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第三章 魔族と人間と
第168話
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ノア達が向かっていった方向へ急いで向かうと、その途中今度はズン……と何やら地鳴りのような衝撃が大地を揺らした。
そして村の奥に教会のような建物が見えてくると、その中にノアとゼバスの姿があった。
「ノア~大丈夫?」
「あっ……アベル。それにミノルさん。」
こちらを振り返ってきたノアの前には、青色の肌をした大きな巨人が倒れていた。
「無事で何よりだ。それで……生存者は?」
「多分この下に隠れてると思います。」
ノアが教会に佇んでいた女神像の手首を捻ると、女神像が建てられていた土台の下に階段が現れた。
隠し部屋……というやつだな。
その階段を下っていくと、狭い部屋があり……そこに残っていた人々が集まっていた。
「ゆ、勇者様!!ゼバス様っ!!」
ノアとゼバスの姿を見た彼等は安堵の表情を浮かべた。
「皆、もう大丈夫だ。外の魔物はノア殿が打ち倒した。……よくぞ生き残った。」
そう声をかけるゼバスに、村人の一人があることを問いかけた。
「ぜ、ゼバス様……魔族へと助けを求めた彼等はどうなったのですか?」
「うむ、彼等は今魔族の国にある街に移住し、その地で生活させてもらえることになった。」
ゼバスからそう報告を聞くと、村人達はお互いに顔を見合わせて懇願するように言った。
「わ、私達も……連れていっていただくことはできないでしょうか?」
「無論そのつもりで戻ってきた。では……アベル殿、お願いできるだろうか?」
「はいは~いっと。」
アベルは空間を大きく切り裂く。
「この中に入れば人間達が暮らしてる街に着くから。あっちに着いたらシグルドって魔族の指示に従ってね?」
「わかりました……。」
そして村人達は空間の切れ目へと入っていく。最後の村人が中に入ると、空間の切れ目はゆっくりと口を閉じた。
「これで一つ目の村はおしまいだね。」
「まだたくさん残ってるよ。他の村や街も魔物に襲われてるかもしれないから早く次に行かないと……。」
ノアの言うとおりだ。他の村や街も魔物に襲われてる可能性は十分にある。犠牲を出さないためにも早く次に行かないとな。
「わかってるって~それじゃ次は……ここっ!!」
再びアベルが空間を切り裂く。中に入ると……今度はちゃんと街の中に繋がっていた。
「お、今度は座標通りだな。」
「と~ぜんっ!!ボクは同じ失敗はしないの~。」
えっへんと大きく胸を張りながらアベルは言った。
「さて……ここは魔物に襲われてる感じはしないな。建物は無事だし、辺りに血も飛び散ってないし。」
辺りを見渡して、魔物の襲撃の痕跡がないことを確認して安堵していた次の瞬間だった。
「うわあぁぁぁぁっ!!」
「っ!!」
静かな街に子供の悲鳴が木霊する。
「あっち!!」
ノアとゼバスは、またしても私達を置いて悲鳴の聞こえた方へと真っ先に向かっていった。
それを追いかけようとした私だったが、不意にアベルに手を掴まれ、止められる。
「……?アベ……ル?」
私が後ろを振り返ると、ヒュン……という風切り音と共に私の足元に矢が突き刺さっていた
「危なかったねミノル。」
「す、すまない……助かった。」
助けてくれたことにお礼を述べていると、私達の周りを取り囲んでいた建物の窓が一斉に開き、そこから緑色の肌をした魔物がこちらに向かって弓矢を構えていた。
「どうやらここも魔物に襲われてたっぽいね。」
やれやれとアベルがため息を吐くと、私達に向かって一斉に矢が射られた。
しかし……その矢が私達に届くことはなく、アベルが切り開いた空間に飲み込まれていった。
すると次の瞬間、辺りの建物から短い断末魔のような悲鳴が幾つも聞こえてきた。
「ボクに飛び道具は効かないよ~……ってもう聞こえてないかな。」
「何をしたんだ?」
「簡単な話、空間魔法を魔物の後ろに繋げただけだよ。」
あぁ……なるほど、つまり自分で放った矢が自分に返ってきたというわけか。
「まだ魔物は居そうか?」
「うん。まだいっぱい居るっぽい?でもさっきみたいに強い魔物の気配はないかな。」
こうして魔物に襲われてるのも、日照りが原因だろうか?人間の食料が減ったということは、この国の魔物の食料も減ったということ……。
さっきのウルフも相当腹を空かせていたみたいだし……。日照りの二次災害と見て間違いなさそうだ。
「ミノル~考えてるところ悪いんだけど、団体さんだよ。」
ちょんちょんとアベルが前方を指差すと、先ほど弓矢を構えていた緑色の魔物が今度はナイフを手に持ってこちらに向かってきていた。
弓矢が効かないことを学習したらしい。
「アベル、恐らく街や村が襲われてるのは日照りが原因だ。つまり……。」
「責任はボク達にあるってことね。りょ~かい、それならやることは一つだよ~。」
アベルが手を横に一閃すると、魔物の頭部が空間の切れ目に飲み込まれて消えていった。
「殲滅……だねっ☆」
