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二章~首都へ~
15話 仲間
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「本気に決まってるだろ!魔法なんて男のロマンじゃないか!入国審査もお前達がいれば行列に並ばなくてすむだろうし」
つい先程まで敵対していた相手の発言とは思えない。
「お、俺たちを殺さないのか?」
突然の友好的な態度に、カイルはどうしていいかわからずドギマギする。
「なんで殺すんだよ?」
キドはもともと三人を殺す気など無いのだ。
ただ言い掛かりをふっかけられて攻撃されたから、少しやり返しただけだ。
それに『めんどくさい』とは思っていたが、魔法なんて見せられたら話は別であった。
キドは知っての通り、その手の話が大好物だ。
子供の頃によく真似をしていたのは、今ではいい思い出である。
たとえ魔力が高まっていたとしても、すぐに魔法が使いこなせるわけではない。
魔法とは学問に類似するものだ。
魔術公式を理解出来なければまともに行使することもままならない。
勉学とは程遠い山での修行で、唯一身につけられなかった魔法は今でもキドの憧れである。
それが今、キドの手の届く範囲にあるのだ。
『魔符』を手に入れる以外の選択肢はない。
「え、あ…いや…」
どう返せばいいのか言い澱むカイルは、後方にいるグラドへ視線を向ける。
リーダーに指示を仰いだのだろう。
だが痛みに耐えきれなくなったのだろうか、グラドはうつ伏せのまま動かなくなっていた。
殺してしまったのかと焦るキドは、カイルやキールよりも早くグラドに駆け寄った。
キドはグラドを仰向けにし、呼吸を確かめる。
まだ息があった。
キドの緊張した面持ちは安堵へと変わり、深い溜息をつく。
グラドはいつの間にか気を失っていたようだ。
こんな事故みたいな事で死なれてはキドとしても後味が悪かった。
「まあいいや、こいつが起きるまで待ってるよ。あそこの岩場で野営にしようか。」
キドはすぐ近くに見える岩場を指差し言い終えると、三人を待たずしてスタスタと歩いて行く。
「お、置いて行くな!」
カイルとキールも必死でグラド持ち上げながらそれを追いかける。
グラドは真っ暗な空間を走っていた。
息切れを起こし何度も倒れそうになったが、何かをがむしゃらに追いかけている。
『何か』、正確に言うと前に走る二つの光の球体だ。
それはグラドに暖かさを感じさせる。
とても懐かしい暖かさだ。
だが光の球体は闇の奥へと向かい、グラドから遠ざかって行くのだ。
グラドは終わりの見えない闇の中、光の球体に導かれるようにして走っている。
そして奥へ進むほど、闇は深く濃いものへと変わっていく。
次第にグラドはその纏わりつく闇に足を取られるようになり、思うように進めず光との間に差が生まれる一方だった。
グラドは進むにつれ、とうとう闇が身体全体を覆うようになる。
とうとう動けなくなるグラドは、遠目に光の球体を見つめ続ける。
グラドはあの二つの光から何故か目が離せなかった。
大切なものを失う喪失感に苛まれ、気がつくとグラドはボロボロと涙を流していた。
すると奥へと進む光の球体は、見る間に自分のよく知る人間へと姿を変化させる。
カイルとキールだ。
二人は遠くから手を振りながら、グラドから離れ続ける。
必死で闇を振り払おうとするが体は微動だにしない。
「待ってくれ!カイル!キール!」
グラドは仲間の名前を叫びながら飛び起きた。
「うわっ!ビックリした!」
グラドの横には昼間に襲った若い男が驚愕の表情をこちらに向けている。
風が少し肌寒い。
パチパチと焚き火の音が聞こえ、辺りの暗さからようやく今が夜ということに気づく。
「お前は何でここにいる?カイルとキールはどうした?」
「人を脅かしといて謝りもしないのかよ…ほらあそこで寝てるよ」
その男は顎で焚き火の向かい側を指した。
そこには二人の仲間がいびきをたてながらうずくまって寝ている。
とても魔物の蔓延る平野で寝てる表情では無く、随分と安心したものだった。
「お前は何者だ。ただの平民ではないな。冒険者か?」
「キドって名前だ。ラザーク川の近くにある村に住んでいた農民だよ。」
「の、農民だと…!俺は農民にやられたってのか!?冗談にしては笑えないぞ」
「まあ色々あったってことだよ。」
「色々あったって…」
「そんな事は良いんだ!あんたの名前を教えてくれ!」
