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17話 屋台の甘さと、お姉様の囁き
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「あああ! 二人とも制服似合いすぎ! 写真撮――」
「撮らなくていいわよ!」
雪乃が珍しく少し焦る。
葉月は「ふーん?」とにやつきながら丼を置く。
「雪姉ちゃんっぽいね、その喋り方~」
「ちょっ…!!」
千秋は横でにやけが止まらない。文化祭の喧騒の中、二人だけが時間を止められたように感じる。
まずは屋台のラーメンに挑戦することにした。湯気がふわりと立ち上り、濃厚な豚骨の香りが鼻をくすぐる。
「わぁ……美味しそう」
「ええ、絶対おいしいはず」
千秋が丼を差し出すと、雪乃は小さく微笑んで受け取る。麺をすすると、深い旨味が口いっぱいに広がり、思わず目が合った。
「……千秋、熱いけど大丈夫?」
「大丈夫ですわ……あっ、でも……ふふっ」
千秋の頬が赤く染まる。雪乃も麺を口に運びながら、無意識に指先が千秋の手に触れた。互いの温もりが指先からじんわり伝わり、胸が微かに熱くなる。
周囲は友人たちの笑い声や屋台の呼び声でにぎやかだが、二人にはそれさえ遠く感じられる。麺をすするたび、目が合うたび、距離は自然に縮まっていった。
食後は甘いもので締めることにした。クレープ屋台に並び、千秋は苺クリーム、雪乃はチョコバナナクリームを注文する。
「わぁ、きれい……」
雪乃が手に取ると、千秋も自分の苺クリームをそっと受け取り、笑いながら頬張る。しばらく味わっていたが、千秋がふと思いついた。
「ねぇ……雪乃さん、ちょっと交換してみませんこと?」
「……ええ、いいわ」
二人はクレープをそっと交換する。しかし、ふとした拍子にお互いの鼻先にクリームがついてしまった。
「きゃっ……雪乃さんっ、鼻に!」
「千秋もだよっ」
互いに笑いながら顔を近づけて拭い合ううち、自然と指が絡む。ぎゅっと握るように手が繋がり、千秋の頬は赤く染まった。雪乃の手の温かさが、胸の奥を少しだけ焦がす。
「ふふ……雪乃さんの手、あったかい」
頬が紅く染まり、視線が揺れる。歩くたびに心臓が高鳴る。小さな手のぬくもりが、二人だけの世界を作り出していた。
「……雪乃さん、ずっと繋いでいたいですわ」
千秋は少し前に手を出し、迷わず雪乃の指を絡める。
雪乃は少し間を置き、クールな笑みを浮かべながら応じた。
「……ふふ、そう。いいわよ」
千秋の積極的な手つきに、雪乃は自然と微笑む。指先でそっと千秋の手を握り返し、二人の距離はさらに近づく。歩くたびに小さな心の波紋が静かに広がっていった。
交換した苺とチョコバナナの香りが混ざり、鼻先の甘さがふとした笑いの種になる。文化祭の賑わいも、笑い声も、屋台の呼び声も、二人の世界に溶けていく。手を握ったまま歩くたび、鼓動が互いに伝わり、心が少しずつ重なっていった。
「……雪乃さん、わたくし、ずっとこのままでいたいですわ」
「……ふふ、私も同じ気持ちよ」
そして千秋は、勇気を振り絞り、小さく震える声で尋ねた。
「……雪乃さん、その……“お姉様”と、お呼びしても……よろしいですか?」
雪乃は一瞬目を見開き、千秋の真剣な瞳をじっと見つめる。その視線に、千秋の心臓が跳ね上がる。
「……ふふ、もちろん。いいわよ」
千秋は思わず息を呑み、耳まで真っ赤に染まる。
「……お、お姉様……」
その言葉は、柔らかく甘い鍵のように、二人の心をゆっくりと深く結びつけた。
雪乃は静かに微笑みながら、千秋の手首を包むように指を絡め、そっと手の中に引き寄せる。千秋の小さな手が雪乃の手のひらに溶け込むように温かく重なり、二人の鼓動が互いに響き合った。
「……千秋」
雪乃の声は低く、落ち着いたまま。しかし胸の奥で微かな熱が灯る。千秋は目を伏せながらも、そっと雪乃の手を握り返す。触れる指先ひとつひとつが甘く柔らかく、二人の距離をさらに縮めていく。
雪乃はそっと千秋の顔に手を添え、指先で頬をなぞる。千秋の呼吸が少し乱れ、唇の端が自然に震える。雪乃の指先は優しく、でも確かに二人の間の甘い緊張を引き締めていた。
「……ありがとう、千秋」
「お、お姉様……」
二人は小さく息を合わせ、視線を絡めたまま歩く。手のぬくもり、指の絡まり、微かに香る苺とチョコバナナの甘さ――文化祭のざわめきも、すべて二人だけの世界に溶けていく。
雪乃はさらにそっと千秋を引き寄せ、頭を軽く彼女の肩に近づける。千秋の心臓は高鳴り、胸が熱くなる。二人の指先は離れず、息遣いが少しずつ重なり、静かな幸福感が体中に広がった。
「ずっと……お姉様の隣にいさせてください」
