アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第一章 龍の料理人

第110話

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 鍋を〆まできっちりと食し、さらには食後の軽いデザートまでお腹の中へと納めたカミル達はその余韻に浸っていた。そんな最中、ふとアベルがあることを私に問いかけてくる。

「そういえばミノル、明日がアルマスとの会談だけど……準備はできてる?」

「あぁ、大丈夫だ。」

「一応念のため聞いておくけど、料理に使うのって野菜ばっか……だよね?」

「野菜ばっかり……というよりも野菜使わないな。」

 わかっていたことのようだが、アベルはガックリと肩を落とした。しかし、一方野菜しか使わない……という言葉を聞いてもカミル達は何も気にした様子は見せていない。
 というのも、彼女達は私が野菜を使ってどんな料理を作るのかある程度知っているからな。そしてその料理は満足するに値する料理であることも……。

「お肉もお魚もない料理かぁ~……。」

「まぁそんなに肩を落とすことじゃない。肉や魚を使わないからといって、満足ができないような料理を私が作ると思うか?」

「それは……まぁ思わないけど。」

「まっ、大船に乗ったつもりで明日を待てばいい。絶対に成功させてみせるからな。…………あ、そうだ。」

 そう言葉にしたとき、私はふとあることを思い出した。

「今回の成功報酬の情報のことも忘れないでくれよ?」

「わかってる、わかってる。成功したらなんにせよ、ミノルには話しておかなきゃいけないことが山ほどあるし、そこは安心して大丈夫。」

「ならいい。」

 こちらもアベルには聞きたいことが山ほどあるからな。今回の報酬として情報を提示したから、あまりアベルに質問はしてなかったが……成功したら根掘り葉掘り聞かせてもらうとしよう。











 そして次の日……。私は誰よりも早く起きて厨房で荷仕度を整えていた。

「包丁良し、コックコート良し、調理器具良し……。後は事前に買っておいた食材とか調味料とかをインベントリにしまえばオッケーだな。」

 自分の商売道具をインベントリにしまっていると、厨房の入り口からノノが顔を出した。大きなあくびをしながら、未だおもたい瞼を指で擦っている。

「お師しゃま……おはようございましゅ。」

 更には寝起きということもあり、まだ呂律が回っていないようだ。エルフの秘薬を使ったあの日を思い出すな。あの日は丸1日さ行を発音するのに苦戦していたからな。

「おはようノノ。まだエルフの国に行くには早いから……眠かったらまだ寝ててもいいんだぞ?」

「大丈夫ですっ……ふぁ…………。」

 口では大丈夫……と言っていても体は正直なもので、まだ寝足りないとあくびをして主張していた。

「それに、お師様が起きてるのにノノが寝てるわけにはいきませんから。」

「そうか……ただ何度も言っているが、無理はするんじゃないぞ?料理人ってのは体があってこそだ。無理して体を壊してしまったら元も子もない。」

 それに子供は寝るのが仕事だ。ぐっすりと眠ることで成長ホルモンが分泌されて大きく育っていく。それが子供の仕組みだからな。

「っと、これで良し。」

 ノノにそう注意換気を促している間に、私の方の準備は完了した。

「お師様、ノノは何を持っていけばいいですか?」

「ん~……そうだな。お手伝い……したいか?」

「したいです!!」

「なら、包丁を持つといい。……ただ鞘があるとはいえ、裸のまま持ち歩くのは物騒に思われそうだな。となれば……。」

 確か私の包丁ケースがもうひとつ剰っていた筈だ。3本位の包丁なら余裕で入る代物だし、これに入れてもらおうか。

「私の包丁ケースお古で悪いが……包丁はこれにしまって持っていくといい。」

「いいんですか?」

「あぁ、これから包丁を持ち歩くときに不便だろうからな。」

「ありがとうございますっお師様!!ノノ一生大事にしますっ。」

 私から受け取った包丁ケースをぎゅっと抱きしめ、嬉しそうな表情を浮かべるノノ。そんな彼女の頭に手を伸ばすと、ふわふわの猫耳と、寝癖でできたアホ毛がぴょんぴょん跳ねてなんとも愛らしい。

「っと、さて……アベルが迎えにくる前にノノの身仕度も整えないとな。」

 後ノノの身仕度を整えたら、カミルとヴェルのことも起こさないといけない。今日はいつもより少し早めに出発しないといけないから、忙しいのなんのって……。

 ……あれ?なんかやってることが屋敷の使用人みたいになってないか!?おかしい、あくまでも私は料理を作るという契約を交わして……っていや、今はそんなことを考えてる暇はない。

「ノノ、着替えは一人でできるな?」

「はいです!!」

「良し。」

 櫛でノノの髪の毛をほぐし、寝癖を直す。そしてクローゼットから着替えを取り出してノノに託す。

「それじゃあ、着替え終わったらアベルがくるまでゆっくりしててくれ。私はカミルとヴェルのことを起こしに行ってくる。」

「わかりました!!」

 そしてカミルとヴェルの部屋の扉を叩き、彼女達を起こしてマームと合流する。
 あわただしい朝を乗り越え、ふぅ……と一つ息を吐き出していると私の前の空間に亀裂が入り、そこからアベルがひょっこりと顔を出した。

「やぁ!!準備はできてるかな?」

「あぁ、後はカミルとヴェルが寝癖を直したら出てくると思う。」

「りょ~かいっ。まだ全然時間には余裕があるから、安心していいよ。ボクもちょっと早めに出てきたしね。」

 そして皆の準備が整った後、アベルの空間魔法でエルフの国へと飛んだのだった。
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