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第二章 一節 不死身の傭兵
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しおりを挟む芦澤カナのことを殺してから数日は、ほぼエリーが一度目経験した出来事しか起こらなかった。変わっていたことといえば、エリーが芦澤カナとの戦闘で負傷しなかったこと、そして芦澤カナが死体となって今日この日政府に引き渡されるということだ。
リースからマグナムを受け取り、シューティングレンジへと足を運ぼうとしていた時、エリーの無線に連絡が入る。
『エリー!!エリー、聞こえるか!?』
「あ?バリーかどうしたんだ?」
『政府の野郎ども、蘆澤カナのことを引き取った途端にこっちに銃撃してきやがった。幸いメイちゃんはまだ無事だが……流石に数が多い、俺一人じゃ対処できねえ。増援を頼めねぇか?』
「場所は?」
『メイちゃんが今送る!!それを頼りに来てくれ、長くはもたないからな!!』
そしてブツッと無線が切れてしまう。
「政府の野郎が撃ってきやがっただと?前回は安全に帰ってこれたはずだ……。どうなってる?」
ある場所に向かいながら思考を巡らせていたエリーはとある仮説にたどり着く。
(まさか芦澤カナを殺してしまったことで前回と未来が変わった……のか?だとしたら、この先アタシの知らねぇことが起こる可能性が高い。)
「チッ、運命ってのはめんどくせぇな。」
エリーはそうぼやきながら目の前の部屋をカードキーで開ける。その部屋の中にはおびただしい数の銃火器がラックに飾られていた。
「サブマシンガン二丁あれば十分だな。」
ラックにかけられていたサブマシンガンを二丁外すと、それにエリーは弾を込める。そして弾薬を大量に持ってその部屋を出ようとすると……。
「本当にその武装で足りるのかいエリー?」
入口にリースが立っていた。
「問題ねぇ、弾も十分に持ったしな。」
「ふぅん?」
するとリースもある武器を手に取った。
「おいおいお袋……。」
「彼らの尾行手段をなくすことも必要でしょ?サブマシンガンじゃあ防弾性の車にはちょっと火力不足だからね。」
リースが手にしていたのは、重機関銃……。人間相手に打てば防弾チョッキすらも貫通し死に至らしめることのできるとても殺傷能力の高い武器だ。それゆえに取り回しは悪いのだが、リースはそれを軽々と担いでいた。
「ハッ、とてもじゃねぇが日本でドンパチやるような装備じゃねぇな。」
「あははっ、お祭りみたいでいいんじゃないかな?」
「違いねぇ。」
二人は笑うと、メイたちを助けるために走るのだった。
その頃、バリー達は二人が乗ってきた車の後ろで何とか相手の攻撃を耐え凌いでいた。
「チィッ、やってくれるな。」
遮蔽物となっている車から一瞬顔を出しては、バリーは携帯していたマシンピストルを撃つ。だが、正確な狙いをつけられる状況ではないため、ほぼ威嚇射撃のような形となってしまっていた。
「ふぅ、さすがに人数不利だ。」
また遮蔽に身を隠して一つ息を吐くバリーに心配そうにメイが声をかける。
「バリーさん、血が……。」
バリーの腹部からはポタポタと血が滴っていた。この傷はつい先ほどメイのことをかばって受けたもの。
心配するメイに向かってバリーは笑う。
「大丈夫さメイちゃん。このぐらいケガの内に入らない。それにもうすぐエリーが増援に来てくれるはずだ。この状況ももうすぐひっくり返る。」
再びバリーが車から顔を出すと、マシンピストルのトリガーを引いた。しかし途中でマガジン内の弾が切れてしまう。
「クソッ!!」
不幸にも、バリーの持っていたマシンピストルに向こうの銃弾が当たり、銃が弾かれてしまう。
「しまった!!」
その次の刹那、二人のいる車へと向かって走ってくる足音が聞こえてくる。
(ここまでかっ……。)
そしてスーツを着た男が車の裏に顔を出したその時……。
ダンッ!!
重い銃声が辺りに鳴り響き、今にもメイたちのことを撃とうとしていた男の頭がはじけ飛ぶ。
「遅いぜエリー!!」
「ずいぶん待たせちまったなバリー、メイ!!」
「さ、お祭りでも始めようか♪」
二人の救援に来たエリーとリース。車からリースは重機関銃をもって飛び降りると、いまだ遮蔽の裏にいる政府の男たちにむかって銃口を向けた。
「おやおや?ずいぶんちんけな遮蔽に隠れてるねぇ。」
にこりと悪魔的に笑うと、リースは遮蔽物ごと男を撃ち始めた。遮蔽から出ても死……出なくてもいずれ遮蔽物ごと撃ち抜かれて死……どちらに転んでも死の未来から逃れられなかった男は、最終的にリースの重機関銃に遮蔽物ごと撃ち抜かれて死んだ。
「はい二人目、あとは……遠くで傍観してる輩を含めれば六人ってところかな。」
「ほんじゃあアタシが四人やる。お袋は二人やれよ。」
「冗談、全部もらうさ。」
「上等、ならいっちょ勝負としゃれこむかぁ!!」
「あ、その前にメイちゃん、これでささっとバリーの怪我応急処置しといてちょうだい?」
リースはメイのほうに応急キットを放り投げた。
「ひとまず消毒して止血するだけでいいから。」
「わ、わかりました!!」
「さ、始めようか?キルレースをねっ!!」
その言葉と同時にリースの担いでいる重機関銃の銃口が火を噴いた。
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