魔物を全て倒し終えたアベルはこちらを振り返ってウインクして見せた。
やってることのギャップが凄すぎて思わず苦笑いを浮かべてしまう私だった。
そして村の奥に教会のような建物が見えてくると、その中にノアとゼバスの姿があった。
「ノア~大丈夫?」
「あっ……アベル。それにミノルさん。」
こちらを振り返ってきたノアの前には、青色の肌をした大きな巨人が倒れていた。
「無事で何よりだ。それで……生存者は?」
「多分この下に隠れてると思います。」
ノアが教会に佇んでいた女神像の手首を捻ると、女神像が建てられていた土台の下に階段が現れた。
隠し部屋……というやつだな。
その階段を下っていくと、狭い部屋があり……そこに残っていた人々が集まっていた。
「ゆ、勇者様!!ゼバス様っ!!」
ノアとゼバスの姿を見た彼等は安堵の表情を浮かべた。
「皆、もう大丈夫だ。外の魔物はノア殿が打ち倒した。……よくぞ生き残った。」
そう声をかけるゼバスに、村人の一人があることを問いかけた。
「ぜ、ゼバス様……魔族へと助けを求めた彼等はどうなったのですか?」
「うむ、彼等は今魔族の国にある街に移住し、その地で生活させてもらえることになった。」
ゼバスからそう報告を聞くと、村人達はお互いに顔を見合わせて懇願するように言った。
「わ、私達も……連れていっていただくことはできないでしょうか?」
「無論そのつもりで戻ってきた。では……アベル殿、お願いできるだろうか?」
「はいは~いっと。」
アベルは空間を大きく切り裂く。
「この中に入れば人間達が暮らしてる街に着くから。あっちに着いたらシグルドって魔族の指示に従ってね?」
「わかりました……。」
そして村人達は空間の切れ目へと入っていく。最後の村人が中に入ると、空間の切れ目はゆっくりと口を閉じた。
「これで一つ目の村はおしまいだね。」
「まだたくさん残ってるよ。他の村や街も魔物に襲われてるかもしれないから早く次に行かないと……。」
ノアの言うとおりだ。他の村や街も魔物に襲われてる可能性は十分にある。犠牲を出さないためにも早く次に行かないとな。
「わかってるって~それじゃ次は……ここっ!!」
再びアベルが空間を切り裂く。中に入ると……今度はちゃんと街の中に繋がっていた。
「お、今度は座標通りだな。」
「と~ぜんっ!!ボクは同じ失敗はしないの~。」
えっへんと大きく胸を張りながらアベルは言った。
「さて……ここは魔物に襲われてる感じはしないな。建物は無事だし、辺りに血も飛び散ってないし。」
辺りを見渡して、魔物の襲撃の痕跡がないことを確認して安堵していた次の瞬間だった。
「うわあぁぁぁぁっ!!」
「っ!!」
静かな街に子供の悲鳴が木霊する。
「あっち!!」
ノアとゼバスは、またしても私達を置いて悲鳴の聞こえた方へと真っ先に向かっていった。
それを追いかけようとした私だったが、不意にアベルに手を掴まれ、止められる。
「……?アベ……ル?」
私が後ろを振り返ると、ヒュン……という風切り音と共に私の足元に矢が突き刺さっていた
「危なかったねミノル。」
「す、すまない……助かった。」
助けてくれたことにお礼を述べていると、私達の周りを取り囲んでいた建物の窓が一斉に開き、そこから緑色の肌をした魔物がこちらに向かって弓矢を構えていた。
「どうやらここも魔物に襲われてたっぽいね。」
やれやれとアベルがため息を吐くと、私達に向かって一斉に矢が射られた。
しかし……その矢が私達に届くことはなく、アベルが切り開いた空間に飲み込まれていった。
すると次の瞬間、辺りの建物から短い断末魔のような悲鳴が幾つも聞こえてきた。
「ボクに飛び道具は効かないよ~……ってもう聞こえてないかな。」
「何をしたんだ?」
「簡単な話、空間魔法を魔物の後ろに繋げただけだよ。」
あぁ……なるほど、つまり自分で放った矢が自分に返ってきたというわけか。
「まだ魔物は居そうか?」
「うん。まだいっぱい居るっぽい?でもさっきみたいに強い魔物の気配はないかな。」
こうして魔物に襲われてるのも、日照りが原因だろうか?人間の食料が減ったということは、この国の魔物の食料も減ったということ……。
さっきのウルフも相当腹を空かせていたみたいだし……。日照りの二次災害と見て間違いなさそうだ。
「ミノル~考えてるところ悪いんだけど、団体さんだよ。」
ちょんちょんとアベルが前方を指差すと、先ほど弓矢を構えていた緑色の魔物が今度はナイフを手に持ってこちらに向かってきていた。
弓矢が効かないことを学習したらしい。
「アベル、恐らく街や村が襲われてるのは日照りが原因だ。つまり……。」
「責任はボク達にあるってことね。りょ~かい、それならやることは一つだよ~。」
アベルが手を横に一閃すると、魔物の頭部が空間の切れ目に飲み込まれて消えていった。
「殲滅……だねっ☆」
魔物を全て倒し終えたアベルはこちらを振り返ってウインクして見せた。
やってることのギャップが凄すぎて思わず苦笑いを浮かべてしまう私だった。
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