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27話 消える恋人の胸で
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御陵家の門灯が暖かく灯り、
夜道から二人を迎え入れるように輝いていた。
「ここまで送ってくれてありがとう、千秋」
「お礼なんて……不要ですわ。
わたくしが一緒に歩きたかっただけですもの」
「そっか」
雪乃は少し照れたように、目を伏せる。
玄関前で、まだ手は繋いだまま。
離れたくない気持ちが、指先に宿っている。
「お姉様!」
千秋は顔を上げる。
「25日のクリスマス……
六地蔵家で家族と、メイド・スタッフ全員で
クリスマス会がございますの」
千秋は深く息を吸った。
勇気のすべてを振り絞って。
「来ていただけませんか?
雪乃さんに……そこで過ごしてほしいのです」
「……私でいいの?」
雪乃は少し驚いた表情で問い返す。
「もちろんですわ。
憂さんの体調次第ではありますけれど……
でも雪乃さん自身に……来てほしいの」
夜風が、二人の長い髪を揺らす。
「行きたい」
雪乃は迷いなく言った。
その瞳に、懐かしさと恋しさが混ざっていた。
「ありがとう、千秋」
「まだ、ありますの。お願いが」
「まだあるの? ふふ、言ってみて」
「余興として……
小さな演奏会をお願いできませんか?
“ブリザード”を……」
雪乃は一瞬、千秋を見つめて
その覚悟を読み取った。
「完成させる気だね?」
「……はい。
必ず、クリスマスまでに
“わたくしの想い”を完成させます」
「その想い、ちゃんと聴くよ。
千秋の音で、わたしを前へ押して」
「任せてくださいまし……!」
思わず熱が声に宿る。
雪乃はその熱を受け止めるように微笑んだ。
「でも……千秋の帰り、心配だな。
もう夜遅いし」
「大丈夫ですわ。
石田さんが迎えに来てくださいますから。
雪乃さんの心配事は、わたくしが全部……取り除きます」
「頼もしいねぇ、千秋は」
雪乃が優しく笑う。
その笑顔をもっと近くで見たくなる。
「お姉様……最後に……
ひとつだけ……」
「なに?」
千秋の瞳が迷いながら、
それでも真っ直ぐに向けられた。
「お願い……聞いてくれますか?」
「聞くよ。千秋のお願いなら」
千秋は一歩踏み出し、顔を赤く染めながら告げた。
「“お姉様”の胸で……
抱きしめていただけませんか……」
「千秋……」
一瞬、時間が止まった。
雪乃はそっと腕を広げる。
千秋は吸い込まれるようにその胸へ飛び込んだ。
憂の身体なのに──
抱きしめられたのは確かに
雪乃という恋そのもの。
「お姉様の鼓動……聞こえますわ……」
千秋は震える声で呟く。
「千秋の鼓動も、ちゃんと伝わってるよ」
「まだ……離れたくありませんわ……」
「うん。
離したくないね……ほんとは」
雪乃は千秋の頭を優しく撫でながら、
その願いすべてを胸に刻む。
(消えたくない……
千秋が、こんなにも呼んでくれるなら……)
「千秋」
雪乃は静かに、しかしはっきりと言った。
「ありがとう。好きになってくれて」
千秋の腕に力が入る。
涙が落ちても誰も気づかないように
雪乃は強く抱きしめ続けた。
──車のライトが近づく。
石田の車だ。
「……お別れの時間ですわね」
「うん」
雪乃は千秋の背中を撫で、
ゆっくりと腕を解いた。
離れた指先が、
触れた温度を忘れないように震える。
「またね、千秋。
必ず、クリスマスで」
「はい……絶対……!」
千秋は真っ赤な目を隠さず、
雪乃を最後まで見つめた。
車のドアが閉まるまで──
雪乃の頬には
「嬉しい」「寂しい」の両方の笑みが
重なり続けていた。
夜道から二人を迎え入れるように輝いていた。
「ここまで送ってくれてありがとう、千秋」
「お礼なんて……不要ですわ。
わたくしが一緒に歩きたかっただけですもの」
「そっか」
雪乃は少し照れたように、目を伏せる。
玄関前で、まだ手は繋いだまま。
離れたくない気持ちが、指先に宿っている。
「お姉様!」
千秋は顔を上げる。
「25日のクリスマス……
六地蔵家で家族と、メイド・スタッフ全員で
クリスマス会がございますの」
千秋は深く息を吸った。
勇気のすべてを振り絞って。
「来ていただけませんか?
雪乃さんに……そこで過ごしてほしいのです」
「……私でいいの?」
雪乃は少し驚いた表情で問い返す。
「もちろんですわ。
憂さんの体調次第ではありますけれど……
でも雪乃さん自身に……来てほしいの」
夜風が、二人の長い髪を揺らす。
「行きたい」
雪乃は迷いなく言った。
その瞳に、懐かしさと恋しさが混ざっていた。
「ありがとう、千秋」
「まだ、ありますの。お願いが」
「まだあるの? ふふ、言ってみて」
「余興として……
小さな演奏会をお願いできませんか?
“ブリザード”を……」
雪乃は一瞬、千秋を見つめて
その覚悟を読み取った。
「完成させる気だね?」
「……はい。
必ず、クリスマスまでに
“わたくしの想い”を完成させます」
「その想い、ちゃんと聴くよ。
千秋の音で、わたしを前へ押して」
「任せてくださいまし……!」
思わず熱が声に宿る。
雪乃はその熱を受け止めるように微笑んだ。
「でも……千秋の帰り、心配だな。
もう夜遅いし」
「大丈夫ですわ。
石田さんが迎えに来てくださいますから。
雪乃さんの心配事は、わたくしが全部……取り除きます」
「頼もしいねぇ、千秋は」
雪乃が優しく笑う。
その笑顔をもっと近くで見たくなる。
「お姉様……最後に……
ひとつだけ……」
「なに?」
千秋の瞳が迷いながら、
それでも真っ直ぐに向けられた。
「お願い……聞いてくれますか?」
「聞くよ。千秋のお願いなら」
千秋は一歩踏み出し、顔を赤く染めながら告げた。
「“お姉様”の胸で……
抱きしめていただけませんか……」
「千秋……」
一瞬、時間が止まった。
雪乃はそっと腕を広げる。
千秋は吸い込まれるようにその胸へ飛び込んだ。
憂の身体なのに──
抱きしめられたのは確かに
雪乃という恋そのもの。
「お姉様の鼓動……聞こえますわ……」
千秋は震える声で呟く。
「千秋の鼓動も、ちゃんと伝わってるよ」
「まだ……離れたくありませんわ……」
「うん。
離したくないね……ほんとは」
雪乃は千秋の頭を優しく撫でながら、
その願いすべてを胸に刻む。
(消えたくない……
千秋が、こんなにも呼んでくれるなら……)
「千秋」
雪乃は静かに、しかしはっきりと言った。
「ありがとう。好きになってくれて」
千秋の腕に力が入る。
涙が落ちても誰も気づかないように
雪乃は強く抱きしめ続けた。
──車のライトが近づく。
石田の車だ。
「……お別れの時間ですわね」
「うん」
雪乃は千秋の背中を撫で、
ゆっくりと腕を解いた。
離れた指先が、
触れた温度を忘れないように震える。
「またね、千秋。
必ず、クリスマスで」
「はい……絶対……!」
千秋は真っ赤な目を隠さず、
雪乃を最後まで見つめた。
車のドアが閉まるまで──
雪乃の頬には
「嬉しい」「寂しい」の両方の笑みが
重なり続けていた。
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