「えぇ……もちろん」
文化祭の雑踏の中で、二人の手は離れず、静かに、穏やかに、心がそっと結ばれていった。
「撮らなくていいわよ!」
雪乃が珍しく少し焦る。
葉月は「ふーん?」とにやつきながら丼を置く。
「雪姉ちゃんっぽいね、その喋り方~」
「ちょっ…!!」
千秋は横でにやけが止まらない。文化祭の喧騒の中、二人だけが時間を止められたように感じる。
まずは屋台のラーメンに挑戦することにした。湯気がふわりと立ち上り、濃厚な豚骨の香りが鼻をくすぐる。
「わぁ……美味しそう」
「ええ、絶対おいしいはず」
千秋が丼を差し出すと、雪乃は小さく微笑んで受け取る。麺をすすると、深い旨味が口いっぱいに広がり、思わず目が合った。
「……千秋、熱いけど大丈夫?」
「大丈夫ですわ……あっ、でも……ふふっ」
千秋の頬が赤く染まる。雪乃も麺を口に運びながら、無意識に指先が千秋の手に触れた。互いの温もりが指先からじんわり伝わり、胸が微かに熱くなる。
周囲は友人たちの笑い声や屋台の呼び声でにぎやかだが、二人にはそれさえ遠く感じられる。麺をすするたび、目が合うたび、距離は自然に縮まっていった。
食後は甘いもので締めることにした。クレープ屋台に並び、千秋は苺クリーム、雪乃はチョコバナナクリームを注文する。
「わぁ、きれい……」
雪乃が手に取ると、千秋も自分の苺クリームをそっと受け取り、笑いながら頬張る。しばらく味わっていたが、千秋がふと思いついた。
「ねぇ……雪乃さん、ちょっと交換してみませんこと?」
「……ええ、いいわ」
二人はクレープをそっと交換する。しかし、ふとした拍子にお互いの鼻先にクリームがついてしまった。
「きゃっ……雪乃さんっ、鼻に!」
「千秋もだよっ」
互いに笑いながら顔を近づけて拭い合ううち、自然と指が絡む。ぎゅっと握るように手が繋がり、千秋の頬は赤く染まった。雪乃の手の温かさが、胸の奥を少しだけ焦がす。
「ふふ……雪乃さんの手、あったかい」
頬が紅く染まり、視線が揺れる。歩くたびに心臓が高鳴る。小さな手のぬくもりが、二人だけの世界を作り出していた。
「……雪乃さん、ずっと繋いでいたいですわ」
千秋は少し前に手を出し、迷わず雪乃の指を絡める。
雪乃は少し間を置き、クールな笑みを浮かべながら応じた。
「……ふふ、そう。いいわよ」
千秋の積極的な手つきに、雪乃は自然と微笑む。指先でそっと千秋の手を握り返し、二人の距離はさらに近づく。歩くたびに小さな心の波紋が静かに広がっていった。
交換した苺とチョコバナナの香りが混ざり、鼻先の甘さがふとした笑いの種になる。文化祭の賑わいも、笑い声も、屋台の呼び声も、二人の世界に溶けていく。手を握ったまま歩くたび、鼓動が互いに伝わり、心が少しずつ重なっていった。
「……雪乃さん、わたくし、ずっとこのままでいたいですわ」
「……ふふ、私も同じ気持ちよ」
そして千秋は、勇気を振り絞り、小さく震える声で尋ねた。
「……雪乃さん、その……“お姉様”と、お呼びしても……よろしいですか?」
雪乃は一瞬目を見開き、千秋の真剣な瞳をじっと見つめる。その視線に、千秋の心臓が跳ね上がる。
「……ふふ、もちろん。いいわよ」
千秋は思わず息を呑み、耳まで真っ赤に染まる。
「……お、お姉様……」
その言葉は、柔らかく甘い鍵のように、二人の心をゆっくりと深く結びつけた。
雪乃は静かに微笑みながら、千秋の手首を包むように指を絡め、そっと手の中に引き寄せる。千秋の小さな手が雪乃の手のひらに溶け込むように温かく重なり、二人の鼓動が互いに響き合った。
「……千秋」
雪乃の声は低く、落ち着いたまま。しかし胸の奥で微かな熱が灯る。千秋は目を伏せながらも、そっと雪乃の手を握り返す。触れる指先ひとつひとつが甘く柔らかく、二人の距離をさらに縮めていく。
雪乃はそっと千秋の顔に手を添え、指先で頬をなぞる。千秋の呼吸が少し乱れ、唇の端が自然に震える。雪乃の指先は優しく、でも確かに二人の間の甘い緊張を引き締めていた。
「……ありがとう、千秋」
「お、お姉様……」
二人は小さく息を合わせ、視線を絡めたまま歩く。手のぬくもり、指の絡まり、微かに香る苺とチョコバナナの甘さ――文化祭のざわめきも、すべて二人だけの世界に溶けていく。
雪乃はさらにそっと千秋を引き寄せ、頭を軽く彼女の肩に近づける。千秋の心臓は高鳴り、胸が熱くなる。二人の指先は離れず、息遣いが少しずつ重なり、静かな幸福感が体中に広がった。
「ずっと……お姉様の隣にいさせてください」
「えぇ……もちろん」
文化祭の雑踏の中で、二人の手は離れず、静かに、穏やかに、心がそっと結ばれていった。
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