168 / 200
第三章 魔族と人間と
第167話
しおりを挟む
そして次の日……いよいよ人間の国へ赴くため国境に集まった。
「うわ~……こうしてこの線の前に立つとやっぱり緊張するなぁ~。」
人間と魔族とを分けていた一本の国境という線の前に立ったアベルは言った。
「緊張……って私とアベルは一度この線を大きく踏み越えてるだろ?」
以前ノアを助けに行った時にこの線を大きく踏み越えて、王都まで行ったというのにな。
アベルにそう突っ込むと彼女は私に言った。
「いやさ、あの時はアレじゃん?ノアが危ない~ってなって、考える前に動いてたから……。こうして改めてここを踏み越えるって考えたら凄いことだな~って。」
まぁ、アベルにとってはいろいろと感慨深いものなのは間違いない。
生憎私はこんな一本の線に、何の感情も沸かないがな。
「さ、今日はたくさん村を回らないといけないんだ。こんなとこで足を止めてる暇はないぞ?」
私は人間と魔族とを分け隔てていた線を踏み越えながら言った。
「あ!!ちょっと待ってよミノル~!!」
私が国境を踏み越えると、慌ててアベルが後ろを着いてきた。
「ノア殿、我々も行きましょう。」
「はいっ!!」
アベルの後ろからノアとゼバスもこちらに合流する。
「それじゃアベル、最初に向かう村はここだ。」
私はインベントリから地図を取り出して、その地図上にある国境に一番近い村を指差した。
「えっ~と~?ここが王都で……ここが今ボクらがいるところだから…………この辺!!」
地図で村の座標を確認しつつ、アベルは空間を切り裂いた。早速中に入ってみると、裂けた空間は目的の村の少し手前に繋がっていた。
「しばらく座標で飛んでなかったから……鈍ったか?」
「ぶ~っ!!失礼だなぁ~……いいじゃん目の前にあるんだからさっ?」
軽く失敗したアベルを弄っていると、ノアがいち早く村の異変に気が付いた。
「建物が壊れてる…………っ!?まさかっ!!」
「ノアっ!?」
何かを予感したノアは私達を置いて、先に村の中へと飛び込んで行った。
「私達も行くぞ。」
「うん!!」
私達も急いで村の中へとノアのことを追いかけていくと……村の中はひどい有り様だった。
建物は破壊され、あちこちに血のようなものが飛び散っている。
アベルは飛び散った血を指で掬い、じっと眺めると口を開いた。
「……これ、魔物の血だ。まだ新しいね。」
「っ!!こうしては居れん!!」
魔物の襲撃があったことを察したゼバスはいち早く村の中を駆けていく。
「あの様子を見るに……昨日まではここは何ともなかったみたいだな。」
「そうみたいだね。」
冷静に状況を把握していると……。
「グルルルル…………。」
「お?」
壊れた建物の中から見覚えのあるオオカミのような魔物が何匹も姿を現し、私とアベルの事を取り囲んできた。
「ウルフか~……この子達じゃあんな建物を壊したり出来ないと思うんだけどなぁ。」
周りを取り囲まれながらも、冷静にアベルは分析する。すると、村の奥でドン……と何かが激しくぶつかり合う衝撃音が聞こえてきた。
「はっはぁ~……本命はあっちかぁ~。」
「アベル、冷静に分析してるとこ悪いんだが……。コイツらをまずどうにかしてくれないか?」
今にも飛びかかってきそうなんだが……。
アベルがウルフと呼んだ魔物は目が血走っていて、口元からは絶えず涎がポタポタと地面に垂れている。
私達のことを食料としか認識していないらしい。
「え?ウルフぐらいミノルでも倒せるでしょ?」
ぽかんとした表情でアベルは言った。
「いや、無理だろ!?こちとらそういう経験ゼロだぞ!?」
「大丈夫大丈夫~、少しとはいえカミルとヴェルの力を取り込んでるんだし~……ねっ?もちろん危なくなったら助けるからさっ。」
