EXジョブに就いたのはいいんですが‥~授かったジョブは耳かき師!?魔王も勇者もみんなまとめて癒します~

しゃむしぇる

文字の大きさ
1 / 3

第1話

しおりを挟む
よく晴れた今日この日‥私ことアリシア・モドレットは18歳の誕生日を迎えていた。
私が住んでいるこの国では18歳の日に聖職の儀が執り行われ神から自身に適したジョブ‥つまるところの職業が与えられる。

「アリシア‥今日の聖職の儀は期待している。失望させるなよ?」

そう私に声をかけてきたのは現モドレット家当主クライム・モドレット。
私の父親だ。

「はいお父様。」

父は私にそれだけ言うと自身の書斎に戻っていった。昔からこうだ、口数が少なく私自身には興味がない。興味があるのは自分の家の名声だけ‥
恐らくだけど聖職の儀で最上位ジョブかエクストラジョブを引き当てないと家から私は絶縁されてしまうだろう。まぁそんなにこの家に思い入れもないし、絶縁されても別に構わないからいっそのこと遊び人とかになればいいのに。

遊び人は与えられるジョブの中でも最下級‥
最上位ジョブには賢者や剣聖など誰でも一度は聞いたことがあるであろう最強のジョブが名を連ねている。
エクストラジョブはとても貴重なジョブで、最上位ジョブよりなるのが難しいといわれている。与えられるジョブは様々あるらしくそのどれもが個性的かつ特殊なものらしい。特に興味はないけれどね。
若干鬱気味な気分で屋敷の廊下を歩いていると一人のメイドがこちらへと歩いてきた。

「おはようございますお嬢様‥ご朝食の準備が整いましたのでこちらへどうぞ」

「おはようニーナ。今日の朝食は何かしら?」

彼女はニーナこの屋敷のメイド長だ。私が幼いころからこの屋敷で働いている。

「本日のご朝食のメニューは白パンに厚切りのベーコン、目玉焼きにコンソメジュリエンヌとなっております。」

「またそれなの?あの料理長私に嫌がらせしてるのかしら?」

私は朝から肉は食べたくないってあれほど言ったのに‥

「いえ‥恐らくはお兄様のご要望かと思います。」

「アッシュお兄様ね‥」

私のひとつ上にアッシュという長男がいる。去年聖職の儀を終えて最上位職ホーリーナイトのジョブを授かり次期王国騎士団長の座は確定とまで言われている人物だ。
はたから見れば羨望の的になるような人物だが内面は最悪‥‥
女癖が悪く、すでに屋敷のメイドを何人も孕ませているにもかかわらず未だにやり足りないらしい。ついこの前なんてどうやってかわからないが厳重にカギをかけていたはずの私の寝室にも忍び込んできた。
実の妹すらも犯そうとするなんてもはや兄とは思えない所業だ。

「はぁ‥あの時か弱い私にボコボコにされたのをまだ妬んでいるのかしら。」

「お嬢様‥失礼ですが世間一般的にホーリーナイトのお兄様を素手であそこまで痛めつけれるお方をか・弱・い・とは言いません。」

「こうは考えられないかしら?私が強かったんじゃなくてお兄様が弱かったのよ」

「仮にも現王国騎士団長と闘技大会で引き分けたお方でございますよ?」

「う‥そ、そうだったわね」

今年の闘技大会でアッシュお兄様は決勝戦で現王国騎士団長と引き分けている人物だ。まず弱いなんてことはなかった‥

「そんなお兄様を素手とはいえあそこまで痛め付けたお嬢様がいったいどんなジョブを授かるのかニーナめはとても楽しみにしております。」

「はぁ‥そんなに期待しないでよ。私は最下級職の遊び人でいいわ」

そんなに期待されても困る。私は別に最上位職に興味はないしね。それに期待されるのはもう疲れたのよ。

「いけませんお嬢様。もし遊び人なんぞになってしまえば‥」

「わかってるわ。私はむしろそれを望んでるのよ。ニーナや良くしてくれたメイドの皆と別れるのは辛いけれど、正直言って私はこの家が嫌いなの。」

ニーナも私の父のことはよく知っている。あの人の性格であればもし私が遊び人なんかになってしまったら家名を剥奪され、あっさり家を追い出されてしまうのもニーナは分かって言っているのだ。

ちなみにこれには前例がある。実は私とアッシュお兄様の上にさらに長女のミシェルというお姉様がいた。私よりも強くそれに優しい人だったんだけれど、18歳の聖職の儀の時‥お姉様に言い渡されたジョブはただの剣士。
もちろんお姉様の実力は十分で最上級職を与えられてもおかしくなかった。しかし天から告げられたのは剣聖でもドラゴンナイトでもない単なる一般の剣士‥

