2 / 20
第1章
第2話 天空の城が崩落したようです
しおりを挟む
授業中。俺はいつものように睡眠をとる。
じゃあ家ではどうしてるんだ、と思うだろうが、これでも俺はしっかり寝ている。ただ眠いから寝ているんだ。本当にそれだけだ。大して理由はない。
「おい、九十九。起きろ」
授業中、古典の先生の声で目が覚める。
重い瞼を無理やりこじ開けて前を見る。
まっ……眩しい……!
蛍光灯の光が先生のハゲ頭に反射して俺の目に直撃する。目があ、目があああ―――
先生のハゲ頭によりラピ〇タが崩落したようだ。
「九十九、なぜ笑っている」
「いえ、先生の頭部が……いや、何でもないですよ」
やべっ、もろに『頭』って言ってしまった。
こういった人の前では、もはや禁忌ワードと言っても過言ではない。
まあ、先生も先生で自虐ネタとして使ってるから特に問題ないよな……。うん、きっと大丈夫。
「今、頭部って言ったな?」
ハッ……!!この剣呑な雰囲気……。
言わずもがな、先生が言いたいことは分かってしまう。
「俺の頭がどうした―――」
―――と、次に先生が何か話そうとしたところで、授業終了のチャイムが鳴り響く。
「……まあいい。授業終わるぞー」
(ナイスゥ!)
俺は心の中でガッツポーズした。
あの先生が話し出すと長くなるから説教系は嫌だったんだよね。後半くらいになるにつれてだんだん眠くなって、話していることがすべて右から左に流れるのだ。
古典の先生が教室から出ていくと、前の席の男子がこっちに振り向いてきた。
「よお、レン、今日も古典の授業寝てたな」
彼はケラケラと笑う。
「何を言ってるんだ?ヒロ。いつも通りじゃないか、何が変なんだ?」
コイツは井上広樹。中学の時は同じ学校だった。見た目は俺と全く対極にいるような存在だったが、話してみると案外意気投合し、さらに偶然にも受ける高校が一緒だったのだ。そして今に至るまで親友なのだ。
パシコーン!
後ろから誰かに頭をはたかれた。しかも無駄に心地良い音で。
「――ッ!てぇ~、またお前かよ」
「レン!なんでアンタはいつも授業中に寝るの!」
今俺の頭を危険に晒した女子は、中谷綾香だ。
コイツは風紀委員なのだ。それゆえ、よく俺に噛みついてくるので怒られるのはもう慣れてしまった。
「眠いからに決まってるじゃないか」
「授業は聞くもの!」
「欲望に忠実っていいぞぉ」
「そうだそうだ」
隣の席から同意の声が飛ぶ。
「ちょっと、エイジ!」
今、綾香がエイジと呼んだ男子は水野英士だ。とりあえず、英士を一言で表すのなら――勉強魔人だ。俺の幼馴染には及ばないが。
毎回のテストが帰ってくる時、『あー!また2位だぁー!』と落ち込んでいる。もはや恒例行事と化している。
しかし、それは特に落ち込む必要のない成績だと思うのだがそれは。
「俺も欲望に忠実だからな~特に勉強とか」
そして、少しナルシスト気質があるようだ。
「それは例外だぜ」
広樹が言った。
「そこは同調するわ」
綾香が言った。
「そうだな」
続けて俺も言う。
「なんでだ?楽しいじゃないか、勉強」
「そんなこと言うのは少数派だぞ」
真顔で俺は言う。
正直に言うと、俺は勉強が嫌いだ。既に答えが決まってしまっている問題を解くより、自分で答えを見つけ出すほうが好きなのだ。つまるところ俺は―――
「……『普通』にはなりたくないんだよ」
パシコーン!
教室中に心地よい音が再度響く。
「だから痛いって……」
「そういうことは天才だけが言えることなの!ましてやいつも授業中に寝てるアンタが何言ってんのよ!」
「そうそう、俺みたいな天才が―――」
「エイジはややこしくなるから黙ってて」
そんな他愛のない話をしているとすぐに時間が過ぎ去ってしまい、次の授業の予鈴が鳴った。周りの人たちはそそくさと次の授業の準備を始めていた。
「さて、そろそろ俺たちも準備するか」
「レンって何気にやる気はあるけど、結局やる気だけよね」
「まあ、それもレンっぽい感じがするけどな」
広樹が現代文の教科書を出しながら言う。
「それはそうだけど―――ヒロ、次の授業は数学だよ」
「おっほんとじゃん、サンキュ、アヤ」
「おっ、先生来たな」
「ふわぁ……また眠くなってきた」
「寝ないでよ?またはたかれたいの?」
「別にはたかれたくて寝てるんじゃないんだよ……」
その後、授業が始まった途端に俺が寝始めたのは言うまでもない―――
じゃあ家ではどうしてるんだ、と思うだろうが、これでも俺はしっかり寝ている。ただ眠いから寝ているんだ。本当にそれだけだ。大して理由はない。
「おい、九十九。起きろ」
授業中、古典の先生の声で目が覚める。
重い瞼を無理やりこじ開けて前を見る。
まっ……眩しい……!