さっき弄ったお返しとばかりにアベルは私に戦闘を強要してくる。
すると、私の目の前でこちらを威嚇していた一匹が飛びかかってきた。
「ガルアァァァッ!!」
「~~~っ!!」
飛びかかってきたウルフに私は、無我夢中で握った拳を振り抜いた。
すると、手に硬い毛の感触とバキバキと何かが砕けたような感触が伝わってきた。
恐る恐る眼を開けてみると、私に飛びかかってきたウルフは大きく吹き飛び、家の外壁に頭から突き刺さっていた。
「お~……派手に飛んだね!」
パチパチと拍手する音が聞こえ後ろを振り返ると、にやにやと笑みを浮かべるアベルがそこにはいた。
そして気が付けば……私達のことを取り囲んでいたウルフは一匹もいなくなっていた。
「ねっ?大丈夫だったでしょ?」
「次は勘弁願いたいな。この何かを殴る感触ってのはどうにも好きになれない。」
未だに手に残る感触は、正直二度と味わいたくはないものだった。
「残りのウルフは?」
「ボクがやっといたよ~。」
ケロリとした表情でアベルは言った。私が一匹倒したとはいえ、十匹以上いたと思ったんだが……。
さすが魔王だな。
「辺りに後は魔物の気配はないし、ボクらもノア達のとこに行こ?」
「あぁ。」
ウルフを片付けた私たちはノア達のもとへと急ぐのだった。
「うわ~……こうしてこの線の前に立つとやっぱり緊張するなぁ~。」
人間と魔族とを分けていた一本の国境という線の前に立ったアベルは言った。
「緊張……って私とアベルは一度この線を大きく踏み越えてるだろ?」
以前ノアを助けに行った時にこの線を大きく踏み越えて、王都まで行ったというのにな。
アベルにそう突っ込むと彼女は私に言った。
「いやさ、あの時はアレじゃん?ノアが危ない~ってなって、考える前に動いてたから……。こうして改めてここを踏み越えるって考えたら凄いことだな~って。」
まぁ、アベルにとってはいろいろと感慨深いものなのは間違いない。
生憎私はこんな一本の線に、何の感情も沸かないがな。
「さ、今日はたくさん村を回らないといけないんだ。こんなとこで足を止めてる暇はないぞ?」
私は人間と魔族とを分け隔てていた線を踏み越えながら言った。
「あ!!ちょっと待ってよミノル~!!」
私が国境を踏み越えると、慌ててアベルが後ろを着いてきた。
「ノア殿、我々も行きましょう。」
「はいっ!!」
アベルの後ろからノアとゼバスもこちらに合流する。
「それじゃアベル、最初に向かう村はここだ。」
私はインベントリから地図を取り出して、その地図上にある国境に一番近い村を指差した。
「えっ~と~?ここが王都で……ここが今ボクらがいるところだから…………この辺!!」
地図で村の座標を確認しつつ、アベルは空間を切り裂いた。早速中に入ってみると、裂けた空間は目的の村の少し手前に繋がっていた。
「しばらく座標で飛んでなかったから……鈍ったか?」
「ぶ~っ!!失礼だなぁ~……いいじゃん目の前にあるんだからさっ?」
軽く失敗したアベルを弄っていると、ノアがいち早く村の異変に気が付いた。
「建物が壊れてる…………っ!?まさかっ!!」
「ノアっ!?」
何かを予感したノアは私達を置いて、先に村の中へと飛び込んで行った。
「私達も行くぞ。」
「うん!!」
私達も急いで村の中へとノアのことを追いかけていくと……村の中はひどい有り様だった。
建物は破壊され、あちこちに血のようなものが飛び散っている。
アベルは飛び散った血を指で掬い、じっと眺めると口を開いた。
「……これ、魔物の血だ。まだ新しいね。」
「っ!!こうしては居れん!!」
魔物の襲撃があったことを察したゼバスはいち早く村の中を駆けていく。
