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第2話 内緒の耳打ちとヤンデレ!
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翌日。
エアコンはおろか扇風機すらない新聞部の部室の茹だるような暑さのなか、三人の少女は妙な緊張感の中で顔を突き合わせていた。
「ふ、フヒヒっ…わ、私にインタビューなんて光栄です…は、恥ずかしながらなぜか皆さん私と目すら合わせてくれなくて…」
照れた様子で、チラチラと司馬の方を伺う黒森まどい。砂だらけの床に直接置かれたスクールバックからは、例によって怪しげな羊皮紙やらガラス瓶やらが覗いている。
「いえいえこちらこそ、快くインタビューをokしてくれて助かりました!こんな狭い部室で申し訳ない」
司馬は妙に言い慣れた様子でそう返し、満面の笑みでボイスレコーダーのスイッチをオンにした。鄙寺は後ろで三脚にビデオカメラを設置しながら、黒森を無遠慮に眺めている。
「ヒヒっ、そ、そんな…こ、こふでさん、優しいんですね…」
少し赤らんだ顔でこふでを見つめるまどい。鄙寺の顔が一瞬で固まる。
「まあ優しいかもしれません!さあさあ、早速インタビューです!えっと、ではもう一度名前をお願いします」
「はい!えっと、く、黒森まどい、です…ヘヘヘ」
ボサボサ頭をしきりに触りながら、黒森が言う。体を左右に揺らしたりキョロキョロと目線をあちこちに動かしたり、とにかく忙しない。
「黒森さん、黒森さんは、私の認識が正しければ悪魔…なんですよね?もしそうなら、黒森まどいという日本人名は仮のもの…真の名前があるはずです!教えてください!」
メモ帳を持って、黒森に顔を近づけて詰め寄る司馬。その爛々と輝く目にはもはや黒森は映っていない。司馬の脳内はすでに、明日の新聞を何部刷ってどこに掲示しようかと言うことに支配されていた。
「えっ、え!?し、真名ですか!?だっ、ダメですよ…嬉しいですが、私たちまだほぼ初対面で…ゴニョゴニョ」
なぜか顔を赤くした黒森が、モゴモゴと口ごもる。あたふたしながらも口角をぐにゃっと上げてニヤニヤしている黒森に、司馬の記者魂がここは押せばいけると判断した。
ずいっと身を乗り出し、まどいの手を取る。鄙寺がメモ用紙を取り落とした。
「どうかお願いします!!まどいさんのことがどうしても知りたい!」
黒森の顔が一層赤くなり、目を見開く。少しの沈黙の後、思い切ったように口を開いた。
「フヒっ、フヒヒ…わ、分かりました…そ、そんなに想ってくださるのなら、私としても都合がいいし…こ、こふでさん、情熱的な方なんですね…ヘヘっ」
黒森が何か妙な勘違いをしているようだと気づいた司馬だが、司馬の胸に宿るジャーナリズムの炎がその違和感を訂正させなかった。黒森がおずおずと口を開く。
「で、でも、大きな声で言うことではないので…こふでさんにだけっ…みっ、耳を貸してください…っ!」
黒森が司馬の耳に顔を寄せ、口元を手で覆う。鄙寺が持っていたシャーペンがバキッと音を立てて折れ、みるみるうちに表情が固まっていく。
「真の名前は…」
「名前は…?」
「…」
黒森がうっとりと目を細め、唇を動かす。その瞬間、蒸し暑かった部室に、足元から冷気が立ち上った。
蛍光灯がプツンという音を立てて切れ、黒森の目がぼうっと黄緑色に発光した。部室全体がガタガタと揺れだし、そこらじゅうからラップ音のような鋭い破裂音が聞こえだす。
「…き、聞こえましたか?フヒヒっ」
そう黒森が言った瞬間、部室に元の蒸し暑さが戻った。司馬も鄙寺も、先ほどの異常な雰囲気にまだ凍りついたままだ。そのまま数秒の沈黙が続き…
「!?」
先に動いたのは鄙寺だった。芝の襟首を掴み、黒森から力任せに引き離す。司馬が椅子ごと後ろに倒れ込んだ。放置されていた段ボール箱や紙の山に倒れ込み、盛大に埃が立つ。
「なっ、何!?なんなんだよ鄙寺ぁ!?」
「…別に」
「勘弁してくれよ…いったいなあもう…てかちょっと鄙寺、耳」
床に倒れ込んだままの司馬に、しゃがみ込んだ鄙寺が顔を近づける。頬同士が触れそうなほど顔を近づけたまま、鄙寺は得意げな表情で黒森を横目で見た。
「な、なあ、なんか電気消えたよな?寒くなったし…揺れたし…」
「…雲で太陽が隠れたんじゃない。揺れたのはトラックでも通ったんでしょ…それに、ここの蛍光灯しょっちゅう点滅してるじゃない」
黒森はただただ照れたような様子で、手をもじもじと動かしている。
「というか、黒森、こふでだけに真の名前?教えるって言ってたし…記事に出来ないなら聞かなくてよかったでしょ。勝手にあんなに密着して耳打ちまで…私のこふでに馴れ馴れしく…」
苛立ちを滲ませた声で呟く鄙寺。
「え、あ、ああ…すまない?」
「別に…ほら、インタビュー続けたら?」
「あ、うん…」
司馬がやっと体をを起こし、椅子に座り直す。
「えっと、失礼しました!では黒森さん、インタビューの続きをさせていただきます」
「はい!フヒっ、よろしくです!」
黒森が満面の笑みで答える。異様な雰囲気に包まれた部室の中、インタビューは進んでいく。
────────────
第2話まで読んでいただきありがとうございます!!
・続きが気になる!
