来世か、来々世で逢いましょう。

らりささ

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1.ヒサナ・イラーナの恋

1.魔法学校

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 今日から、私はラスカニア国立魔法学校の生徒である。訳あって田舎で暮らしていたので、学校のある首都ラスカに帰ってきたのが先月だった。街にもなれていないのに、学校でやっていけるのか不安である。

「ヒサナ~準備できたか~?」
お父様が呼んでいる。

 制服、ばっちり。リボン、歪んでない。髪の毛、はねてない。
「よし!」
自分自身に気合を入れる。

「先ほど丁寧にお支度させていただきましたので、大丈夫ですよ」
侍女のラムが言った。
 先月まで私には侍女なんて付いていなかったので、まだ慣れない。なんでも自分でやってしまう癖がついている。

「ヒサナ~!」
お父様の呼ぶ声が大きくなった。
「はい!今いきます!」
トトっと駆けって階段を降りる。
「ヒサナ様、走らないでくださいませ。イラーナ家のお嬢様ともあろう方が…」
侍女頭のナナに注意を受けてしまった。

「お父様、お待たせしました」
お父様は暫く私を見たが、その目は私を通り越して少し遠くを見ているようであった。
「本当に似てきたな…」
お父様は目を細めた。

 これは私の母のことだ。母は獣人のお父様の『番』であったが、私が小さい頃に病気で亡くなった。母のことはぼんやりとしか覚えていない。しかし、とても優しかったという記憶だけはある。

「ヒサナちゃん。おはようございます」
「お義姉さま!おはようございます。めちゃ緊張なんですけど、大丈夫ですかね~??」
下の兄、アラン兄様の妻のマリーナ様のことを私は大好きなのだ。
 お兄様が結婚してからは、なんでもお義姉さまに相談しているくらいだ。

「ちょっ!俺の妻だからな!」
アラン兄様はお義姉さまのことになると、人が変わったように嫉妬深くなる。
「学校の前まで付き添うだけでしょ。あなたは早く仕事仕事!」
お義姉さまは兄様のあしらい方もうまい。

 お義姉さまと馬車に乗って、魔法学校に向かった。

この魔法学校は、貴族や平民といった身分に関係なく試験さえ通れば入学できる。
 その中でも高位貴族の人々は皆、馬車で通学しているらしい。私はまだそういうことに慣れなくて、なんだか恥ずかしいので、学校のすぐ側で馬車から降ろしてもらうことにした。

「本当に大丈夫?学校の中まで一緒にいきましょうか?」
マリーナお義姉さまが心配そうに言った。本当についてきてしまいそうな予感がする。
「だ、大丈夫ですよ!一人でいけます。そのくらいできますよ」
言ってはみたが、おそらく説得力はないのだろう。半ば無理やりお義姉さまをふりきって馬車を降りた。
「ヒサナちゃん、一人で馬車を降りるなんて…」
お義姉さまの声が遠くに聞こえた。

 振り向かない。

 大丈夫。やっていける。

後ろ髪を引かれながら走った。

ドンっ!

 下を向いて走っていたためか、門をくぐってすぐに誰かとぶつかった。
 「ごめんなさい!」
私は咄嗟に謝った。

「こちらこそ、申し訳ありません!」
顔を上げて見ると、そこには長身の男の子がいた。青みがかった黒い髪に切れ長の目をしていた。

 いえこちらこそ、とお互いに頭をさげていたら、

「おい!何やってんだよ!」
鋭い声があがった。

 その声の強さに私は、びくっとして固まってしまった。

 こ、こわい…

 ひどく恐ろしくなってしまった。

「お前もお前だよ」
私にそう言いながら、長身の男の子の後ろから出てきたのは、赤みがかった茶色の髪に力強い瞳、赤い目をした男の子だった。

 お前って!私?

 初対面の女子にむかって、この人“お前”って…言った!?

 彼の第一印象は最悪のものであった。
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