「あの様子を見るに……昨日まではここは何ともなかったみたいだな。」
「そうみたいだね。」
冷静に状況を把握していると……。
「グルルルル…………。」
「お?」
壊れた建物の中から見覚えのあるオオカミのような魔物が何匹も姿を現し、私とアベルの事を取り囲んできた。
「ウルフか~……この子達じゃあんな建物を壊したり出来ないと思うんだけどなぁ。」
周りを取り囲まれながらも、冷静にアベルは分析する。すると、村の奥でドン……と何かが激しくぶつかり合う衝撃音が聞こえてきた。
「はっはぁ~……本命はあっちかぁ~。」
「アベル、冷静に分析してるとこ悪いんだが……。コイツらをまずどうにかしてくれないか?」
今にも飛びかかってきそうなんだが……。
アベルがウルフと呼んだ魔物は目が血走っていて、口元からは絶えず涎がポタポタと地面に垂れている。
私達のことを食料としか認識していないらしい。
「え?ウルフぐらいミノルでも倒せるでしょ?」
ぽかんとした表情でアベルは言った。
「いや、無理だろ!?こちとらそういう経験ゼロだぞ!?」
「大丈夫大丈夫~、少しとはいえカミルとヴェルの力を取り込んでるんだし~……ねっ?もちろん危なくなったら助けるからさっ。」
さっき弄ったお返しとばかりにアベルは私に戦闘を強要してくる。
すると、私の目の前でこちらを威嚇していた一匹が飛びかかってきた。
「ガルアァァァッ!!」
「~~~っ!!」
飛びかかってきたウルフに私は、無我夢中で握った拳を振り抜いた。
すると、手に硬い毛の感触とバキバキと何かが砕けたような感触が伝わってきた。
恐る恐る眼を開けてみると、私に飛びかかってきたウルフは大きく吹き飛び、家の外壁に頭から突き刺さっていた。
「お~……派手に飛んだね!」
パチパチと拍手する音が聞こえ後ろを振り返ると、にやにやと笑みを浮かべるアベルがそこにはいた。
そして気が付けば……私達のことを取り囲んでいたウルフは一匹もいなくなっていた。
「ねっ?大丈夫だったでしょ?」
「次は勘弁願いたいな。この何かを殴る感触ってのはどうにも好きになれない。」
未だに手に残る感触は、正直二度と味わいたくはないものだった。
「残りのウルフは?」
「ボクがやっといたよ~。」
ケロリとした表情でアベルは言った。私が一匹倒したとはいえ、十匹以上いたと思ったんだが……。
さすが魔王だな。
「辺りに後は魔物の気配はないし、ボクらもノア達のとこに行こ?」
「あぁ。」
ウルフを片付けた私たちはノア達のもとへと急ぐのだった。
0
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
異世界で「節分」始めました。~聖なる大豆と恵方巻で、痩せた荒野を最強の農園国家に作り替えます~
黒崎隼人
ファンタジー
目覚めればそこは、草木も生えぬ死の荒野だった。
農家の息子・ハルトが手にしたのは、たった一粒の干からびた大豆と、謎のスキル【節分】。
「鬼はぁ、外ォッ!」
その掛け声と共に放たれた豆は、魔物(赤鬼)を一撃で浄化し、痩せた土地を肥沃な大地へと変える規格外の力を持っていた!?
無限に増えるSSSランクの聖なる大豆。一瞬で育つ野菜たち。
そしてスキルで生み出した「恵方巻」の美味しさは、行き倒れていた元エリート女騎士・セシリアの胃袋を完全に掴んでしまい……?
豆の精霊マメゾウや、グルメなギルドマスターを巻き込んで、ハルトの異世界農業生活が今、始まる。
豆まきで世界を救い、美味しい日本食で仲間を笑顔にする、ほのぼの農園ファンタジー!
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる