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とりあえずの一日目、監禁された一日目?
ひとかどの人物
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九曜は手慣れた男だ。
試着室から転がり落ちて周囲の視線を浴びた俺に対し、大事な弟が初めての高級スーツ売り場にテンパってます、と言う風なハートフルな場面に変え、恥ずかしさで真っ赤になるだけの俺を再び試着室に放り込んだ。
その後に彼が俺に何かする事は無く、俺はコーディネイトが上手な「兄」によってスーツを選んで買ってもらっただけである。
「二時間で裾上げが終わるって。俺達はどこかに入ってお茶でもしようか。」
九曜は俺に笑って見せたが、俺は自分への情けなさでいっぱいだ。
九曜は裾直しなど不要な足の長さだからして、俺にパンツの裾直しが必要な事を知るや、ムカつくぐらいに驚いて見せてくれたのである。
あなたと比べれば、俺はどうせ足が短いちび助だよ。
その上、九曜は己がひとかどの人物だと俺に思い知らせたのである。
彼は自分の魅力を最大限に使い、また、金持ちのお得意さんの威光も使い、なんと、通常は一週間はかかる裾上げサービスを二時間で終了させる確約を店に了承させたのだ。
「蝶子さんはいいのですか?」
九曜は人でなしの兄だったようで、蝶子からのラインの画像が分かるようにして俺の目の前にスマートフォンを翳した。
俺は仰向けに不貞腐れて寝ている猫のスタンプが欲しいと思いながら、蝶子の打ち込んだ文字を声を出して読んでいた。
「兄よ、恨むぞ?」
「うん。恨まれちゃうね。今日さ、すぐ下の妹の方の結納だったみたい。蝶子はあのまま結納式予定のホテルに連行されたんだってさ。」
「……あなたは行かなくていいのですか?」
ぐいっと俺の肩に九曜の腕が回され、俺は彼の乱暴な仕草に彼に体の側面を密着させるような感じになった。
「あのっ!」
九曜に抗議しようとして、ウィンドーのガラスに俺達の姿がしっかりと映っている事に気が付いた。
彼は俺に見られた事に気が付いていないのか、彼の顔の表情が俺の見覚えのあるものを想起するもので、俺はとても嫌な気持ちになった。
我が家が貧乏になった原因?いやその予兆を家族に隠していた男の表情に似ているのだ。
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あなたと比べれば、俺はどうせ足が短いちび助だよ。
その上、九曜は己がひとかどの人物だと俺に思い知らせたのである。
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「蝶子さんはいいのですか?」
九曜は人でなしの兄だったようで、蝶子からのラインの画像が分かるようにして俺の目の前にスマートフォンを翳した。
俺は仰向けに不貞腐れて寝ている猫のスタンプが欲しいと思いながら、蝶子の打ち込んだ文字を声を出して読んでいた。
「兄よ、恨むぞ?」
「うん。恨まれちゃうね。今日さ、すぐ下の妹の方の結納だったみたい。蝶子はあのまま結納式予定のホテルに連行されたんだってさ。」
「……あなたは行かなくていいのですか?」
ぐいっと俺の肩に九曜の腕が回され、俺は彼の乱暴な仕草に彼に体の側面を密着させるような感じになった。
「あのっ!」
九曜に抗議しようとして、ウィンドーのガラスに俺達の姿がしっかりと映っている事に気が付いた。
彼は俺に見られた事に気が付いていないのか、彼の顔の表情が俺の見覚えのあるものを想起するもので、俺はとても嫌な気持ちになった。
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