180 / 200
第三章 魔族と人間と
第179話
しおりを挟む
そしてこの街でやることを全てやり終えたアベルは、ぐだ~っと仮設のベッドの上に寝転んだ。
「あ~~~……つっかれたぁ~。」
大量調理もしたし、今日はかなり疲労がたまったのだろう。
「お疲れさん。まぁ、今日のところは一先ずゆっくりと休むと良い。」
「うん、そうするよ~。」
ぼふっ……っと枕に顔を埋めながらアベルはこちらにヒラヒラと手を振ってきた。
それじゃ、私はこれで失礼するか……。
そう思って仮設のテントのようなものを後にしようとしたときだった。
「あ、ちょっと待ってミノル!!」
不意にアベルに私は呼び止められた。
「ん?なんだ?」
「いや~、ちょっと聞きたいことがあってさ……。」
「……?聞きたいこと?」
「うん。」
アベルは頷くと、ベッドから起き上がり、アヒル座りをしながら私の方をじっと見つめてきた。
「……あの、さ?ノノちゃんがさっき……将来お師様のお嫁さんになるんです!!って言ってたんだけど……あれホント?」
「本人はそのつもりらしいな。」
「本人は……ってミノルはなんてノノちゃんに返したの?」
「ん?普通に……大人になったらな~って。」
「……!!」
あの時ノノに答えた事をアベルに伝えると、彼女はベッドから身を乗り出して目の前まで歩いてきた。
そして、じっと私の目を覗き込んでくると彼女は口を開いた。
「お、大人になったらホントにノノちゃんと結婚するの?」
「え?あ……まぁ、仮にもし……ノノが大人になってもそういう気持ちを抱いていたら、そのときはしっかりとその気持ちに答えるつもりだ。」
「ってことは、まだ確定じゃないんだね!?」
ずいっと一気にアベルは私に詰め寄ってくる。あと数センチ距離を間違えたら肌が触れてしまうような距離だ。
「あ、あぁ……。」
アベルの態度にたじたじとしながらも私は頷く。すると、アベルはにんまりと笑みを浮かべた。
「ふ~ん?……あはっ♪じゃあいいや~。それじゃ……また明日ね?ミノル?」
「あぁ……また明日。」
笑みを浮かべるアベルに見送られ、私はアベルの仮設テントを後にした。
そして自分のテントに入ってベッドに横になろうとしたときだった。
「ん?」
簡素なテントの中にある一つのベッド……普通なら平らなはずなのだが、遠目で見てわかるぐらい山になっている。
不思議に思いながらベッドに近付くと、不意にベッドの中から伸びてきた手にぐいっと引き寄せられる。
そして、ベッドの中にいた何かの正体がわかった。
「ノノ!?」
「えへへ……お師様、ベッド温めておきました。」
私のベッドの中に潜り込んでいたのはノノだった。本人いわく、ベッドを温めていた……とのことだが。
「の、ノノはカミル達と同じベッドじゃなかったか?」
「ノノはお師様と一緒が良いので抜け出してきました!!」
満面の笑みでそう答えるノノ。そんなノノに私は言った。
「いいかノノ?急にノノがいるはずなのにいなくなったらカミル達もビックリするだろ?だから、せめてだな……。」
「あ、カミル様達にはちゃんと言ってから来ました!!だから大丈夫です!!」
抜かりなし……か。突っ込みどころが失くなってしまった。
「あと……今日お風呂に入ってないから、ちょっと汗をかいてるかも……。」
「大丈夫です!!」
少し興奮ぎみにノノはピンと尻尾を立てながら言った。何があっても引くつもりは無いらしい。
「はぁ……わかった。」
眠たさと疲れも相まって折れた私は、ベッドに潜り込んだ。すると、背中にぎゅっとノノがしがみついてくる。
とても暖かいのは良いことなのだが……。
「えへへへ……お師様ぁ~♥️……すぅ~っ…………はぁ~~~っ。」
私の首筋付近でノノが必死になって私の匂いを嗅いでくる。これはどうしたものか……。
やはり昨日から少しノノの様子がおかしい。なにか、鎖から解き放たれたような感じで過剰なスキンシップをとってくる。
どうしたものか……と頭を悩ませていると、私は以前カミルの書庫で読んだ獣人族の生態の本のある項目を思い出した。
それはどの獣人にも定期的にやってくる発情期というもの。本で読んだときは、意中の雄や雌に過度な密着や誘惑をするのが特徴だと書いてあったが……。
今のノノにはそれが当てはまる。
だが、発情期はちゃんと成熟した獣人のみに訪れるものだとも書いてあったはずだが……。
じゃあ今のノノのこれは違うのか?
