アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

文字の大きさ
153 / 200
第三章 魔族と人間と

第152話

しおりを挟む
 状況が落ち着いた後、私はノアにあることを問いかけた。

「そういえば、あれでノアに力は戻ったのか?」

「あ……あの子達の分はちゃんと戻ってきました!!ありがとうございました。」

「そうか、なら良かった。」

 あの方法でちゃんとノアに力を戻せることを実感し、ホッと胸を撫で下ろしていると、私の方をじっ……と見てアベルが不思議そうに呟いた。

「ん~……ミノル。なんかちょっと雰囲気変わった?」

「なにも変わってないと思うんだが……なにか変か?」

「うん、なんて言うのかな~……こうノアともまた違う別な何かがミノルにある気がするんだよね。」

 首をかしげながらアベルがそう言うと、それに続いてノアが声をあげた。

「あっ、私もそれ感じました。変……って言ったら失礼ですけど、何か不思議な力を感じるんです。」

「ふむ……。」

 それは恐らく……エルザの力を受け取ったからなのだろうか?勇者の力の源である女神レラの力に干渉しても、無事に済むように与えられた力だが。
 やはり同じ女神という繋がりで、アベルとノアはそれを敏感に感じ取っていたのだろうか。

「妾は相変わらず、ヴェルの力と妾の力しか感じないがの~……。」

「ね~?」

 カミルとヴェルは自分達が与えた力以外は感じないらしい。

 と、いうことは……やはりアベル達が感じているのは女神の力ということで間違いないだろう。

 ま、ここは適当に誤魔化しておこう。変にエルザの話をしてもあれだしな。

「多分あれじゃないか?私が魔法で勇者の力に触れたからだと思うぞ?耐性か何かがついたんじゃないか?」

「う~ん……そう、なのかなぁ?」

「だってカミル達に力を受け取ったときみたいに、力が増してるわけでもないし……な。」

 これはいたって本当のことだ。体を動かしてみても、特に変化は感じられない。

「まぁ何もないなら良いんだけどさ。……っとボク、アルマスのこと送ってくるよ。すぐ戻ってくるね~。」

 そう言い残すと、アベルは部屋の外へと出ていった。

「まぁ今日は1日ゆるりと体を休めておくのじゃな。無理は禁物じゃ。」

「そうそう、今まで働きづめだったんだから今日位休んでおきなさい?」

「休むのも……仕事のうち。」

 カミル達に口々にそう言われてしまった。そこまで言われては無理に動くことはできないな。

 そう渋々と納得していたときだった……。

 くぅ~~~…………。

「あっ!!」

 ノアのお腹が限界だと悲鳴をあげた。周りにいたみんなにそれを聞かれてしまった彼女は顔を真っ赤にして、手で覆い隠してしまった。

「む、もう飯時かの~。妾もつられて腹が減ってきたのじゃ。」

「ならノノがお師様の代わりに作りますっ!!」

「うむうむ、頼むぞノノ?ミノルが動けん今お主しか料理は作れんからの~。」

「任せてください!!それじゃあお師様はごゆっくり……安静にしててくださいね?」

「……ふっ。あぁ、わかった。ここでおとなしくしてるよ。」

 愛弟子のノノにまで釘を刺されてしまった私は、いよいよもう安静にしているほかなくなった。

 そしてみんなが部屋を後にして、私一人となったこの部屋は静寂に包まれる。

「さて、やることもないし……一先ず寝て体を休めるか。」

 そう思って目を閉じた次の瞬間だった。

「あぁ……愛とはなんて美しいものなのでしょうか。」

「!?」

 突然私の耳元でおっとりとした声が聞こえた。慌てて目を開けて、声のした方を振り返るとそこには一人の美しい女性がいて、私のことをうっとりとした目で見つめていた。

 彼女の容姿はどこかエルザに似ている。髪の色や瞳の色はまったく別物だが、顔立ちはそっくりだ。

「うふふっ、こんにちは。姉さんの遣いの人。姉さんから聞いてるかもしれないけど……一応ね。私はレラ、愛がだ~いすきな女神様なの。」

「なっ……なっ……なんで、いったいどうなって……。」

 戸惑う私の姿をクスリと笑いながらも、彼女は口を開く。

「あなた、姉さんに力をもらったでしょう?だから私の姿が見えるのよ。いいえ……見えるだけじゃないわ。ほら……感じて?」

 おもむろに彼女は私の腕を手に取ると、ぎゅっと抱きしめてきた。すると、その豊満な胸が押し潰されるように私の手に当たる。

「っ!!や、やめてくれ!!」

「あんっ……強引ね。それに……」

 慌てて手を引き抜くと、艶を帯びた声色で彼女はそう言った。

「こんなにもたくさんの愛を受けているのに、まだ経験がないのね?」

「生憎料理に全てを注いできたからな。」

 図星を突かれて私はそう言い返すことしかできなかった。

「うふふっ、いいわねぇ~あなたみたいな人。私だったら……。あなたに愛を向けているみんなはどうして我慢なんてしてるのかしら……。もったいないわ。」

 艶かしい目でこちらを見てくる彼女は、ふとあることに気がついた。

「あ、もしかしてあの子達は……のかしら?うふふっ。」

 一人で何かを納得すると、彼女は私の頬に手を当てて言った。

「あなたが恋愛を知らないのは、よ~くわかったけど~……そんなに鈍感じゃ、いつかあなたのせいでが訪れちゃうかもよ?それだけは……覚えておいてねっ?」

 それだけ言うと彼女は私の前から消えていった。

「私が破滅を?それはいったいどういう……。」

 彼女が最後に言った言葉が理解できずに悶々と一人の時間を過ごすミノルだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

異世界で「節分」始めました。~聖なる大豆と恵方巻で、痩せた荒野を最強の農園国家に作り替えます~

黒崎隼人
ファンタジー
目覚めればそこは、草木も生えぬ死の荒野だった。 農家の息子・ハルトが手にしたのは、たった一粒の干からびた大豆と、謎のスキル【節分】。 「鬼はぁ、外ォッ!」 その掛け声と共に放たれた豆は、魔物(赤鬼)を一撃で浄化し、痩せた土地を肥沃な大地へと変える規格外の力を持っていた!? 無限に増えるSSSランクの聖なる大豆。一瞬で育つ野菜たち。 そしてスキルで生み出した「恵方巻」の美味しさは、行き倒れていた元エリート女騎士・セシリアの胃袋を完全に掴んでしまい……? 豆の精霊マメゾウや、グルメなギルドマスターを巻き込んで、ハルトの異世界農業生活が今、始まる。 豆まきで世界を救い、美味しい日本食で仲間を笑顔にする、ほのぼの農園ファンタジー!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

処理中です...