アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第三章 魔族と人間と

第151話

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 意識が急速に闇の中へと沈んでいき、それと一緒に体もどこか深いところへと沈んでいくような、不思議な感覚に包まれる。
 そんなとき久しく聞いていなかったあの声が聞こえた。

「またあなたは性懲りもなく生死の境界線を跨ごうとして……これで三回目ですよ?」

 声が聞こえたほうに視線を向けるとそこには一人の美しい女性がいて、こちらを呆れたような目で見ていた。

「まぁ、セレーネとレラをくっつけてくれたことは評価に値しますが……それでも自分の命をもう少しいたわったらどうです?」

「そう言われてもな……今回私は何でここに来る羽目になったんだ?あいにく身に覚えがないんだが……。」

 今回に関しては私はカミルにまた力を与えられたわけでもないし、別に死ぬようなことをした覚えはないのだが……。

 まさか……。

「あの抽出の魔法を使ったのが原因か?」

「その通り!!ちゃんと身に覚えがあるじゃないですかッ!!」

「でもなんでまた急に魔法を使ったからってこうなったんだ?今までも何度か使ったが……別に何の問題もなかったぞ?」

 そう、今まで抽出の魔法は何度も使ってきた。石鹸を作るために当たりの雑草からカリウムを抽出したり、牛乳から乳脂肪分だけを取り出してチーズを作ったり……結構頻繁に使っていた魔法だったんだがな。

「今回いったい何を抽出したと思ってるんですか?勇者の力……いいえ、言い換えるなら私の妹のレラの力ですよ?いくら龍の力を取り込んで強くなったあなたでも耐えられるはずないでしょ!!」

 エルザにがみがみと説教をされる。こんな経験はいつぶりだろう?この道を歩んで1、2年位はよく上の人に怒られたりはしていたが……それ以降経験はないな。

 こう久しぶりに説教されると、あのときの懐かしい感覚が甦ってくるようだ。

 しみじみとしながらエルザの説教を耳に入れていると……。

「ちゃんと反省してます!?」

「あぁ、してるしてる。してるからこうやってちゃんと聞いてるだろ?」

 反省する気がないなら最初から聞く耳を持っていない。

「まったくもぅ……説教してるのに嬉しそうな顔してる人初めて見ましたよ?」

「いや、なんか昔が懐かしくてな。久しく説教なんてされてなかったもんだからさ。」

「はぁ……そんな風にされたから怒る気も消えちゃいました。」

 大きくため息を吐き出すと、じと~っとした目線を私に向けてくる。

「本当はあまり下界に干渉するのは良くないんですけど……まだレラの力が完全に戻った訳じゃないみたいなので、今後もまだあなたの力が必要になるでしょう。でもその魔法を使う度にここに来られちゃ困るので……。」

 パチン!!

 彼女がぶつぶつと言いながら、パチン……と指を鳴らすと私の体に何かが流れ込んでくるのがわかった。

「これは?」

「私の力を少しだけ与えました。これでレラの力に干渉しても命に関わるようなことにはならないでしょう。」

「ほぅ……なるほどな。」

「あ、悪いことに使おうとしたらすぐに取り上げますからね?」

「わかってるさ。」

 もとより悪事などを働くつもりはない。まず第一に、アベル達の目があるなかでそんなことをする方が難しいだろう。

 そんなことを思っていると、エルザが何かに気がついた。

「……っと、どうやら今回はここまでのようですね。」

 エルザがそう呟くと、暗い空間に光が差してきた。その光に私の体が包まれていく最中、彼女は最後にこう言った。

「全部が終わったら、レラとセレーネとあなたに会いに行きますよ。それまでは……こっちに来ちゃダメですからね?」

 彼女が最後にそう言い残すと同時に私の視界がどんどんまばゆい光に包まれていき……目を覚ますと、私の目の前にはみんなの顔があった。

「どうやら気が付いたようだね。」

 私のとなりにいたアルマスが優しく微笑んできた。

「私は…………。」

「お師様~っ!!」

 状況を整理しようと頭を働かせようと思った刹那、目の縁を赤く腫らしたノノが私の胸に顔を埋めてくる。

 そして私の傍らでもう一人大泣きしている人物がいた。

「うぅ~……ほんどによがっだでずぅ~。ぐすっ……私のせいで死んじゃったのかと思いまじだぁ~!!」

 涙やら鼻水やらを大量に垂れ流しながらノアが言った。

「まったく、妾達に帰ってこいと言っておきながらお主自身が危うく帰らぬ身になるところじゃったぞ?」

 やれやれといった感じでカミルは私に言った。

「ま、こうしてちゃんと生きてたんだし良かったじゃない?カミルったら今は強がってるけど、ミノルが倒れたときは凄い慌ててたのよ?」

「なっ!!それは言わんでいいのじゃ!!」

 ヴェルがカミルのことをからかうなか、アベルが今に至った経緯を話してくれた。

「まぁ今まで何があったかって言うと、ミノルが倒れた後、すぐにアルマスに秘薬を作ってもらったんだ。おかげで今ミノルは目が覚めたって感じ。」

「そう……だったのか。」

 アベルから事の経緯を聞いた私はアルマスの方に向き直ってお礼を言った。

「ありがとう、助けられたみたいで……。」

「これぐらいどうってことないよ。秘薬の調合材料は余ってるぐらいだからね。それに、今の状況で君を失うのは痛い。まぁ、今はゆっくり休むと良いよ。それじゃ、僕はここらで失礼するね。」
 
 そう言い残すとアルマスは部屋を後にして行った。

 この世界に来てからというものの、命を救われてばっかりだな。恩を返さないといけない相手がたくさんいることを改めて実感した私は、思わず苦笑いを浮かべてしまうのだった。
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