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二節 死に戻りのリベンジ
2-2-11
しおりを挟む二泊三日の温泉旅行を終え、エリー達がラボへと帰ってくると早速仕事モードへと切り替わったメイが購入者リストの中からリンの家族を洗い出した。
エリーにとって大きな運命の境い目である今日この日……。彼女はいつも以上に真剣な表情でバイクに跨った。
するとそこへリースがやってくる。
「ついにこの日が来たねエリー。」
「あぁ、アタシが死ぬか……それとも生きられるかコイツで試してくるぜ。」
そう言ってエリーはパイルバンカーの入ったケースをポンポンと叩く。
「これから死ぬかもしれないのに、随分落ち着いてるね?」
「はっ、割り切っただけだ。死んだとしてもまたあそこから始まるってな。生き返るってのに死ぬことにビビってたら何もできねぇだろ?」
「それもそうだね。」
「……さて、ほんじゃ行ってくるぜ。」
「気をつけて……っていうのも無理な話だね。ま、ガンバって生き長らえてきなよ!」
リースが景気づけとばかりにエリーの背中を叩く。
「おう!」
そしてエリーはバイクを発進させ、リンの家へと向かうのだった。
リンの家の前に着いたエリーはバイクから降りると、パイルバンカーの入っているケースを開けて、それを右腕に装着する。
「よし、行くか。」
装着を終え、エリーがドアノブに手をかけたその瞬間……。
「その家に何の用か、傭兵よ。」
「出やがったな。」
彼女が後ろを振り返るとそこには憎き敵であるヴラドが堂々と仁王立ちしていた。
「ふむ?まるで我輩がここに現れることを知っていたかのような言い草だ。」
「あぁ、知ってるぜ?テメェのことは良~く知ってる。」
一歩、二歩とヴラドへと近付くエリーは、途中で一気に加速しヴラドの懐を侵略する。
「血がなけりゃ、力を使えねぇってことも……なァ!!」
「むっ!!」
なんの迎撃もされることなく懐へと潜り込んだエリーは、右手をヴラドの心臓部分へと叩き込み、パイルバンカーのトリガーを思い切り引いた。
「死ねよ、クソ吸血鬼……今度はテメェの番だ!!」
それと同時……轟音が響き渡り、銀の杭がヴラドの心臓目掛けて射出される。そして、確かに硬いものを貫く感触をエリーは反動でビリビリと痺れる腕で感じていた。
「コボッ!!」
勢いよく水が溢れるような音がヴラドの口から漏れたかと思えば、次の瞬間エリーの頭に紅く生暖かい大量の血液が降り注ぐ。
「ガハァッ……ハァ、クフフよもや我輩の体を貫く兵器を持ち合わせているとは……随分用意周到ではないか。」
口から血を零しながらもヴラドは笑う。
「久方ぶりに、自らの命を危ぶんだ。数千年ぶりだぞ?」
「……チッ、直前でずらしやがったのか。」
エリーのパイルバンカーの突き刺さっていた場所は心臓の位置から少し外れた右肺。ヴラドは刺さる直前でパイルバンカーの位置をずらしたのだ。
そしてゆっくりとヴラドはパイルバンカーの銀の杭から体を引き離す。
「すっかり肺に穴が空いてしまった。これは治るのに少々時間がかかる。」
困ったように言いながらもヴラドの笑みは崩れない。彼がおもむろにポッカリと空いた胸へと手を当てると、貫かれた場所の肉が蠢き出し、あっという間に傷口を塞いでしまう。
「うむ、これでよし。」
「ケッ、化け物がよ。」
そう悪態を吐くエリーだが、脳内では次の行動をひたすらに考えていた。
(今ので大分この武器を警戒されちまった。二発目にそう簡単に当たってくれるとは思えねぇ。それに野郎たっぷりと血を吐き出していきやがった。これでアイツはあの力が使える。)
「さて……今爆発音を聞いて人間が集まってくるのにそう時間はかからない。我輩としてももっと楽しみたいところだった。」
残念そうにヴラドはそう呟くと、エリーへと向かって指を2本立てた。
「我輩にこれほどの手傷を負わせた褒美に選ばせてやろう。服従か死か……どちらか選ぶがいい。」
その選択肢を与えられたエリーはニヤリと笑う。
「そんなの決まってんだろ?テメェが死ねよ!!」
再びヴラドへと向かって走り出すエリー。しかし、突然彼女の体がビタリと動かなくなってしまう。
「ぐっ……動け、ねぇ。」
自分の体に目を向ければ、先ほど被ったヴラドの血が紅い血の鎖となってエリーのことを拘束していた。
「ハッ、テメェ槍だけじゃなくこういうことも出来んのか。」
「クフフ、本当に我輩のことを良く知っている……。」
不敵にヴラドは笑うと、歪な形の槍を自らの手の中に作り出した。
「それ故に残念だ、服従の意思がないものを無理矢理配下にするのは我輩の理念に反する。お前ならば良い吸血鬼になれると思ったのだが……。」
「へっ、バーカ。とっとと殺せ。」
「…………そうか。」
残念そうにヴラドが槍を持った手を突き出すと、その槍はエリーの心臓を貫いた。
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