それでもお姉様はめげてはいなかった。ただの剣士で剣聖すらも凌駕して見せると息巻いていたほどだった。しかしその結果を聞いた父はすぐにお姉様から家名を剥奪‥ほんの少しの生活費だけ持たせて家から追い出した。

あの時のことは今でも忘れられない‥泣いていた私を優しく抱きしめて慰めてくれた。本当はお姉様が一番悲しかったはずなのに私の前では涙を見せなかった。それどころか家を出る最後まで笑っていた。その時のお姉様の笑顔は今でも私の脳裏に焼き付いている。

「お嬢様‥大丈夫でございますか?」

「ん‥えぇ大丈夫。ちょっとあの時のことを思い出しちゃっただけ」

「ミシェルお嬢様のことでございますね?」

「ダメよニーナ、もしその名前がお父様に聞かれたら怒られちゃうわよ?」

父はあの時の出来事を家の恥だと未だに思っているらしくミシェルお姉様の名前をうかつに口にすると激昂してしまうのだ。どこまで幼稚なのか‥本当に馬鹿馬鹿しい

「そうでございました。私としたことが‥」

「別に聞かれてなきゃいいのよ。さっ‥立ち話が長くなっちゃったけどご飯できてるんでしょ?」

「はい、後は食べるだけになっております。」

「冷めちゃったかしらね‥まぁいいわ。案内してくれるかしら?」

「かしこまりました。」

私はニーナの後に続いて朝食が用意されている部屋へと向かった。

「お嬢様‥こちらでございます。」

「ありがとうニーナ。それじゃあ食べてくるわ。」

そしてニーナが扉を開けると朝から見たくもない顔が目に入った。

「よう‥アリシアァ~」

「あら?アッシュお兄様ではないですか?どうしたのですかそのお顔‥ただでさえ醜い顔がさらに醜くなりましたね?」

「なんだとてめぇ!!調子に乗りやがって!!」

私に挑発されたアッシュは面白いほど挑発に乗ってきた。そしてホーリーナイトのジョブを授かったときに天より享け賜わった聖剣を抜いてこちらに突きつけてきた。

「いいのですね?」

「アァ!?何がだよ!!」

「この前はお兄様は素手でしたので私も素手で戦いましたが、剣を抜いたということはつまりそういうこと‥ですよね?」

少し殺気を出して問いかける。未だに何のことかわかっていないようね‥どこまで間抜けなのかしら?

「まだわかりませんか?お兄様は私を殺すつもりで今剣を抜いているのですよね?なら、私に殺されても文句は言えません‥よね?」

「ッ!!上等だ!!」

アッシュは朝食が並べられていたテーブルを蹴飛ばし、私に斬りかかってくる。粗暴な態度に似合わない洗練された剣擊が私に向かって飛んで来る。

これもジョブの効果だ。たとえば剣を持ったことがない素人が剣聖のジョブを授かったとする。するとジョブの方が剣聖に見合った能力をその人に与えるのだ。

剣擊を良く見て避けながらどう制圧するのか考える‥
武器は部屋に置いてきてしまったし、殺すと言った手前どうしようかしら。実際に殺してしまっては問題になってしまうし‥う~ん

「そうだ、こうしましょ。」

迫ってきた聖剣を魔力を纏わせた手刀で弾き私は行動に移る。剣を弾かれて体勢が崩れている所に一気に踏み込んだ。

「ッ!!このッ!!」

そしてアッシュの下腹部に手を当てて魔力を流し込んだ。



「さようなら、アッシュお兄様?」

腹に手を当てられ、慌てて飛び退いたアッシュは自分の体に何の以上もないことに気が付いた。

「ハッタリかましやがって!!このクソアマァ!!」

「あら‥ハッタリではございませんよ?私は確かにお兄様を殺しました。」

「何言ってやがる!!俺はまだ生きてるじゃねぇか!!」

「そうですね‥体は」

そう言い残し私はアッシュにクルリと背を向けて部屋を後にしようとする。しかし当然それは許されない。

「オイ!!どこ行きやがる!!」

「朝食が食べられなくなったので自分で作りにいきます。それではお兄様さようなら♪」

バタン!!とドアを閉めて控えていたニーナを抱えて廊下を走る。

「キャッ!?お、お嬢様!?」

「ごめんねニーナちょっと恥ずかしいかもしれないけど」

そして次の瞬間‥‥さっきまでニーナがいたすぐ後ろの扉が切り刻まれてバラバラになった。

「アリシアァァァァ!!」

アッシュは大きく叫んだがもう既に視界の中にアリシアはいなかった。

「ッチ!!逃げ足の速ぇ女だ‥」

舌打ちをしながらポツリと愚痴をこぼす。

「アァ~暴れたらムラムラしてきやがった。」

頭の後ろをボリボリかきむしりながらアッシュはぼやく。そして以前味見したメイドを一人捕まえ自室へと入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...