来世か、来々世で逢いましょう。

らりささ

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1.ヒサナ・イラーナの恋

4.初恋

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「お前、なにやってんだよ」
リュシーン王子は怒っているようだった。

「何もしてないですけど?ルージンと話してただけですけど?」
私は訳がわからなかった。
 リュシーン王子のお付きの人といっても、私のクラスメイトに変わりはない。なぜそこまで言われなければならないのだろう。

「なんで、ルージンに話しかけてんだよ」
さらに語気が強くなった。
「リュシーン殿下、私が悪いのです。ヒサナ様をお責めにならないでください」
ルージンが執り成すように言った。

 それを聞いたリュシーン王子はさらに声を荒らげた
「ルージン、そなたには聞いていない!!」
急な王子様用語に、この方が隣国の王子様であるという現実が心に突き刺さる。

「ちょっと!いくら王子様だっていったって、そんな言い方はないんじゃない!??」
そうであったとしても、あまりにも理不尽すぎる。
「ヒサナ様、私は大丈夫ですので!」
「ルージンは黙ってて!私は納得できない!」

 なんなの?さっきはあんなに楽しく話していたのに…
 私の何がそんなに気に入らないの!?

 どんどん悲しくなってくる。

「そっか、お前はルージンみたいなのが好みなんだな!だがな、お前はルージンの『番』じゃないぞ!」
リュシーン王子にそう言い放たれた。

「はぁ?」

 なんでそうなるの?

 ルージンなんて、まともに話したのはさっきが初めてなのに。
 さらに『番』じゃないとか、なんでそこまで話が飛躍するの?

 悲しさは怒りに変わった。

「そうね。すぐ怒鳴るどこかの竜神の王子様より全然かっこいいわね!」
私はそう言い捨てて、その場を逃げるように去った。

 悲しかった。

 死ぬほどくやしかった。

私の好きな人は…

私の好きな人は、リュシーン王子…

リュシーン王子、あなたなのに…
あなたがそれを言うの?


 そっか、これが好きという感情なのか…

 こんなに苦しくて、希望のなさそうな気持ちなら、なくてよかったのに。

 あの日、リュシーン王子の瞳の中の星々を見たときから、私は急激に彼に惹かれていた。
 そのことを自分自身で認めたくなかった。


 しんどすぎるから。こんなの、しんどすぎる。

 それから数日、私はリュシーン王子と話をしなかった。

 いや、できなかったのだ。

 泣いてしまいそうだから。



「文化祭実行委員~!前に出て説明してくださーい」
担任の先生から促されて、私は嫌々、リュシーン王子と黒板の前に出た。

 きっとリュシーン王子は、ふてぶてしい態度で話にならないだろうから、私が説明しないといけないのか…
 そんなふうに思っていたが、いざ前に出てみると、重要なことは全てリュシーン王子がみんなに説明してくれた。

 意外だった。

 そして、さすが王子様。風格が違う。

 カッコい…い…

私は胸が痛くなった。

 好きという気持ちを自覚してから、ずっとこんな感じだった。

「ヒサナ、ちょっといい?」
文化祭の準備が終わってから、リュシーン王子に話しかけられた。

 最近は、必要最低限のやりとりだけで、あとは全て避けてきたから、流石に嫌味の一つでも言われるかな…
 
そう思っていた。

「こないだは、ごめん」
リュシーン王子が頭を下げた。

 初めは聞き間違えかと思った。

 王子が私みたいな小娘に頭を下げるだなんて、本来はあってはならない。


「あんなこと、あんなプライベートなこと、変に勘ぐって…本当にごめん」
リュシーン王子にしては素直だ。

「いや、私もムキになっちゃって、ごめんなさい」
リュシーン王子が素直に謝ってくれたので、私も言いやすかった。ありがたい。
「だけど、ルージンとまともに話したのはあの時がはじめてだったから、そんな好みもなにもないのよ…」
ほんと、それだけは分かってほしかった。

「そっか…」
リュシーン王子は、はにかむように笑った。

 この笑顔…!
 キューーーーん!!

 やばい、激かわいい!

 日頃の態度が悪いだけに、この落差がやばい!

「なんだよ。そんな顔して」
リュシーン王子は、困ったように言った。

 そんな顔?私どんな顔してた?
 よだれとか垂れてた?

 口をこすって確認したが、よだれは垂れてはいなかった。

 ホッとしていたら、リュシーン王子の右手がそっと私の頬を撫でた。

 リュシーン王子は満面の笑顔だった。

 私の心臓の音がマックスで鳴っている。

 好き

 この笑顔、大好き。


 もう、好きだって言っていいかな?
 まだ出会って数ヶ月しか経ってないけど…


 うん???

 好きだって言って、どうするの?
 相手は隣国の第二王子だよ??

急に冷静になった。

 こわい。自分自身がこわい。

 いま、私はなにしようとした!?

 でも、言わない後悔より、言って後悔したほうが良いっていうじゃない?
 これは、恋愛小説の受け売りだった。

勇気をふりしぼった。

「あの、私、実は…」

 言いかけたとき、リュシーン王子に女の子が声をかけた。

「リュシーン殿下!こんなところにいらっしゃったの?今日は一緒に帰るお約束でしたのに…」
長く綺麗で深い黒の髪。端正な面持ち。この女の子はおそらく、竜神族の方。
「あら、この方はどなたでいらっしゃいますの?」
その女の子は、私に気づいて言った。

「ユリカ…」
リュシーン王子がバツの悪そうな顔をした。
「ご紹介くださいませ。リュシーン殿下」
丁寧な言葉遣いだが、有無を言わせない強さであった。
「同じクラスの、ヒサナ・イラーナだ」
私はぺこりとお辞儀をして
「イラーナ家のヒサナと申します」
と言った。声が少し振るえた。

「はじめまして。私はラーン家のユリカと申します。A組におりますが、私はリュシーン殿下の婚約者でございますので、失礼をお許しください」
ユリカ様は、微笑んで言った。

 全てにおいて美しい所作の美しい方。この方が、リュシーン王子の婚約者…

頭を石で殴られたみたいな衝撃だった。

 危ない、言わなくてよかった。

 リュシーン王子に、好きだって言わなくて良かった。

 だって、言わなくったってこんなに惨めなのに、好きだって言ってたら目も当てられなかった。



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