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2章 呪われた炎
第31話 ディセとの出会い
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-約5年前、ピアーチェスとジュナが湖に落とされ、ジュナが国取りを誓った数ヶ月後-
「ひどいところだな……」
僕は城壁の外に出てスラム街まで足を運んでいた。ピャーねぇを守るために、仲間になってくれる人を探しにきたのだ。
僕には他人のスキルを奪うという特殊能力があることはわかったが、1人で国を盗るのは難しい。信頼できる仲間が必要だと考えて、この数ヶ月 行動してきた。まずは、元身内だったらもしかして仲間になってくれるかも、と考えて、以前うちにつかえていたメイド数人にも声をかけたのだが、申し訳なさそうに断られてしまった。みんな、コレットの惨状を見て恐怖で動けなくなっているようだった。
だから、苦渋の決断でここに来た。スラム街に住んでる人なら、王族や王国に恨みがある人もいるかもしれない。この国のせいでこんな生活を強いられていることに不満があり、僕の考えに賛同してくれる人がいるかもしれない、というふうに考えたんだ。
「よし……ダメで元々だ。行こう!」
僕は、気合を入れてから、王都では見たこともない荒れた町並みの中を歩き出した。僕がスラム街を歩いていくと、道ゆく先で生気のない目をした人からジッと見られていることに気づく。
なんだ?なんで見られている?僕は何もしてないのはずなのに、なんで目立っているんだ?疑問に思い自分のことを見直す。
「そうか……服装か……」
自分が着ているものが、ここでは上等なものだと気づき、すぐに上着を脱いだ。シャツのボタンを開けて足首をまくり、上着をその辺に捨てる。
「よし、これで目立たないはずだ、行こう」
「……あっ……あの……」
僕は、目立っていたことに焦りを覚えていたようで、後ろから話しかけてきた小さい声に気づかなかった。そのまま急ぎ足で奥へと進んでいく。
「……あっ!……」
♢
スラム街の中には、たくさんの人が住んでいて、僕の見立てでは、お金さえ渡せば簡単な仕事をしてくれる人は見つかるだろうな、という所感だった。でも、僕と一緒に命懸けで国に反旗を翻すような人間はどこにもいない、そう感じはじめていた。
たまに、ごろつきのような目つきの悪い奴らもいた。戦闘力はそれなりにありそうだが、人格的に明らかに問題がありそうだった。目を合わせたら身包みを剥がされそうだったので、その辺の泥で服を汚してやり過ごす。さすがにこの格好なら、王族だとバレないだろう。
このときばかりは銀髪であることを喜んだ。もし僕が金髪だったら、すぐに誘拐されて身代金の要求に使われただろう。そんなことを考えながら、スラム街のだいぶ奥まで進んできた。
「ふぅ……やっぱダメかなぁ……」
そうつぶやいてから、「そろそろ諦めるか……」と自宅に戻ろうと振り返ったところ、
「あっ……」
僕のすぐ後ろに小さい女の子が立っていることに気がついた。
「おおっと?ごめん、ぶつかりそうだったね」
「いえ……」
その子は、薄い紫色の長い髪を揺らしながら、ボロボロのワンピースを着て、立っていた。
その子の顔を見る。金色の瞳には、このスラム街で見たどの目とも違う、なにか力強いものを感じ取れた。そして、その子は両手で大事そうに僕の上着を持っていたのだ。スラム街に入ってすぐのところで捨ててきた、あの上着だ。
「あれ?それって……」
「あの……こ、これ……」
「拾ってくれたのかな?」
僕は少ししゃがんでその子に話しかける。8歳の僕から見ても、さらに幼い子だ。2つか3つは年下だと思う。
「ち、ちがくて……これ……いらないなら、もらってもいいですか?」
「その上着を?」
「……はい。く、ください」
その子は不安そうにしながらも、はっきりと自分の意思を伝えた。僕はその姿に少し感動する。
この子は、僕がこの服を捨てたってことわかってたと思う。いや、わかってなかったとしても、わざわざ1時間近くも後ろについてきて、「ください」と頼んできたのだ。
スラム街の人間なら、欲しいものを拾ったら勝手に持っていくだろう、と思っていた。その先入観が恥ずかしくなる。いや、この子が特別なのかもしれない。
「だめ……ですか?」
「あ、ううん、もちろんあげるよ。もともと捨てたものだしね」
僕が黙っているのを否定の意だと思ったらしく、泣きそうになっているので、服をあげることを了承する。すると、パァッと明るい笑顔を見せてくれた。
「あ!ありがとう!ございます!」
礼儀正しい子だ、と思う。こんな幼くて、こんな場所にいるのに、すごくしっかりしている子に見えた。
「いえいえ。その上着だけど、なにに使うのか教えてくれるかな?」
売るのだろうか?と想像しながら質問する。
「い、妹に……あげます……」
「妹?」
「はい……風邪……引いてて……」
「そっか。わかった。お大事にね」
「はい!ありがとうございました!」
