やるかやられるか三日以内に決めてくれ

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零時に向けて 一日目と二日目のはざま

兄妹喧嘩の勃発

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 蝶子が加わったことで、俺は九曜に感じていた緊張が消えた。
 そのお陰の効果か、レストランお薦めのチョコレートスフレに思いっきり魅了される事が出来た。
 また、追加で来たジェラート、フレンチでもジェラートと言うのか分からないが、の盛り合わせに涙が零れそうになりながら舌鼓を打った。

 ああ、モンドソンメルソの店長が、仕事の終わりにお疲れってくれた濃厚なチョコレートジェラートは美味しかった。

「空くん、どうした?」

 蝶子の声にハッとしてみれば、俺は本気で涙を零していたらしい。
 俺は指先で涙を拭った。

「思い出しちゃって。」

「あそこの店長、空くんには優しかったもんね。」

「俺にはって、どこの店長ですか?モンドソンメルソの堀下店長は誰にでもすっごく優しい人でしたよ。」

 蝶子はこれ見よがしにほぅっと溜息をついた。

「何ですか?」

 蝶子はずいっと俺に顔を寄せると、まるで母親のような眼つきで俺を真っ直ぐに見つめて来た。

「な、ななな、なんですか?」

「気づいていなかったんだ?」

「何をですか?」

「あの物凄く美味しいけど店長が頑固親父だって評判のモンド――。」

「蝶子ストップ。」

 九曜が蝶子を遮った。
 そして、俺の目の前で、俺にこの状況を思い出させる台詞を、奴は妹に言い放ってくれたのである。

「俺達のアピールにつながらない情報は不要だ。」

「あ、そっか。で、兄ぃはあれからずっと空くんと一緒だったんでしょう。こっからあたしが独占するから、兄ぃはそろそろ消えてよ。」

「嫌だよ。お前が親父に連れていかれたのはお前の不徳と甘さだろうが。」

「甘いって、なんだよ。兄ぃと親父の仲裁をしてやってるって言うのにさ。」

「誰も仲裁なんか頼んでいないでしょうよ。」

 蝶子は本気で怒ったようで、ハッ、と声を出すとそのまま乱暴に席を立った。
 ついでに俺の右腕をグイっと掴み、いい所に連れて行ってあげると言いながら俺を椅子から引っ張った。
 俺は蝶子の怒った顔、それでも目尻に光るものを見たようで、そのまま立ち上がって彼女に連れ去られるままにした。

 九曜と残されても俺は困るもの。

 食事前に散々に嬲られた唇と体が、美味しい食事とワインの効果によってか、その刺激をもう一度受けたいという風にじんじんしているようなのだ。
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