農民が山にこもって修業した結果

まーらいおん

文字の大きさ
16 / 18
二章~首都へ~

15話 仲間

しおりを挟む
「本気に決まってるだろ!魔法なんて男のロマンじゃないか!入国審査もお前達がいれば行列に並ばなくてすむだろうし」

つい先程まで敵対していた相手の発言とは思えない。

「お、俺たちを殺さないのか?」

突然の友好的な態度に、カイルはどうしていいかわからずドギマギする。

「なんで殺すんだよ?」

キドはもともと三人を殺す気など無いのだ。

ただ言い掛かりをふっかけられて攻撃されたから、少しやり返しただけだ。

それに『めんどくさい』とは思っていたが、魔法なんて見せられたら話は別であった。

キドは知っての通り、その手の話が大好物だ。

子供の頃によく真似をしていたのは、今ではいい思い出である。

たとえ魔力が高まっていたとしても、すぐに魔法が使いこなせるわけではない。

魔法とは学問に類似するものだ。
魔術公式を理解出来なければまともに行使することもままならない。

勉学とは程遠い山での修行で、唯一身につけられなかった魔法は今でもキドの憧れである。

それが今、キドの手の届く範囲にあるのだ。

『魔符』を手に入れる以外の選択肢はない。

「え、あ…いや…」

どう返せばいいのか言い澱むカイルは、後方にいるグラドへ視線を向ける。

リーダーに指示を仰いだのだろう。

だが痛みに耐えきれなくなったのだろうか、グラドはうつ伏せのまま動かなくなっていた。

殺してしまったのかと焦るキドは、カイルやキールよりも早くグラドに駆け寄った。

キドはグラドを仰向けにし、呼吸を確かめる。

まだ息があった。

キドの緊張した面持ちは安堵へと変わり、深い溜息をつく。

グラドはいつの間にか気を失っていたようだ。

こんな事故みたいな事で死なれてはキドとしても後味が悪かった。

「まあいいや、こいつが起きるまで待ってるよ。あそこの岩場で野営にしようか。」

キドはすぐ近くに見える岩場を指差し言い終えると、三人を待たずしてスタスタと歩いて行く。

「お、置いて行くな!」

カイルとキールも必死でグラド持ち上げながらそれを追いかける。








グラドは真っ暗な空間を走っていた。

息切れを起こし何度も倒れそうになったが、何かをがむしゃらに追いかけている。

『何か』、正確に言うと前に走る二つの光の球体だ。

それはグラドに暖かさを感じさせる。

とても懐かしい暖かさだ。

だが光の球体は闇の奥へと向かい、グラドから遠ざかって行くのだ。

グラドは終わりの見えない闇の中、光の球体に導かれるようにして走っている。

そして奥へ進むほど、闇は深く濃いものへと変わっていく。

次第にグラドはその纏わりつく闇に足を取られるようになり、思うように進めず光との間に差が生まれる一方だった。

グラドは進むにつれ、とうとう闇が身体全体を覆うようになる。

とうとう動けなくなるグラドは、遠目に光の球体を見つめ続ける。

グラドはあの二つの光から何故か目が離せなかった。

大切なものを失う喪失感に苛まれ、気がつくとグラドはボロボロと涙を流していた。

すると奥へと進む光の球体は、見る間に自分のよく知る人間へと姿を変化させる。

カイルとキールだ。

二人は遠くから手を振りながら、グラドから離れ続ける。

必死で闇を振り払おうとするが体は微動だにしない。

「待ってくれ!カイル!キール!」

グラドは仲間の名前を叫びながら飛び起きた。

「うわっ!ビックリした!」

グラドの横には昼間に襲った若い男が驚愕の表情をこちらに向けている。

風が少し肌寒い。

パチパチと焚き火の音が聞こえ、辺りの暗さからようやく今が夜ということに気づく。

「お前は何でここにいる?カイルとキールはどうした?」

「人を脅かしといて謝りもしないのかよ…ほらあそこで寝てるよ」

その男は顎で焚き火の向かい側を指した。

そこには二人の仲間がいびきをたてながらうずくまって寝ている。

とても魔物の蔓延る平野で寝てる表情では無く、随分と安心したものだった。

「お前は何者だ。ただの平民ではないな。冒険者か?」

「キドって名前だ。ラザーク川の近くにある村に住んでいた農民だよ。」

「の、農民だと…!俺は農民にやられたってのか!?冗談にしては笑えないぞ」

「まあ色々あったってことだよ。」

「色々あったって…」

「そんな事は良いんだ!あんたの名前を教えてくれ!」

「名前?何のつもりだ?」

「ギルドで俺とパーティーを組んでくれないか?」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...