・まどいって本当にただの厨二病!?
・すすきがヤンデレしてて面白い!
と思った方は、ぜひ♡とフォローお願いいたします!
エアコンはおろか扇風機すらない新聞部の部室の茹だるような暑さのなか、三人の少女は妙な緊張感の中で顔を突き合わせていた。
「ふ、フヒヒっ…わ、私にインタビューなんて光栄です…は、恥ずかしながらなぜか皆さん私と目すら合わせてくれなくて…」
照れた様子で、チラチラと司馬の方を伺う黒森まどい。砂だらけの床に直接置かれたスクールバックからは、例によって怪しげな羊皮紙やらガラス瓶やらが覗いている。
「いえいえこちらこそ、快くインタビューをokしてくれて助かりました!こんな狭い部室で申し訳ない」
司馬は妙に言い慣れた様子でそう返し、満面の笑みでボイスレコーダーのスイッチをオンにした。鄙寺は後ろで三脚にビデオカメラを設置しながら、黒森を無遠慮に眺めている。
「ヒヒっ、そ、そんな…こ、こふでさん、優しいんですね…」
少し赤らんだ顔でこふでを見つめるまどい。鄙寺の顔が一瞬で固まる。
「まあ優しいかもしれません!さあさあ、早速インタビューです!えっと、ではもう一度名前をお願いします」
「はい!えっと、く、黒森まどい、です…ヘヘヘ」
ボサボサ頭をしきりに触りながら、黒森が言う。体を左右に揺らしたりキョロキョロと目線をあちこちに動かしたり、とにかく忙しない。
「黒森さん、黒森さんは、私の認識が正しければ悪魔…なんですよね?もしそうなら、黒森まどいという日本人名は仮のもの…真の名前があるはずです!教えてください!」
メモ帳を持って、黒森に顔を近づけて詰め寄る司馬。その爛々と輝く目にはもはや黒森は映っていない。司馬の脳内はすでに、明日の新聞を何部刷ってどこに掲示しようかと言うことに支配されていた。
「えっ、え!?し、真名ですか!?だっ、ダメですよ…嬉しいですが、私たちまだほぼ初対面で…ゴニョゴニョ」
なぜか顔を赤くした黒森が、モゴモゴと口ごもる。あたふたしながらも口角をぐにゃっと上げてニヤニヤしている黒森に、司馬の記者魂がここは押せばいけると判断した。
ずいっと身を乗り出し、まどいの手を取る。鄙寺がメモ用紙を取り落とした。
「どうかお願いします!!まどいさんのことがどうしても知りたい!」
黒森の顔が一層赤くなり、目を見開く。少しの沈黙の後、思い切ったように口を開いた。
「フヒっ、フヒヒ…わ、分かりました…そ、そんなに想ってくださるのなら、私としても都合がいいし…こ、こふでさん、情熱的な方なんですね…ヘヘっ」
黒森が何か妙な勘違いをしているようだと気づいた司馬だが、司馬の胸に宿るジャーナリズムの炎がその違和感を訂正させなかった。黒森がおずおずと口を開く。
「で、でも、大きな声で言うことではないので…こふでさんにだけっ…みっ、耳を貸してください…っ!」
黒森が司馬の耳に顔を寄せ、口元を手で覆う。鄙寺が持っていたシャーペンがバキッと音を立てて折れ、みるみるうちに表情が固まっていく。
「真の名前は…」
「名前は…?」
「…」
黒森がうっとりと目を細め、唇を動かす。その瞬間、蒸し暑かった部室に、足元から冷気が立ち上った。
蛍光灯がプツンという音を立てて切れ、黒森の目がぼうっと黄緑色に発光した。部室全体がガタガタと揺れだし、そこらじゅうからラップ音のような鋭い破裂音が聞こえだす。
「…き、聞こえましたか?フヒヒっ」
そう黒森が言った瞬間、部室に元の蒸し暑さが戻った。司馬も鄙寺も、先ほどの異常な雰囲気にまだ凍りついたままだ。そのまま数秒の沈黙が続き…
「!?」
先に動いたのは鄙寺だった。芝の襟首を掴み、黒森から力任せに引き離す。司馬が椅子ごと後ろに倒れ込んだ。放置されていた段ボール箱や紙の山に倒れ込み、盛大に埃が立つ。
「なっ、何!?なんなんだよ鄙寺ぁ!?」
「…別に」
「勘弁してくれよ…いったいなあもう…てかちょっと鄙寺、耳」
床に倒れ込んだままの司馬に、しゃがみ込んだ鄙寺が顔を近づける。頬同士が触れそうなほど顔を近づけたまま、鄙寺は得意げな表情で黒森を横目で見た。
「な、なあ、なんか電気消えたよな?寒くなったし…揺れたし…」
「…雲で太陽が隠れたんじゃない。揺れたのはトラックでも通ったんでしょ…それに、ここの蛍光灯しょっちゅう点滅してるじゃない」
黒森はただただ照れたような様子で、手をもじもじと動かしている。
「というか、黒森、こふでだけに真の名前?教えるって言ってたし…記事に出来ないなら聞かなくてよかったでしょ。勝手にあんなに密着して耳打ちまで…私のこふでに馴れ馴れしく…」
苛立ちを滲ませた声で呟く鄙寺。
「え、あ、ああ…すまない?」
「別に…ほら、インタビュー続けたら?」
「あ、うん…」
司馬がやっと体をを起こし、椅子に座り直す。
「えっと、失礼しました!では黒森さん、インタビューの続きをさせていただきます」
「はい!フヒっ、よろしくです!」
黒森が満面の笑みで答える。異様な雰囲気に包まれた部室の中、インタビューは進んでいく。
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