「名前?何のつもりだ?」
「ギルドで俺とパーティーを組んでくれないか?」
つい先程まで敵対していた相手の発言とは思えない。
「お、俺たちを殺さないのか?」
突然の友好的な態度に、カイルはどうしていいかわからずドギマギする。
「なんで殺すんだよ?」
キドはもともと三人を殺す気など無いのだ。
ただ言い掛かりをふっかけられて攻撃されたから、少しやり返しただけだ。
それに『めんどくさい』とは思っていたが、魔法なんて見せられたら話は別であった。
キドは知っての通り、その手の話が大好物だ。
子供の頃によく真似をしていたのは、今ではいい思い出である。
たとえ魔力が高まっていたとしても、すぐに魔法が使いこなせるわけではない。
魔法とは学問に類似するものだ。
魔術公式を理解出来なければまともに行使することもままならない。
勉学とは程遠い山での修行で、唯一身につけられなかった魔法は今でもキドの憧れである。
それが今、キドの手の届く範囲にあるのだ。
『魔符』を手に入れる以外の選択肢はない。
「え、あ…いや…」
どう返せばいいのか言い澱むカイルは、後方にいるグラドへ視線を向ける。
リーダーに指示を仰いだのだろう。
だが痛みに耐えきれなくなったのだろうか、グラドはうつ伏せのまま動かなくなっていた。
殺してしまったのかと焦るキドは、カイルやキールよりも早くグラドに駆け寄った。
キドはグラドを仰向けにし、呼吸を確かめる。
まだ息があった。
キドの緊張した面持ちは安堵へと変わり、深い溜息をつく。
グラドはいつの間にか気を失っていたようだ。
こんな事故みたいな事で死なれてはキドとしても後味が悪かった。
「まあいいや、こいつが起きるまで待ってるよ。あそこの岩場で野営にしようか。」
キドはすぐ近くに見える岩場を指差し言い終えると、三人を待たずしてスタスタと歩いて行く。
「お、置いて行くな!」
カイルとキールも必死でグラド持ち上げながらそれを追いかける。
グラドは真っ暗な空間を走っていた。
息切れを起こし何度も倒れそうになったが、何かをがむしゃらに追いかけている。
『何か』、正確に言うと前に走る二つの光の球体だ。
それはグラドに暖かさを感じさせる。
とても懐かしい暖かさだ。
だが光の球体は闇の奥へと向かい、グラドから遠ざかって行くのだ。
グラドは終わりの見えない闇の中、光の球体に導かれるようにして走っている。
そして奥へ進むほど、闇は深く濃いものへと変わっていく。
次第にグラドはその纏わりつく闇に足を取られるようになり、思うように進めず光との間に差が生まれる一方だった。
グラドは進むにつれ、とうとう闇が身体全体を覆うようになる。
とうとう動けなくなるグラドは、遠目に光の球体を見つめ続ける。
グラドはあの二つの光から何故か目が離せなかった。
大切なものを失う喪失感に苛まれ、気がつくとグラドはボロボロと涙を流していた。
すると奥へと進む光の球体は、見る間に自分のよく知る人間へと姿を変化させる。
カイルとキールだ。
二人は遠くから手を振りながら、グラドから離れ続ける。
必死で闇を振り払おうとするが体は微動だにしない。
「待ってくれ!カイル!キール!」
グラドは仲間の名前を叫びながら飛び起きた。
「うわっ!ビックリした!」
グラドの横には昼間に襲った若い男が驚愕の表情をこちらに向けている。
風が少し肌寒い。
パチパチと焚き火の音が聞こえ、辺りの暗さからようやく今が夜ということに気づく。
「お前は何でここにいる?カイルとキールはどうした?」
「人を脅かしといて謝りもしないのかよ…ほらあそこで寝てるよ」
その男は顎で焚き火の向かい側を指した。
そこには二人の仲間がいびきをたてながらうずくまって寝ている。
とても魔物の蔓延る平野で寝てる表情では無く、随分と安心したものだった。
「お前は何者だ。ただの平民ではないな。冒険者か?」
「キドって名前だ。ラザーク川の近くにある村に住んでいた農民だよ。」
「の、農民だと…!俺は農民にやられたってのか!?冗談にしては笑えないぞ」
「まあ色々あったってことだよ。」
「色々あったって…」
「そんな事は良いんだ!あんたの名前を教えてくれ!」
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「ギルドで俺とパーティーを組んでくれないか?」
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