いずれにせよ、ほとぼりが収まるまでゆっくり待つとしようか。
首筋にノノの吐息を感じながら私は目を閉じたのだった。
「あ~~~……つっかれたぁ~。」
大量調理もしたし、今日はかなり疲労がたまったのだろう。
「お疲れさん。まぁ、今日のところは一先ずゆっくりと休むと良い。」
「うん、そうするよ~。」
ぼふっ……っと枕に顔を埋めながらアベルはこちらにヒラヒラと手を振ってきた。
それじゃ、私はこれで失礼するか……。
そう思って仮設のテントのようなものを後にしようとしたときだった。
「あ、ちょっと待ってミノル!!」
不意にアベルに私は呼び止められた。
「ん?なんだ?」
「いや~、ちょっと聞きたいことがあってさ……。」
「……?聞きたいこと?」
「うん。」
アベルは頷くと、ベッドから起き上がり、アヒル座りをしながら私の方をじっと見つめてきた。
「……あの、さ?ノノちゃんがさっき……将来お師様のお嫁さんになるんです!!って言ってたんだけど……あれホント?」
「本人はそのつもりらしいな。」
「本人は……ってミノルはなんてノノちゃんに返したの?」
「ん?普通に……大人になったらな~って。」
「……!!」
あの時ノノに答えた事をアベルに伝えると、彼女はベッドから身を乗り出して目の前まで歩いてきた。
そして、じっと私の目を覗き込んでくると彼女は口を開いた。
「お、大人になったらホントにノノちゃんと結婚するの?」
「え?あ……まぁ、仮にもし……ノノが大人になってもそういう気持ちを抱いていたら、そのときはしっかりとその気持ちに答えるつもりだ。」
「ってことは、まだ確定じゃないんだね!?」
ずいっと一気にアベルは私に詰め寄ってくる。あと数センチ距離を間違えたら肌が触れてしまうような距離だ。
「あ、あぁ……。」
アベルの態度にたじたじとしながらも私は頷く。すると、アベルはにんまりと笑みを浮かべた。
「ふ~ん?……あはっ♪じゃあいいや~。それじゃ……また明日ね?ミノル?」
「あぁ……また明日。」
笑みを浮かべるアベルに見送られ、私はアベルの仮設テントを後にした。
そして自分のテントに入ってベッドに横になろうとしたときだった。
「ん?」
簡素なテントの中にある一つのベッド……普通なら平らなはずなのだが、遠目で見てわかるぐらい山になっている。
不思議に思いながらベッドに近付くと、不意にベッドの中から伸びてきた手にぐいっと引き寄せられる。
そして、ベッドの中にいた何かの正体がわかった。
「ノノ!?」
「えへへ……お師様、ベッド温めておきました。」
私のベッドの中に潜り込んでいたのはノノだった。本人いわく、ベッドを温めていた……とのことだが。
「の、ノノはカミル達と同じベッドじゃなかったか?」
「ノノはお師様と一緒が良いので抜け出してきました!!」
満面の笑みでそう答えるノノ。そんなノノに私は言った。
「いいかノノ?急にノノがいるはずなのにいなくなったらカミル達もビックリするだろ?だから、せめてだな……。」
「あ、カミル様達にはちゃんと言ってから来ました!!だから大丈夫です!!」
抜かりなし……か。突っ込みどころが失くなってしまった。
「あと……今日お風呂に入ってないから、ちょっと汗をかいてるかも……。」
「大丈夫です!!」
少し興奮ぎみにノノはピンと尻尾を立てながら言った。何があっても引くつもりは無いらしい。
「はぁ……わかった。」
眠たさと疲れも相まって折れた私は、ベッドに潜り込んだ。すると、背中にぎゅっとノノがしがみついてくる。
とても暖かいのは良いことなのだが……。
「えへへへ……お師様ぁ~♥️……すぅ~っ…………はぁ~~~っ。」
私の首筋付近でノノが必死になって私の匂いを嗅いでくる。これはどうしたものか……。
やはり昨日から少しノノの様子がおかしい。なにか、鎖から解き放たれたような感じで過剰なスキンシップをとってくる。
どうしたものか……と頭を悩ませていると、私は以前カミルの書庫で読んだ獣人族の生態の本のある項目を思い出した。
それはどの獣人にも定期的にやってくる発情期というもの。本で読んだときは、意中の雄や雌に過度な密着や誘惑をするのが特徴だと書いてあったが……。
今のノノにはそれが当てはまる。
だが、発情期はちゃんと成熟した獣人のみに訪れるものだとも書いてあったはずだが……。
じゃあ今のノノのこれは違うのか?
いずれにせよ、ほとぼりが収まるまでゆっくり待つとしようか。
首筋にノノの吐息を感じながら私は目を閉じたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
206
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる