鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

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2章 呪われた炎

第32話 セッテとの出会い

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-翌日-

 自宅のベッドの上で昨日のことを思い出す。どうも昨日の女の子のことが気になった。

 〈妹が風邪を引いている。だから服を貰いたい〉
 つまり、あの上着を布団代わりにする、ということなのか?たしかに今は、夜は冷え込む時期だ。
 あの小さな女の子が、さらに小さな妹を抱きしめて、僕の上着を羽織って震えている姿が脳裏に浮かんでくる。

「うーん……」

 助けに行くべきか悩む。
 僕には、ピャーねぇを第四王子やこの国から救うという使命がある。今、他人のことをどうこう考えているときではない……でも……

「だめだ。放っておけない。行こう」

 結局、非情になりきれない僕は自分に呆れながらも、もう一度、スラム街に足を運ぶことにした。



-スラム街-

 今日は最初から汚れた服装に着替えてきて、ずだ袋に風邪薬とパンと水筒を入れてきた。
 スラム街の中を歩きながら、あの子の姿を探す。どこにいるだろうか。キョロキョロと探し回るが、あの薄い紫髪の女の子は見つからない。

 スラム街の中を数時間探し回ったが、夕方になっても、あの子は見つけれなかった。

「だめかぁ……まぁ、こんだけ広いし、入り組んでるしな……」
 と、半ばあきらめモードに入る。

 途中、探し回っても中々見つからないので、その辺にいる住民に聞いてまわろうかとも思った。でも、聞き込みをするには、この場所の治安は悪すぎる。目立ったらトラブルに巻き込まれる気がして、自分の足で探し回った結果がこれだ。

「帰るか……」

 僕が家に帰ろうとしたとき、路地裏から紫の髪をした女の子がとぼとぼと出てくるのが見えた。
 見つけた!テンションが上がりかけるが、その子の様子がおかしいとすぐに気づく。

「ぐす……ぐす……どうしようどうしよう……」

 泣いていた。不安そうに身体を震わせ、でも周りにいる人は頼ることができず、おろおろとしている。
 僕はすぐに走って近づき、その子に声をかける。

「ねえ!大丈夫!?」

「ひっ!?ごめんなさい!ごめんなさい!」

 僕に声をかけられると、びくついてペコペコと頭を下げる女の子。

「大丈夫、大丈夫だよ。大きい声出してごめんね?こっち見て?」

 僕はしゃがんで、なるべく優しい声で語りかけた。

「え?あ……昨日の……こ、こんにちは……」

「こんにちは、挨拶できて偉いね。泣いてたけど、どうしたの?妹さんに……なにかあったの?」

「……うっ……うう……妹が、起きなくて……」

 冷や汗が流れる。僕があのとき後を追っていれば、と後悔の念が押し寄せた。

「妹さんのところに案内して!」

「え……でも……」

「いいから!早く!」

「は、はい!」

 僕の剣幕におされ、すぐに走り出す女の子。僕はそのあとを追った。

 まだ、まだ間に合うかもしれない。後悔するのはまだ早い。



 連れてこられたのは、犬小屋のような場所だった。入り口に布が被せられていて、その隙間から寝ている人の足が見える。

 正直怖かった。死んでいたら……そうイメージしてしまう。でも、そのときは僕の責任でもある。

「入るよ!」

「で、でも……」

 僕は女の子の制止の声を無視して、小屋の中に入った。

 すると、後ろで泣いている女の子と、同じ顔の幼女がそこにいた。

「え?あれ?」

 僕は後ろを振り返り、そこにあの子が立っているのを確認する。それから、もう一度寝ている子の顔を見た。

「同じ顔?双子か?いや、今はそんなことよりも!」

 僕は仰向けになって寝ている女の子の方に向き直る。

「はぁはぁ……」
 その子は、昨日僕があげた上着だけをかぶって、赤い顔で荒い息をしている。おでこを触ると熱があるのがわかった。
 たぶん風邪、でいいんだよな?自信はなかったが、症状から風邪だと判断して、とにかく薬を飲ませようと考える。僕は、袋からポーションを取り出してその子に飲ませようとした。

「ダメ!」

 僕の腕に女の子が絡みついてくる。

「大丈夫!お薬だから!」

「お薬?」

「そう、えっと。ほら、僕が飲んでも大丈夫、毒じゃないよ」

 僕はポーションを手のひらに出して少しだけ舐めて見せ、毒じゃないことをわからせた。

「……お薬……お金……ありません……」

 こんなときにも、お金を心配をするこの子は、とても教養があるのだと感じた。

「お金はいらないから、大丈夫だから、飲ませるね?」

「はい……」

 そう補足すると、やっと大人しくなって僕の腕から手を離す。それから僕は、寝ている子にポーションをゆっくりと飲ませた。

「あとは……食事を。パン、だと消化に悪いか……でも、栄養が足りないと……ねぇキミ、名前は?」

「わたし?わたしは、D……」

「D?」

 そういう名前なのか?記号のように聞こえるけど、珍しい名前なだけだろうか?

「じゃあ、この子は?」

「C……」

「……」

 なにか嫌なものを感じた。囚人を番号で呼ぶような、そんなもののように聞こえる。いや、でも今はそんなことを話している時間はない。

「えっと、じゃあ、D、このパンを噛み砕いて、この子に、Cに与えてくれるかな?」

「パン……お金が……」

「大丈夫だよ。お金はいらない」

「でも……」

「じゃあ、今度僕のお手伝いをしてくれ。それのお給料だと思って」

「……はい……じゃあ……」

 その子は僕からパンを受け取ると、ハムハムと噛み出した。

 すると「くぅ~」とお腹が鳴る。空腹だったのか。そりゃあそうか、こんなところにいて、満足な食事ができているわけがない。
 それなのに、その子は、ハムハムと噛んでいたパンを口から出してつまみ、妹に食べさせる。自分が食べたいはずなのに。

「……」

 この子を助けたい。自然とそう思った。

 Dは、Cにゆっくりとパンを与えた。パンを半分くらい食べさせてから、また水を飲ませると、Cは少し落ち着いた様子を見せてくれる。少し前より、呼吸も落ち着いてきたように見える。

「C、かんばって……あ、これ……ありがとう、ございました……」

 Dと名乗った幼女は、残りのパンを律儀に僕に返そうとする。

「大丈夫だよ。残りはキミが食べて?」

「えっと……じゃあ、明日……妹に……」

「明日の分はまた別のパンをあげるよ。ほら、パンはまだあるから、食べて?」

 僕は袋の中に、あと3つほどパンがあることを見せ、食べることを促す。Dは、袋の中を見て、宝物を見つけたようなキラキラした顔をし、それから、「いい……の?」と許可を求める。

「うん。キミのために持ってきたんだ。食べて欲しいな」

「あ、ありがとう……ございます……」

 そう言ってからパンにハムっと、かぶりつく。

「…………う……うぅ……う、う……」

 そして、ポロポロと泣き出してしまった。妹が助かって安心したからなのか、久しぶりの食事だったからなのか、涙は止まらない。

 僕には、その子が泣きながらパンを食べるのを眺め続けることしかできなかった。
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