その子は、ペコペコと頭を下げて路地裏に消えていった。
「ふーむ……悪い人ばかりじゃないってことかな?」
僕はそう呟いてから家に帰ることにした。
「ひどいところだな……」
僕は城壁の外に出てスラム街まで足を運んでいた。ピャーねぇを守るために、仲間になってくれる人を探しにきたのだ。
僕には他人のスキルを奪うという特殊能力があることはわかったが、1人で国を盗るのは難しい。信頼できる仲間が必要だと考えて、この数ヶ月 行動してきた。まずは、元身内だったらもしかして仲間になってくれるかも、と考えて、以前うちにつかえていたメイド数人にも声をかけたのだが、申し訳なさそうに断られてしまった。みんな、コレットの惨状を見て恐怖で動けなくなっているようだった。
だから、苦渋の決断でここに来た。スラム街に住んでる人なら、王族や王国に恨みがある人もいるかもしれない。この国のせいでこんな生活を強いられていることに不満があり、僕の考えに賛同してくれる人がいるかもしれない、というふうに考えたんだ。
「よし……ダメで元々だ。行こう!」
僕は、気合を入れてから、王都では見たこともない荒れた町並みの中を歩き出した。僕がスラム街を歩いていくと、道ゆく先で生気のない目をした人からジッと見られていることに気づく。
なんだ?なんで見られている?僕は何もしてないのはずなのに、なんで目立っているんだ?疑問に思い自分のことを見直す。
「そうか……服装か……」
自分が着ているものが、ここでは上等なものだと気づき、すぐに上着を脱いだ。シャツのボタンを開けて足首をまくり、上着をその辺に捨てる。
「よし、これで目立たないはずだ、行こう」
「……あっ……あの……」
僕は、目立っていたことに焦りを覚えていたようで、後ろから話しかけてきた小さい声に気づかなかった。そのまま急ぎ足で奥へと進んでいく。
「……あっ!……」
♢
スラム街の中には、たくさんの人が住んでいて、僕の見立てでは、お金さえ渡せば簡単な仕事をしてくれる人は見つかるだろうな、という所感だった。でも、僕と一緒に命懸けで国に反旗を翻すような人間はどこにもいない、そう感じはじめていた。
たまに、ごろつきのような目つきの悪い奴らもいた。戦闘力はそれなりにありそうだが、人格的に明らかに問題がありそうだった。目を合わせたら身包みを剥がされそうだったので、その辺の泥で服を汚してやり過ごす。さすがにこの格好なら、王族だとバレないだろう。
このときばかりは銀髪であることを喜んだ。もし僕が金髪だったら、すぐに誘拐されて身代金の要求に使われただろう。そんなことを考えながら、スラム街のだいぶ奥まで進んできた。
「ふぅ……やっぱダメかなぁ……」
そうつぶやいてから、「そろそろ諦めるか……」と自宅に戻ろうと振り返ったところ、
「あっ……」
僕のすぐ後ろに小さい女の子が立っていることに気がついた。
「おおっと?ごめん、ぶつかりそうだったね」
「いえ……」
その子は、薄い紫色の長い髪を揺らしながら、ボロボロのワンピースを着て、立っていた。
その子の顔を見る。金色の瞳には、このスラム街で見たどの目とも違う、なにか力強いものを感じ取れた。そして、その子は両手で大事そうに僕の上着を持っていたのだ。スラム街に入ってすぐのところで捨ててきた、あの上着だ。
「あれ?それって……」
「あの……こ、これ……」
「拾ってくれたのかな?」
僕は少ししゃがんでその子に話しかける。8歳の僕から見ても、さらに幼い子だ。2つか3つは年下だと思う。
「ち、ちがくて……これ……いらないなら、もらってもいいですか?」
「その上着を?」
「……はい。く、ください」
その子は不安そうにしながらも、はっきりと自分の意思を伝えた。僕はその姿に少し感動する。
この子は、僕がこの服を捨てたってことわかってたと思う。いや、わかってなかったとしても、わざわざ1時間近くも後ろについてきて、「ください」と頼んできたのだ。
スラム街の人間なら、欲しいものを拾ったら勝手に持っていくだろう、と思っていた。その先入観が恥ずかしくなる。いや、この子が特別なのかもしれない。
「だめ……ですか?」
「あ、ううん、もちろんあげるよ。もともと捨てたものだしね」
僕が黙っているのを否定の意だと思ったらしく、泣きそうになっているので、服をあげることを了承する。すると、パァッと明るい笑顔を見せてくれた。
「あ!ありがとう!ございます!」
礼儀正しい子だ、と思う。こんな幼くて、こんな場所にいるのに、すごくしっかりしている子に見えた。
「いえいえ。その上着だけど、なにに使うのか教えてくれるかな?」
売るのだろうか?と想像しながら質問する。
「い、妹に……あげます……」
「妹?」
「はい……風邪……引いてて……」
「そっか。わかった。お大事にね」
「はい!ありがとうございました!」
その子は、ペコペコと頭を下げて路地裏に消えていった。
「ふーむ……悪い人ばかりじゃないってことかな?」
僕はそう呟いてから家に帰ることにした。
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