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第三章 魔族と人間と
第148話
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それから数日が経ったある日……いよいよ事態は動き出した。
いつものように食事をしていた時、アベルとノアが何かに気が付いた。
「……来てる。ノアも感じた?」
「うん。あの子たちが来てる。」
「来てるって言うと……まさか……。」
「そのまさかだよ。例の人工勇者がこっちの方に向かってきてる。」
ついに動き始めたか。
するとアベルとノアは食事の手を止め、立ち上がる。
「行かなきゃ。彼らじゃ止められない。」
彼らというのは国境を守る兵士たちのことだろう。
「では妾達も加勢させてもらおうかのぉ~。食後の運動にピッタリじゃ。」
「クスクスッ……カミルったら最近食っちゃ寝ばっかりの生活だったからちょっとお腹が出てきちゃってるものねぇ?」
ぷにぷにとカミルのお腹を突っつくヴェル。
「そ、そんなことないのじゃ!!お主こそたるんでおらんじゃろうな?」
「ふっふ~ん。私は大丈夫よ~私の翼はいつだって最高速を出せるんだから。」
「どうだかのぉ~?」
お互いに文句を言い合っている二人にアベルが言った。
「二人とも、そろそろ行くよ。」
「うむ!!」
「えぇわかったわ。」
今から戦場へと赴くみんなに私は一言だけ声をかけた。
「とにかく、みんな無事に帰ってくること……それだけは約束してくれ。良いな?」
「もちろんじゃ!!」
「ミノルの美味しい料理が待ってるもの絶対帰ってくるわよ。」
「まぁそれ以前にボクが守るけどね~。ま、ミノルは安心して待っててよ。……それじゃ、行ってくるね。」
そう告げるとアベル達は切り開かれた空間の中へと消えていった。
「お師様……。」
残されたノノは私の方を見てくる。
「大丈夫だ。アベルがついてる。」
「みんな強いから……絶対大丈夫。」
心配しているノノに私とマームは言った。
「さて……多分帰ってきたら飯じゃ~って言われるだろうから。ちょっと手の込んだ料理を作って待っておこう。ノノも手伝ってくれるな?」
「あ、は、はいっ!!」
私達に今できることは……彼女達が無事に帰ってくることを祈るだけだ。
◇
空間の切れ目から姿を現したアベル達。
彼女達に気がついた国境の兵士は異様な雰囲気を感じとり、何があったのか尋ねに向かった。
「あ、あの魔王様?」
「みんなに伝えて、今すぐここから退避してって。早く!!」
「は、はいっ!!」
その兵士が国境を守っていた兵士達にアベルの言葉を伝えると、すぐさま皆安全な場所へ向かって退避して行った。
「さて……みんな、今のうちに作戦を伝えておくよ?ボクが先頭に立って戦うから、みんなは離れた位置からボクを援護してね。」
「うむ。」
「それで、もし人工勇者から狙われたら絶対に一人で戦わないこと。いいね?」
「わかったわ。」
集まったみんなにアベルは作戦を説明していく。そして伝達が終わると同時に、国境の向こうに何人か人影が現れた。
人影がハッキリ見える位置までこちらに歩いてくると、アベルはその人影があの時見た人工勇者であると確信する。
「来たね。」
人工勇者がこちらを視認すると、彼女達は腰に提げていた剣を抜き臨戦態勢に入る。
「さ……じゃあみんな行くよ?後ろは頼んだから……ねっ!!」
人工勇者が国境を踏み越えた瞬間に、アベルは地面を蹴り一気に彼女達との距離を詰める。
「悪いけど、手加減はしないからね!!」
アベルが両手をぐっと握りしめると、アベルの手に禍々しい籠手が装着される。これがアベルの武器なのだ。
「ふっ!!」
一気に先頭に立っていた人工勇者の懐に潜り込んだアベルは、腹部目掛けて拳を振り抜いた。
しかし、拳が届こうとした刹那……。
ガキィィィン!!
「…………。」
人工勇者が持つ剣によってその拳は受け止められてしまう。
「あれ?もしかして……それ聖剣かな?」
アベルは自分の拳を止めた剣が無事だったことに驚くが、そんな隙を与えまいとアベルの後ろから二人の人工勇者が襲いかかる。
「おっと!!」
即座に空間を切り裂き、その中にアベルは消える。そして三人の人工勇者が一ヶ所に纏まった瞬間……。
「炎よ……。」
「風よ……。」
「全てを焼き払うのじゃ!!