蛍光灯の光が先生のハゲ頭に反射して俺の目に直撃する。目があ、目があああ―――
先生のハゲ頭によりラピ〇タが崩落したようだ。
「九十九、なぜ笑っている」
「いえ、先生の頭部が……いや、何でもないですよ」
やべっ、もろに『頭』って言ってしまった。
こういった人の前では、もはや禁忌ワードと言っても過言ではない。
まあ、先生も先生で自虐ネタとして使ってるから特に問題ないよな……。うん、きっと大丈夫。
「今、頭部って言ったな?」
ハッ……!!この剣呑な雰囲気……。
言わずもがな、先生が言いたいことは分かってしまう。
「俺の頭がどうした―――」
―――と、次に先生が何か話そうとしたところで、授業終了のチャイムが鳴り響く。
「……まあいい。授業終わるぞー」
(ナイスゥ!)
俺は心の中でガッツポーズした。
あの先生が話し出すと長くなるから説教系は嫌だったんだよね。後半くらいになるにつれてだんだん眠くなって、話していることがすべて右から左に流れるのだ。
古典の先生が教室から出ていくと、前の席の男子がこっちに振り向いてきた。
「よお、レン、今日も古典の授業寝てたな」
彼はケラケラと笑う。
「何を言ってるんだ?ヒロ。いつも通りじゃないか、何が変なんだ?」
コイツは井上広樹。中学の時は同じ学校だった。見た目は俺と全く対極にいるような存在だったが、話してみると案外意気投合し、さらに偶然にも受ける高校が一緒だったのだ。そして今に至るまで親友なのだ。
パシコーン!
後ろから誰かに頭をはたかれた。しかも無駄に心地良い音で。
「――ッ!てぇ~、またお前かよ」
「レン!なんでアンタはいつも授業中に寝るの!」
今俺の頭を危険に晒した女子は、中谷綾香だ。
コイツは風紀委員なのだ。それゆえ、よく俺に噛みついてくるので怒られるのはもう慣れてしまった。
「眠いからに決まってるじゃないか」
「授業は聞くもの!」
「欲望に忠実っていいぞぉ」
「そうだそうだ」
隣の席から同意の声が飛ぶ。
「ちょっと、エイジ!」
今、綾香がエイジと呼んだ男子は水野英士だ。とりあえず、英士を一言で表すのなら――勉強魔人だ。俺の幼馴染には及ばないが。
毎回のテストが帰ってくる時、『あー!また2位だぁー!』と落ち込んでいる。もはや恒例行事と化している。
しかし、それは特に落ち込む必要のない成績だと思うのだがそれは。
「俺も欲望に忠実だからな~特に勉強とか」
そして、少しナルシスト気質があるようだ。
「それは例外だぜ」
広樹が言った。
「そこは同調するわ」
綾香が言った。
「そうだな」
続けて俺も言う。
「なんでだ?楽しいじゃないか、勉強」
「そんなこと言うのは少数派だぞ」
真顔で俺は言う。
正直に言うと、俺は勉強が嫌いだ。既に答えが決まってしまっている問題を解くより、自分で答えを見つけ出すほうが好きなのだ。つまるところ俺は―――
「……『普通』にはなりたくないんだよ」
パシコーン!
教室中に心地よい音が再度響く。
「だから痛いって……」
「そういうことは天才だけが言えることなの!ましてやいつも授業中に寝てるアンタが何言ってんのよ!」
「そうそう、俺みたいな天才が―――」
「エイジはややこしくなるから黙ってて」
そんな他愛のない話をしているとすぐに時間が過ぎ去ってしまい、次の授業の予鈴が鳴った。周りの人たちはそそくさと次の授業の準備を始めていた。
「さて、そろそろ俺たちも準備するか」
「レンって何気にやる気はあるけど、結局やる気だけよね」
「まあ、それもレンっぽい感じがするけどな」
広樹が現代文の教科書を出しながら言う。
「それはそうだけど―――ヒロ、次の授業は数学だよ」
「おっほんとじゃん、サンキュ、アヤ」
「おっ、先生来たな」
「ふわぁ……また眠くなってきた」
「寝ないでよ?またはたかれたいの?」
「別にはたかれたくて寝てるんじゃないんだよ……」
その後、授業が始まった途端に俺が寝始めたのは言うまでもない―――
21
あなたにおすすめの小説
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる