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第二章 はじまりの街
4 戦闘
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その後、ずっと着たままだった城の侍女制服のポケットを探ったらまさかまさかの5000円札が入ってた!! ラッキーー!! これってやっぱり普段の行いがいいからかな?
そんなこんなで、ココに連れて行ってもらった雑貨屋さんで無事地図を買うことができた。2つ折りの厚紙みたいな感じで、地名が書いてて、右上に小さい方位磁針がついてる。かさばらない、いかしたやつ。
あたしの今の全財産、1998円。
「お待たせ、そろそろ行こうか!」
「はい!」
あたしの言葉にココが頷く。空に太陽の位置を見るに、時間帯はおそらくお昼すぎくらい。あんまりもたもたしてると、季節柄すぐ暗くなっちゃう。もう秋だもん。
ルークと相変わらず右手の聖剣、追加メンバーのココも一緒にスタッドの街を出た。
「ねえ、ココの家ってここから何時間くらい?」
「2……3時間くらいだと思います」
「んー、渋いなあ。頑張って早歩きしよっか」
そういうわけで、ちょっとペースを上げた。……しかし、右手が疲れる! 聖剣超重いんだもん! ずっと握ってる指も痛いし、そろそろ手を離したい。あ~~ッダメ、右だけ屈強になっちゃう……どうにかなんないかな。
「行きはずっと1人だったの? 大変だね」
「いえ、行きは近くに住んでる方が馬車で出かけるのに同乗させてもらって、途中で降りたんです」
「なるほどねー」
行きはいいにしても帰りにこの道を1人で辿るのは流石に危なすぎると思うけど……この方面は人通りも全然ないし。あたしもココがいなかったら、月が出るまで待ってルークに乗せてもらっていたところだ。
……しかしこんな感じの移動が長く続くと思ったら、武者修行の旅も楽じゃない。別に舐めてたわけじゃないけどさ。
しばらくは無言で早歩きが続いた。なーんにもない、けもの道みたいなとこをひたすらまっすぐ進む。
不本意ながらも聖女になっちゃったあたしはともかく、ココはなんでもないただの女の子なのにお母さんのためにこんなに頑張って偉いと思う。家族はやっぱり大事にするべきだ、そう思わない人もいるかもしれないけど。
太陽が傾いて、空が薄ら赤みを帯びていく。辺りの木が落とす影が濃くなり始めたとき、ザ、とルークの履いたボロい靴が音を立てて止まった。
「どうしたのさ?」
振り向いて聞いてみる。なんだか尋常じゃない雰囲気。
「……ご主人、なんか……、かぐねてこっち見とうやつおるけぇ、きーつけてつかぁさい!」
『……隠れてこちらを伺う者がいるらしいな』
立ち止まって周囲に注意を向けるような姿勢をとるルークの言葉を、レイが翻訳する。
「なんですって!? ……ココ、あたしから離れないで」
「は、はい……!」
あたしがそう言うと、隣に同じく立ち止まっていたココは頷いてあたしのそばに寄った。
じりじりとルークの方に寄って、ココを守って背中合わせになるように辺りを警戒する。いつでも抜けるように左手で聖剣の柄を握った。
辺りはどんどん暗くなって、それにつれてあたしもどきどき。来るなら早く来て~っ。
そう思った瞬間、結構な速さであたしのすぐ目の前を何かが飛んできて落ちて、そのまま地面に刺さった。矢だった。
「ぎゃああ!」
危なっ! もうちょっと前に出てたら足に……うーッ、考えたくもない! 一拍遅れて悲鳴をあげる。あたしの悲鳴に驚いたのか、ココが少しびくりと肩を跳ねさせる。ごめん……
どうやらさっきのは威嚇射撃だったらしい。しばらくすると小さな足音が聞こえてきて、次第に大きくなる。全長1mくらいで、2頭身。耳と鼻が大きい、目がギョロってした土色の小人? みたいなのが横の茂みからぞろぞろ……、5、6匹? くらい現れた。
「なっ、なにこれ~~!?」
いやーーっっ! なんか怖いっていうか、きもいっていうか、なぜだかどうやら見てると嫌な気持ちになる感じ!
『ゴブリンだな、魔物にしてはかなりメジャーな種だ。聖剣で斬れば問題なく倒せる』
「わ、わかった。やってみる!」
魔物って……聞いたことはあるけど、ほんとにいたんだ! あたしの生活圏にはいなかったし、報道誌で人里に魔物が……みたいな記事読んだりとかでしか触れたことないから、山にいる人食い熊……とかと同じくらいのイメージ。
……やってみるとは言ったものの、そもそもレイってあたしの体乗っ取ったことあるんだし、戦いの時はまたそうしてくれればいいんじゃないの?
ココを助けた時はあたしでも倒せる相手だったからよかったとはいえ、今回のやつ弓とか持ってるよ?
逡巡している間にも、ゴブリン? たちは容赦なく襲いかかってくる。間近で見るとありえなすぎる風貌で、眉間に深く刻まれた皺と睨みつけるような目がめちゃくちゃ怖い! しかし逃げられない、ココとルークを守らなくちゃ!
「でえいっ!!」
あたしは聖剣を抜いて、向かってきた一体を斬り捨てた。真っ二つになったそいつは地面にどさっと落っこちて、そのまま黒い粒子になって消える。よかったー、死骸が残るスタイルじゃなくて。
「きゃあっ!」
とかなんとか安心してたら今度は弓矢が飛んでくる。ココの悲鳴。このままじゃ顔面アウトだ! 血の気が引いた瞬間、ルークが飛び出してきて素手でバシッと弓矢を叩き落とした。
「ルーク!」
「ご主人! やつら、ぼっころしちまってもいいんですかい!?」
『獣人やれ! やつらを倒さずしては前に進めん!』
「ちょっ何勝手に答えてんのさ……っ危ない!」
剣持ちのゴブリンがルークに襲いかかる。今度はあたしの体が勝手に動いて、聖剣を振り上げながらルークを退けるように突き飛ばすとそのままの勢いで剣持ちを斬った。
……今のレイがあたしのこと操ったよね!? できるんだったら最初からやってよこっちはめちゃくちゃ肝冷えんだからさ! 基準が全くわからない。
そんなこんなで、ココに連れて行ってもらった雑貨屋さんで無事地図を買うことができた。2つ折りの厚紙みたいな感じで、地名が書いてて、右上に小さい方位磁針がついてる。かさばらない、いかしたやつ。
あたしの今の全財産、1998円。
「お待たせ、そろそろ行こうか!」
「はい!」
あたしの言葉にココが頷く。空に太陽の位置を見るに、時間帯はおそらくお昼すぎくらい。あんまりもたもたしてると、季節柄すぐ暗くなっちゃう。もう秋だもん。
ルークと相変わらず右手の聖剣、追加メンバーのココも一緒にスタッドの街を出た。
「ねえ、ココの家ってここから何時間くらい?」
「2……3時間くらいだと思います」
「んー、渋いなあ。頑張って早歩きしよっか」
そういうわけで、ちょっとペースを上げた。……しかし、右手が疲れる! 聖剣超重いんだもん! ずっと握ってる指も痛いし、そろそろ手を離したい。あ~~ッダメ、右だけ屈強になっちゃう……どうにかなんないかな。
「行きはずっと1人だったの? 大変だね」
「いえ、行きは近くに住んでる方が馬車で出かけるのに同乗させてもらって、途中で降りたんです」
「なるほどねー」
行きはいいにしても帰りにこの道を1人で辿るのは流石に危なすぎると思うけど……この方面は人通りも全然ないし。あたしもココがいなかったら、月が出るまで待ってルークに乗せてもらっていたところだ。
……しかしこんな感じの移動が長く続くと思ったら、武者修行の旅も楽じゃない。別に舐めてたわけじゃないけどさ。
しばらくは無言で早歩きが続いた。なーんにもない、けもの道みたいなとこをひたすらまっすぐ進む。
不本意ながらも聖女になっちゃったあたしはともかく、ココはなんでもないただの女の子なのにお母さんのためにこんなに頑張って偉いと思う。家族はやっぱり大事にするべきだ、そう思わない人もいるかもしれないけど。
太陽が傾いて、空が薄ら赤みを帯びていく。辺りの木が落とす影が濃くなり始めたとき、ザ、とルークの履いたボロい靴が音を立てて止まった。
「どうしたのさ?」
振り向いて聞いてみる。なんだか尋常じゃない雰囲気。
「……ご主人、なんか……、かぐねてこっち見とうやつおるけぇ、きーつけてつかぁさい!」
『……隠れてこちらを伺う者がいるらしいな』
立ち止まって周囲に注意を向けるような姿勢をとるルークの言葉を、レイが翻訳する。
「なんですって!? ……ココ、あたしから離れないで」
「は、はい……!」
あたしがそう言うと、隣に同じく立ち止まっていたココは頷いてあたしのそばに寄った。
じりじりとルークの方に寄って、ココを守って背中合わせになるように辺りを警戒する。いつでも抜けるように左手で聖剣の柄を握った。
辺りはどんどん暗くなって、それにつれてあたしもどきどき。来るなら早く来て~っ。
そう思った瞬間、結構な速さであたしのすぐ目の前を何かが飛んできて落ちて、そのまま地面に刺さった。矢だった。
「ぎゃああ!」
危なっ! もうちょっと前に出てたら足に……うーッ、考えたくもない! 一拍遅れて悲鳴をあげる。あたしの悲鳴に驚いたのか、ココが少しびくりと肩を跳ねさせる。ごめん……
どうやらさっきのは威嚇射撃だったらしい。しばらくすると小さな足音が聞こえてきて、次第に大きくなる。全長1mくらいで、2頭身。耳と鼻が大きい、目がギョロってした土色の小人? みたいなのが横の茂みからぞろぞろ……、5、6匹? くらい現れた。
「なっ、なにこれ~~!?」
いやーーっっ! なんか怖いっていうか、きもいっていうか、なぜだかどうやら見てると嫌な気持ちになる感じ!
『ゴブリンだな、魔物にしてはかなりメジャーな種だ。聖剣で斬れば問題なく倒せる』
「わ、わかった。やってみる!」
魔物って……聞いたことはあるけど、ほんとにいたんだ! あたしの生活圏にはいなかったし、報道誌で人里に魔物が……みたいな記事読んだりとかでしか触れたことないから、山にいる人食い熊……とかと同じくらいのイメージ。
……やってみるとは言ったものの、そもそもレイってあたしの体乗っ取ったことあるんだし、戦いの時はまたそうしてくれればいいんじゃないの?
ココを助けた時はあたしでも倒せる相手だったからよかったとはいえ、今回のやつ弓とか持ってるよ?
逡巡している間にも、ゴブリン? たちは容赦なく襲いかかってくる。間近で見るとありえなすぎる風貌で、眉間に深く刻まれた皺と睨みつけるような目がめちゃくちゃ怖い! しかし逃げられない、ココとルークを守らなくちゃ!
「でえいっ!!」
あたしは聖剣を抜いて、向かってきた一体を斬り捨てた。真っ二つになったそいつは地面にどさっと落っこちて、そのまま黒い粒子になって消える。よかったー、死骸が残るスタイルじゃなくて。
「きゃあっ!」
とかなんとか安心してたら今度は弓矢が飛んでくる。ココの悲鳴。このままじゃ顔面アウトだ! 血の気が引いた瞬間、ルークが飛び出してきて素手でバシッと弓矢を叩き落とした。
「ルーク!」
「ご主人! やつら、ぼっころしちまってもいいんですかい!?」
『獣人やれ! やつらを倒さずしては前に進めん!』
「ちょっ何勝手に答えてんのさ……っ危ない!」
剣持ちのゴブリンがルークに襲いかかる。今度はあたしの体が勝手に動いて、聖剣を振り上げながらルークを退けるように突き飛ばすとそのままの勢いで剣持ちを斬った。
……今のレイがあたしのこと操ったよね!? できるんだったら最初からやってよこっちはめちゃくちゃ肝冷えんだからさ! 基準が全くわからない。
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