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クールダウン?もうひとっ走り?
彼の輝いた顔を見てみろ
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メイヤーは血を失い過ぎたのか、処置が終わった途端に意識を完全に失った。
内臓を傷つけていないと言っても大きな傷だ。
再生治療機で皮膚を修復しても、安静にしてなければ傷は直ぐに開く。
それなのに彼は俺の手の平の怪我を先にしろと騒いだ大馬鹿者だ。
俺は大げさぐらいの左手の包帯に溜息をつくと、俺に手を握られることを拒否したメイヤーがいる処置室の扉の方へ目線を移した。
「全く。こんな怪我ぐらいでぴいぴい泣くなんてね。」
右手の手の平は再生治療機で五分で傷は塞がったが、俺は暴漢の手を縛る時に左手の指の関節を外してしまっていたらしい。
「俺もかなり頭にきていたんだな。メイヤーが死んでしまうと思ったから。全く、その怪我なのに、あいつは自分が手を握ったからだと言い出して。」
実は、メイヤーが言う通りかもしれない。
彼は病院に運ばれる途中でも意識を一度失っている。
彼は意識を失いながらも、俺を離さないという風に俺の手を握りしめていた。
「あいつは俺が死んだら俺の骨まで齧りそうだな。怖い奴。」
「ジュリアン!」
急に呼ばれたと顔をそちらに向けると、おや、なんと、俺が格好良く仕立ててやったはずのダンが髪の毛を逆立たせて汗まみれで立っていた。
俺達のゲームを思い出せるような、上気させて汗まみれの顔を笑顔に輝かせたダンが俺の前に立っていたのだ。
「おや、おやおやおや?」
本当に、おやおやおや、だ。
あんなにも彼のこの顔が見たいと続けていたゲームであったのに、今の俺は処置室の中にいる馬鹿の顔の方が見たいなんて思っている。
たった半日で、いや、三日か?
犬は三日飼えば絆されるって、あれなのかな?
「ジュリアン!ああ!君は無事だったのか!」
ダンは俺を当たり前のように抱き締めた。
俺が無事で良かったと、俺を抱き締めている。
俺もダンを抱き締め返した。
彼の身体を体中に感じながら、俺は彼に抱かれたいと思いながらも本気での性欲が身の内から湧いて出なかった理由をようやく知ったような気がした。
「心配かけてごめん。バカなメイヤーが過労で点滴中だ。俺はあの子の看病をしてあげたい。だからね、君達はホテルに戻りなさいよ。」
「いいや。ホテルに行くのはお前達だよ。家を今度は火事にされるかもと、俺達は不安でホテルでは楽しめそうもない。な、ティナ?」
俺の身体に柔らかくて小さいものがしがみ付いた。
ティナも涙目で、俺の心配だけで走って来たという風情だ。
「ごめん、ティナ。ホテルで綺麗にしてもらっただろう君が、こんなにもボロボロだ。駄目なお兄ちゃんでごめんね。」
ティナは顔を上げて見せたが、大きな露草色の瞳は涙で溢れている。
彼女はグッと歯を食いしばるとプルプルと頭を横に振り、それから再び俺にその顔を押し付けた。
「ティナ?」
「ジュ、ジュリアン。兄さまが、ああ、兄さまが無事なら何でもいいの!に、兄さまが傍にいてくれるなら、ダンだって諦める!」
「いや。ダンは君にあげたんだからちゃんと可愛がってあげて。俺はメイヤーに捕らわれちゃったからね。あの子は凄いストーカーなんだよ。」
内臓を傷つけていないと言っても大きな傷だ。
再生治療機で皮膚を修復しても、安静にしてなければ傷は直ぐに開く。
それなのに彼は俺の手の平の怪我を先にしろと騒いだ大馬鹿者だ。
俺は大げさぐらいの左手の包帯に溜息をつくと、俺に手を握られることを拒否したメイヤーがいる処置室の扉の方へ目線を移した。
「全く。こんな怪我ぐらいでぴいぴい泣くなんてね。」
右手の手の平は再生治療機で五分で傷は塞がったが、俺は暴漢の手を縛る時に左手の指の関節を外してしまっていたらしい。
「俺もかなり頭にきていたんだな。メイヤーが死んでしまうと思ったから。全く、その怪我なのに、あいつは自分が手を握ったからだと言い出して。」
実は、メイヤーが言う通りかもしれない。
彼は病院に運ばれる途中でも意識を一度失っている。
彼は意識を失いながらも、俺を離さないという風に俺の手を握りしめていた。
「あいつは俺が死んだら俺の骨まで齧りそうだな。怖い奴。」
「ジュリアン!」
急に呼ばれたと顔をそちらに向けると、おや、なんと、俺が格好良く仕立ててやったはずのダンが髪の毛を逆立たせて汗まみれで立っていた。
俺達のゲームを思い出せるような、上気させて汗まみれの顔を笑顔に輝かせたダンが俺の前に立っていたのだ。
「おや、おやおやおや?」
本当に、おやおやおや、だ。
あんなにも彼のこの顔が見たいと続けていたゲームであったのに、今の俺は処置室の中にいる馬鹿の顔の方が見たいなんて思っている。
たった半日で、いや、三日か?
犬は三日飼えば絆されるって、あれなのかな?
「ジュリアン!ああ!君は無事だったのか!」
ダンは俺を当たり前のように抱き締めた。
俺が無事で良かったと、俺を抱き締めている。
俺もダンを抱き締め返した。
彼の身体を体中に感じながら、俺は彼に抱かれたいと思いながらも本気での性欲が身の内から湧いて出なかった理由をようやく知ったような気がした。
「心配かけてごめん。バカなメイヤーが過労で点滴中だ。俺はあの子の看病をしてあげたい。だからね、君達はホテルに戻りなさいよ。」
「いいや。ホテルに行くのはお前達だよ。家を今度は火事にされるかもと、俺達は不安でホテルでは楽しめそうもない。な、ティナ?」
俺の身体に柔らかくて小さいものがしがみ付いた。
ティナも涙目で、俺の心配だけで走って来たという風情だ。
「ごめん、ティナ。ホテルで綺麗にしてもらっただろう君が、こんなにもボロボロだ。駄目なお兄ちゃんでごめんね。」
ティナは顔を上げて見せたが、大きな露草色の瞳は涙で溢れている。
彼女はグッと歯を食いしばるとプルプルと頭を横に振り、それから再び俺にその顔を押し付けた。
「ティナ?」
「ジュ、ジュリアン。兄さまが、ああ、兄さまが無事なら何でもいいの!に、兄さまが傍にいてくれるなら、ダンだって諦める!」
「いや。ダンは君にあげたんだからちゃんと可愛がってあげて。俺はメイヤーに捕らわれちゃったからね。あの子は凄いストーカーなんだよ。」
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