鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

文字の大きさ
32 / 66
2章 呪われた炎

第31話 ディセとの出会い

しおりを挟む
-約5年前、ピアーチェスとジュナが湖に落とされ、ジュナが国取りを誓った数ヶ月後-

「ひどいところだな……」

 僕は城壁の外に出てスラム街まで足を運んでいた。ピャーねぇを守るために、仲間になってくれる人を探しにきたのだ。

 僕には他人のスキルを奪うという特殊能力があることはわかったが、1人で国を盗るのは難しい。信頼できる仲間が必要だと考えて、この数ヶ月 行動してきた。まずは、元身内だったらもしかして仲間になってくれるかも、と考えて、以前うちにつかえていたメイド数人にも声をかけたのだが、申し訳なさそうに断られてしまった。みんな、コレットの惨状を見て恐怖で動けなくなっているようだった。

 だから、苦渋の決断でここに来た。スラム街に住んでる人なら、王族や王国に恨みがある人もいるかもしれない。この国のせいでこんな生活を強いられていることに不満があり、僕の考えに賛同してくれる人がいるかもしれない、というふうに考えたんだ。

「よし……ダメで元々だ。行こう!」

 僕は、気合を入れてから、王都では見たこともない荒れた町並みの中を歩き出した。僕がスラム街を歩いていくと、道ゆく先で生気のない目をした人からジッと見られていることに気づく。
 なんだ?なんで見られている?僕は何もしてないのはずなのに、なんで目立っているんだ?疑問に思い自分のことを見直す。

「そうか……服装か……」

 自分が着ているものが、ここでは上等なものだと気づき、すぐに上着を脱いだ。シャツのボタンを開けて足首をまくり、上着をその辺に捨てる。

「よし、これで目立たないはずだ、行こう」

「……あっ……あの……」

 僕は、目立っていたことに焦りを覚えていたようで、後ろから話しかけてきた小さい声に気づかなかった。そのまま急ぎ足で奥へと進んでいく。

「……あっ!……」



 スラム街の中には、たくさんの人が住んでいて、僕の見立てでは、お金さえ渡せば簡単な仕事をしてくれる人は見つかるだろうな、という所感だった。でも、僕と一緒に命懸けで国に反旗を翻すような人間はどこにもいない、そう感じはじめていた。

 たまに、ごろつきのような目つきの悪い奴らもいた。戦闘力はそれなりにありそうだが、人格的に明らかに問題がありそうだった。目を合わせたら身包みを剥がされそうだったので、その辺の泥で服を汚してやり過ごす。さすがにこの格好なら、王族だとバレないだろう。

 このときばかりは銀髪であることを喜んだ。もし僕が金髪だったら、すぐに誘拐されて身代金の要求に使われただろう。そんなことを考えながら、スラム街のだいぶ奥まで進んできた。

「ふぅ……やっぱダメかなぁ……」

そうつぶやいてから、「そろそろ諦めるか……」と自宅に戻ろうと振り返ったところ、

「あっ……」

 僕のすぐ後ろに小さい女の子が立っていることに気がついた。

「おおっと?ごめん、ぶつかりそうだったね」

「いえ……」

 その子は、薄い紫色の長い髪を揺らしながら、ボロボロのワンピースを着て、立っていた。
 その子の顔を見る。金色の瞳には、このスラム街で見たどの目とも違う、なにか力強いものを感じ取れた。そして、その子は両手で大事そうに僕の上着を持っていたのだ。スラム街に入ってすぐのところで捨ててきた、あの上着だ。

「あれ?それって……」

「あの……こ、これ……」

「拾ってくれたのかな?」

 僕は少ししゃがんでその子に話しかける。8歳の僕から見ても、さらに幼い子だ。2つか3つは年下だと思う。

「ち、ちがくて……これ……いらないなら、もらってもいいですか?」

「その上着を?」

「……はい。く、ください」

 その子は不安そうにしながらも、はっきりと自分の意思を伝えた。僕はその姿に少し感動する。

 この子は、僕がこの服を捨てたってことわかってたと思う。いや、わかってなかったとしても、わざわざ1時間近くも後ろについてきて、「ください」と頼んできたのだ。

 スラム街の人間なら、欲しいものを拾ったら勝手に持っていくだろう、と思っていた。その先入観が恥ずかしくなる。いや、この子が特別なのかもしれない。

「だめ……ですか?」

「あ、ううん、もちろんあげるよ。もともと捨てたものだしね」

 僕が黙っているのを否定の意だと思ったらしく、泣きそうになっているので、服をあげることを了承する。すると、パァッと明るい笑顔を見せてくれた。

「あ!ありがとう!ございます!」

 礼儀正しい子だ、と思う。こんな幼くて、こんな場所にいるのに、すごくしっかりしている子に見えた。

「いえいえ。その上着だけど、なにに使うのか教えてくれるかな?」

 売るのだろうか?と想像しながら質問する。

「い、妹に……あげます……」

「妹?」

「はい……風邪……引いてて……」

「そっか。わかった。お大事にね」

「はい!ありがとうございました!」

 その子は、ペコペコと頭を下げて路地裏に消えていった。

「ふーむ……悪い人ばかりじゃないってことかな?」

 僕はそう呟いてから家に帰ることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...