全てを切り裂きなさい!!」
上空からカミルとヴェルの魔法が人工勇者達を直撃する。超高温の炎と、鋭い切れ味の竜巻のような風とが混ざり合い人工勇者達を襲う。
普通の人間ならば風でバラバラになり炎で灰になるような攻撃だが……。
「………………。」
炎と風とが一瞬にして消えたかと思うと、その中から無傷の人工勇者が姿を現した。
「おぅおぅ、今ので無傷かの。」
「なら、もうちょっと強くしても良さそうね。」
「二人とも良い援護だったよ~。次もお願いね!!」
再び現れたアベルは上空に向かってそう声をかけると、再び人工勇者達へと向かっていく。
「さぁまだまだ行くよ!!」
アベル達の戦いはまだ始まったばかりだ。
いつものように食事をしていた時、アベルとノアが何かに気が付いた。
「……来てる。ノアも感じた?」
「うん。あの子たちが来てる。」
「来てるって言うと……まさか……。」
「そのまさかだよ。例の人工勇者がこっちの方に向かってきてる。」
ついに動き始めたか。
するとアベルとノアは食事の手を止め、立ち上がる。
「行かなきゃ。彼らじゃ止められない。」
彼らというのは国境を守る兵士たちのことだろう。
「では妾達も加勢させてもらおうかのぉ~。食後の運動にピッタリじゃ。」
「クスクスッ……カミルったら最近食っちゃ寝ばっかりの生活だったからちょっとお腹が出てきちゃってるものねぇ?」
ぷにぷにとカミルのお腹を突っつくヴェル。
「そ、そんなことないのじゃ!!お主こそたるんでおらんじゃろうな?」
「ふっふ~ん。私は大丈夫よ~私の翼はいつだって最高速を出せるんだから。」
「どうだかのぉ~?」
お互いに文句を言い合っている二人にアベルが言った。
「二人とも、そろそろ行くよ。」
「うむ!!」
「えぇわかったわ。」
今から戦場へと赴くみんなに私は一言だけ声をかけた。
「とにかく、みんな無事に帰ってくること……それだけは約束してくれ。良いな?」
「もちろんじゃ!!」
「ミノルの美味しい料理が待ってるもの絶対帰ってくるわよ。」
「まぁそれ以前にボクが守るけどね~。ま、ミノルは安心して待っててよ。……それじゃ、行ってくるね。」
そう告げるとアベル達は切り開かれた空間の中へと消えていった。
「お師様……。」
残されたノノは私の方を見てくる。
「大丈夫だ。アベルがついてる。」
「みんな強いから……絶対大丈夫。」
心配しているノノに私とマームは言った。
「さて……多分帰ってきたら飯じゃ~って言われるだろうから。ちょっと手の込んだ料理を作って待っておこう。ノノも手伝ってくれるな?」
「あ、は、はいっ!!」
私達に今できることは……彼女達が無事に帰ってくることを祈るだけだ。
◇
空間の切れ目から姿を現したアベル達。
彼女達に気がついた国境の兵士は異様な雰囲気を感じとり、何があったのか尋ねに向かった。
「あ、あの魔王様?」
「みんなに伝えて、今すぐここから退避してって。早く!!」
「は、はいっ!!」
その兵士が国境を守っていた兵士達にアベルの言葉を伝えると、すぐさま皆安全な場所へ向かって退避して行った。
「さて……みんな、今のうちに作戦を伝えておくよ?ボクが先頭に立って戦うから、みんなは離れた位置からボクを援護してね。」
「うむ。」
「それで、もし人工勇者から狙われたら絶対に一人で戦わないこと。いいね?」
「わかったわ。」
集まったみんなにアベルは作戦を説明していく。そして伝達が終わると同時に、国境の向こうに何人か人影が現れた。
人影がハッキリ見える位置までこちらに歩いてくると、アベルはその人影があの時見た人工勇者であると確信する。
「来たね。」
人工勇者がこちらを視認すると、彼女達は腰に提げていた剣を抜き臨戦態勢に入る。
「さ……じゃあみんな行くよ?後ろは頼んだから……ねっ!!」
人工勇者が国境を踏み越えた瞬間に、アベルは地面を蹴り一気に彼女達との距離を詰める。
「悪いけど、手加減はしないからね!!」
アベルが両手をぐっと握りしめると、アベルの手に禍々しい籠手が装着される。これがアベルの武器なのだ。
「ふっ!!」
一気に先頭に立っていた人工勇者の懐に潜り込んだアベルは、腹部目掛けて拳を振り抜いた。
しかし、拳が届こうとした刹那……。
ガキィィィン!!
「…………。」
人工勇者が持つ剣によってその拳は受け止められてしまう。
「あれ?もしかして……それ聖剣かな?」
アベルは自分の拳を止めた剣が無事だったことに驚くが、そんな隙を与えまいとアベルの後ろから二人の人工勇者が襲いかかる。
「おっと!!」
即座に空間を切り裂き、その中にアベルは消える。そして三人の人工勇者が一ヶ所に纏まった瞬間……。
「炎よ……。」
「風よ……。」
「全てを焼き払うのじゃ!!
全てを切り裂きなさい!!」
上空からカミルとヴェルの魔法が人工勇者達を直撃する。超高温の炎と、鋭い切れ味の竜巻のような風とが混ざり合い人工勇者達を襲う。
普通の人間ならば風でバラバラになり炎で灰になるような攻撃だが……。
「………………。」
炎と風とが一瞬にして消えたかと思うと、その中から無傷の人工勇者が姿を現した。
「おぅおぅ、今ので無傷かの。」
「なら、もうちょっと強くしても良さそうね。」
「二人とも良い援護だったよ~。次もお願いね!!」
再び現れたアベルは上空に向かってそう声をかけると、再び人工勇者達へと向かっていく。
「さぁまだまだ行くよ!!」
アベル達の戦いはまだ始まったばかりだ。
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