインが違っていて、ゴムから垂れ下がっている星形の飾りが黄色だった。ディセの髪ゴムの星は青色をしている。
2人の顔は、双子なのでとてもよく似ている。優しそうな顔に、意思が強そうな金色の目を持っている、可愛らしい少女たちだ。まぁ、つまりは、褐色ロリ双子メイドだ。いつ見ても、完璧な僕の従者たちである。
「ありがとう、セッテ。じゃあ、僕は予定通りその1週間は、あいつの別荘に潜伏することになる」
「承知しました。ご主人様が留守の間、ピアーチェス様のことはお任せください」
「うん、任せた。もし姉さんに何か危険が及んだら、無理矢理にでもいいから城の外に連れ出してくれ」
「はい、そのときは国境のアジトで落ち合う手筈でよろしいでしょうか?」
「ああ、それでいい。頼んだ」
僕は2人に頭を下げる。
「じゃ、今日の報告会は終わりだね。夕食にしようか、今日は僕が作るよ」
「はい!では私がお手伝いしますね!」
「お姉ちゃんずるい!セッテ!セッテが手伝う!」
仕事モードを終えた2人が少女らしい表情を見せて騒ぎ出す。真面目なディセと無邪気なセッテが両腕に絡みついてくるのを僕は笑いながら相手をした。そのまま2人と夕食を作って、3人で食事を済ませてから、その日は眠ることにした。
♢♦♢
-翌日-
「これが、姉さんがスキルを授与する相手の候補リストですか……」
「ええ……この中から選べと言われましたわ……」
僕の自室で、ピャーねぇが持ってきた用紙を2人で眺め、2人して頭を悩ませていた。用紙に記載されている名前は、地方貴族の三男以下の人間ばかり。つまり、ギフトキーでスキルを授けたとしても、高ランクになる可能性が低い人たちしかいなかった。
地方貴族の中には大きな才能の持ち主は少なく、首都に住む有名貴族ほど大きな才能を持っている、というのが通説なのである。この候補者リストを見て、クワトゥル第四王子がニヤついていた理由が理解できた。
「お兄様、ですわね……」
「でしょうね。あのバカ王子が裏で手を回したんでしょう」
「これでは……いよいよ、わたくしの命も危ないかもしれませんわね……」
「ピャーねぇ、何度も聞いたことですが、僕と国外に逃げる気はないんですね?」
「ええ、わたくしは王族として、その務めを果たします」
「わかりました。僕はピャーねぇを応援します。もし、なにかあっても僕が守ってみせます」
「うふふ、素直なジュナは本当に可愛いですわ」
「それで、この中の誰にスキルを授与します?できれば少しでも才能がある人がいいですよね。とは言っても、見分け方なんてないんですが」
スキル発現前の才能の強さについては、測定することはできないとされている。だから、ギフトキーでスキルを授与してみないと、その人がどんなスキル、どんなランクになるかわからないのだ。
ただ、スキルの系統や強さは家系に左右されるということはわかっていた。例えば、クワトゥル第四王子の取り巻きであるブラウとアズーは、水属性魔法の強いスキルが発現する貴族として名が売れていた。長男のブラウがAランク水魔法使いで、次男のアズーは今度の授与式でクワトゥルからスキルを授与されることになるだろう。
前評判では、Aランクのクワトゥルがアズーにスキルを授与すれば、少なくともBランクの水魔法が発現するだろう、と言われている。
「そうですわね。ジュナの言うように、才能がある方を選ぶという考えも理解できますわ。でも、わたくし、才能の強さよりも、その方の志を重視したいですの」
「それは、どういう意味ですか?」
「えっとですわね。スキルを授ける方は、国民や国のことを思ってくれる方がいいですの」
「ピャーねぇ……」
授与式で失敗すれば、自分の命が危ないかもしれないという状況なのに、それでも国のことを考えるピャーねぇの志に感動する。
こんなにいい子を死なせるわけにはいかない。絶対にギフト授与式で失敗なんてさせるわけにはいかない。
「なんですの?ジッと見て」
「ピャーねぇは素敵な女性だなぁ、と思って」
「まぁまぁ!最近のジュナはあれですね!デレ期というやつですわね!テンションあがりますわー!」
「ははは、そうかもしれませんね」
ピャーねぇを喜ばせる意図で言ったわけではなかったが、すごく嬉しそうにされて、抱きしめられてしまった。
僕はピャーねぇに抱かれたまま、ギフト授与式を成功させるプランについて考えを巡らせた。
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