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とりあえずの一日目、監禁された一日目?
マイフェアレディごっこ
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三日分の服を鞄に入れた俺は、再び監禁部屋に連れ込まれると思ったが、九曜は俺と蝶子を自分の車の後部座席に乗せ込むと、そのまま来た方角とは違う道を選んで走り出した。
俺の荷物を俺に持たせずに車のトランクに入れた事で、俺は九曜の考えを読むべきであったのだろう。
彼の車は大きなデパートの専用駐車場に吸い込まれて行った。
「だから、服など要りませんって。」
「俺は妹にワンピを買ってあげたいんだ。妹が惚れている君にも選ぶのを手伝って欲しい。そして、みんなで素敵なフレンチに行きたいからね、君も僕も蝶子のチョイスしたスーツを着る。おっけぃ?」
俺はルームミラー越しに九曜を睨んだ。
俺が断れない提案をするなんて!卑怯者!
ところが、ルームミラーに俺以外の人間も映り込んでいた。
蝶子だ。
彼女は頬を赤らめて、ホワン、という顔をしているじゃないか!
美人だけどとっつきにくいお姉さん、とサークルでは一目置かれている彼女が、可愛いと俺こそ頬を赤らめたい驚き顔をしているのだ。
俺はルームミラーから目を逸らし、そのまま実物の方へと視線を動かした。
蝶子はきゅっと唇を噛み、そして上目遣いで俺を見つめた。
「え、選んで貰って、い、いいかな?」
俺は蝶子にいいよ、と自然に口から了解の言葉が零れていた。
蝶子だったら、俺は恋をしてもいい、かな?
俺はふわっとした気持ちになりながら、なんと蝶子と手を繋ぎながら彼女のお気に入りのブランドに入り、気が付けば彼氏のようにして彼女のワンピを選んでいた。
「どうかな?」
試着室から出て来た蝶子は物凄く綺麗だった。
襟がタイになっていて首元で結ぶタイプで、上半身は体に沿う形だが、下に行くにつれてフレアーが広がるというロングワンピースだ。
勿論袖はタイトな上半身に対するようにふっくらとしている。
色はグリーンベージュというのだろうか。
ベージュな所が肌馴染みが良く、地味なようでもグリーンの色味が彼女の華やかな顔立ちをさらに引き立てている。
「すごく、似合うよ。」
「ありがとう。空くんは色選びが上手よね。」
「そんなことないよ。蝶子さんが選んでいたものを選んだだけだもの。」
「でも、ありがとう。このワンピースはきっとずっとお気に入りなるわ。」
そうだ、蝶子は優しいのだ。
落ち込む俺にいち早く気が付き、俺の腕を取って彼女のお気に入りらしき少しおしゃれな飲み屋に連れて行ってくれたのだ。
……あれ、そこで俺は酔いつぶれたんだよな。
誰が俺を蝶子の部屋に運んでくれたんだ?
俺は平均身長程度に痩せぎすの男でも、男である限り女の蝶子には抱えられない体重だぞ?
ぽんと、肩に置かれた大きな手。
俺は俺を自分のもののようにして肩に腕をまわした男を睨んだ。
「どうしたの?可愛い顔を急に怒り顔にして?」
「いえ。昨夜の俺はどこからあなたに介抱されていたのかなって急に思い立ちましてね。」
九曜はにやっと猫のような笑顔を作ると、すっと俺の耳元に唇を寄せた。
「君が酔いつぶれた最初から。最後までは我慢したよ。」
俺は九曜の足の甲を踏みつけた。
それから蝶子に振り返ると、彼女に手を差し伸べた。
「約束だよね。今度は俺の服選びだ。君の兄さんを破産させたい。」
蝶子は俺の手を握ると、嬉しそうに微笑んで、いいわよ、と言った。
俺の荷物を俺に持たせずに車のトランクに入れた事で、俺は九曜の考えを読むべきであったのだろう。
彼の車は大きなデパートの専用駐車場に吸い込まれて行った。
「だから、服など要りませんって。」
「俺は妹にワンピを買ってあげたいんだ。妹が惚れている君にも選ぶのを手伝って欲しい。そして、みんなで素敵なフレンチに行きたいからね、君も僕も蝶子のチョイスしたスーツを着る。おっけぃ?」
俺はルームミラー越しに九曜を睨んだ。
俺が断れない提案をするなんて!卑怯者!
ところが、ルームミラーに俺以外の人間も映り込んでいた。
蝶子だ。
彼女は頬を赤らめて、ホワン、という顔をしているじゃないか!
美人だけどとっつきにくいお姉さん、とサークルでは一目置かれている彼女が、可愛いと俺こそ頬を赤らめたい驚き顔をしているのだ。
俺はルームミラーから目を逸らし、そのまま実物の方へと視線を動かした。
蝶子はきゅっと唇を噛み、そして上目遣いで俺を見つめた。
「え、選んで貰って、い、いいかな?」
俺は蝶子にいいよ、と自然に口から了解の言葉が零れていた。
蝶子だったら、俺は恋をしてもいい、かな?
俺はふわっとした気持ちになりながら、なんと蝶子と手を繋ぎながら彼女のお気に入りのブランドに入り、気が付けば彼氏のようにして彼女のワンピを選んでいた。
「どうかな?」
試着室から出て来た蝶子は物凄く綺麗だった。
襟がタイになっていて首元で結ぶタイプで、上半身は体に沿う形だが、下に行くにつれてフレアーが広がるというロングワンピースだ。
勿論袖はタイトな上半身に対するようにふっくらとしている。
色はグリーンベージュというのだろうか。
ベージュな所が肌馴染みが良く、地味なようでもグリーンの色味が彼女の華やかな顔立ちをさらに引き立てている。
「すごく、似合うよ。」
「ありがとう。空くんは色選びが上手よね。」
「そんなことないよ。蝶子さんが選んでいたものを選んだだけだもの。」
「でも、ありがとう。このワンピースはきっとずっとお気に入りなるわ。」
そうだ、蝶子は優しいのだ。
落ち込む俺にいち早く気が付き、俺の腕を取って彼女のお気に入りらしき少しおしゃれな飲み屋に連れて行ってくれたのだ。
……あれ、そこで俺は酔いつぶれたんだよな。
誰が俺を蝶子の部屋に運んでくれたんだ?
俺は平均身長程度に痩せぎすの男でも、男である限り女の蝶子には抱えられない体重だぞ?
ぽんと、肩に置かれた大きな手。
俺は俺を自分のもののようにして肩に腕をまわした男を睨んだ。
「どうしたの?可愛い顔を急に怒り顔にして?」
「いえ。昨夜の俺はどこからあなたに介抱されていたのかなって急に思い立ちましてね。」
九曜はにやっと猫のような笑顔を作ると、すっと俺の耳元に唇を寄せた。
「君が酔いつぶれた最初から。最後までは我慢したよ。」
俺は九曜の足の甲を踏みつけた。
それから蝶子に振り返ると、彼女に手を差し伸べた。
「約束だよね。今度は俺の服選びだ。君の兄さんを破産させたい。」
蝶子は俺の手を握ると、嬉しそうに微笑んで、いいわよ、と言った。
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