19 / 87
零時に向けて 一日目と二日目のはざま
気さくないい男
しおりを挟む
「やあ、やっぱりここだ!」
俺達のテーブルに通りの良い若々しい男性の声がかかり、九曜はあからさまに嫌そうな顔をして俺は声がした方へと振り向いた。
わぉ!
ひと目で九曜と蝶子の血を引いていると分かる美人が俺の目を引いた。
女性らしい柔らかさのある蝶子の鼻と口元とは違い、鼻筋と口元は九曜に似てそっくりな顔立ちなのに、男性的どころか女性性しか感じない、黒髪のしとやか美人という雰囲気なのは不思議な所だ。
そして、彼女を間にして、左には昼間に選んだワンピースを着た蝶子が、右には俺達に声をかけた人好きのするハンサムな青年がいた。
彫も深く鼻筋は通っていて、大き目の口は下品どころか楽しい話題しか話しそうにないと思わせる。
難を言わせてもらえば、鼻の付け根当りが少々ごつっとしていて、そこが洗練さを彼から奪っていた。
でも、そここそ親しみと気安さを与えるから、彼の職業を考えるにそれは良い小道具なのか?
彼が着ている仕立て良い灰色のスーツの襟元には金色に光るものがあり、ひまわりと天秤モチーフであるそれは、弁護士バッジと呼ばれるものなのだ。
「ごめん、本気で邪魔したかな。俺は安曇陸朗。俺はこちらの天野一族の一族の仲間入りをさせていただく予定の男だよ。隣が婚約者の天野真珠。婚約者の隣が、そこのお兄さんの妹で、え?蝶子ちゃん知っているの?」
蝶子はうんうんと頭を上下させると、給仕が椅子を引く前に俺と九曜の間にある椅子にひょいと座り込んだ。
「で、ええと、こちらの可愛い青年は?ねえ、九曜?」
俺は九曜が口を開く前に自分で名乗ることにした。
恋人なんて言われたらかなわない。
「あ、俺は日向(ひなた)空、です。天野一族とは出来る限り遠い所にいたいと望んでいる小市民です。」
「ハハハ、面白い子だ!ねえ、ご一緒させてよ、一緒に飲みたい!」
長身でスポーツをしていそうな体つきの安曇は実際にとっても気さくそうで、俺を捨てたすももが選んだ店長を彷彿とさせた。
自然食品のイタリアンレストランのオーナの店長は彼の外見だけで客を呼べるほどで、でもとっても気さくで気安い彼は俺が苦学生だと知るや、残り物だよと俺に美味しいものをいつも持たせてくれたのである。
そこは貧乏な俺には天の恵み的なアルバイト先だったのになと、アルバイト先を失った事を再び思い出した。
俺達のテーブルに通りの良い若々しい男性の声がかかり、九曜はあからさまに嫌そうな顔をして俺は声がした方へと振り向いた。
わぉ!
ひと目で九曜と蝶子の血を引いていると分かる美人が俺の目を引いた。
女性らしい柔らかさのある蝶子の鼻と口元とは違い、鼻筋と口元は九曜に似てそっくりな顔立ちなのに、男性的どころか女性性しか感じない、黒髪のしとやか美人という雰囲気なのは不思議な所だ。
そして、彼女を間にして、左には昼間に選んだワンピースを着た蝶子が、右には俺達に声をかけた人好きのするハンサムな青年がいた。
彫も深く鼻筋は通っていて、大き目の口は下品どころか楽しい話題しか話しそうにないと思わせる。
難を言わせてもらえば、鼻の付け根当りが少々ごつっとしていて、そこが洗練さを彼から奪っていた。
でも、そここそ親しみと気安さを与えるから、彼の職業を考えるにそれは良い小道具なのか?
彼が着ている仕立て良い灰色のスーツの襟元には金色に光るものがあり、ひまわりと天秤モチーフであるそれは、弁護士バッジと呼ばれるものなのだ。
「ごめん、本気で邪魔したかな。俺は安曇陸朗。俺はこちらの天野一族の一族の仲間入りをさせていただく予定の男だよ。隣が婚約者の天野真珠。婚約者の隣が、そこのお兄さんの妹で、え?蝶子ちゃん知っているの?」
蝶子はうんうんと頭を上下させると、給仕が椅子を引く前に俺と九曜の間にある椅子にひょいと座り込んだ。
「で、ええと、こちらの可愛い青年は?ねえ、九曜?」
俺は九曜が口を開く前に自分で名乗ることにした。
恋人なんて言われたらかなわない。
「あ、俺は日向(ひなた)空、です。天野一族とは出来る限り遠い所にいたいと望んでいる小市民です。」
「ハハハ、面白い子だ!ねえ、ご一緒させてよ、一緒に飲みたい!」
長身でスポーツをしていそうな体つきの安曇は実際にとっても気さくそうで、俺を捨てたすももが選んだ店長を彷彿とさせた。
自然食品のイタリアンレストランのオーナの店長は彼の外見だけで客を呼べるほどで、でもとっても気さくで気安い彼は俺が苦学生だと知るや、残り物だよと俺に美味しいものをいつも持たせてくれたのである。
そこは貧乏な俺には天の恵み的なアルバイト先だったのになと、アルバイト先を失った事を再び思い出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる