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二章~首都へ~
16話 グラド・フォーゼン
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「どういうことだ?」
唐突な頼みに訝しく思うグラドは射るような眼差しでキドを睨みつける。
当たり前だが、突然農民にパーティーを組もうなどと言われたのは初めてであったし聞いたこともない。
グラドが不審がるのも当然であった。
「そのままの意味だよ。俺は農民から冒険者に転職しようって思ってて、パールバティの冒険者ギルドに行くつもりだったんだ。」
キドは相変わらずの間の抜けた口調で喋り続ける。
子供のような屈託のない笑顔でだ。
しかしキドは楽しげに話すが、グラドの疑問は尽きない。
ここまでの実力者がわざわざ格下とパーティーを組みたがるだろうか。
ましてや昼間に恐喝まがいの出来事を起こしたばかりだ。
王国騎士団に通報されても無理はない。
「何故俺たちなんだ?別に俺たちじゃ無くてもこのご時世、幾らでも魔法を使う奴はいるだろ。それにそんだけ強けりゃ有名冒険者からも声がかかるはずだろうが」
「俺はこんな童顔だろ?強さを確かめる以前に話すら聞いてもらえないはずだ。何より俺の理想のパーティーは仲間思いの奴と決めていたんだ」
キドはゆっくりと腰を上げ、グラドを指差す。
「そんな時にお前達と出会ったんだ!ただの悪人に命を懸けてまで守ってくれる仲間なんていないだろ?それともただのならず者か?」
キドは自信満々のキメ顔でニヤリと笑みを浮かべながら話す。
当然、上から目線の物言いにグラドが黙っているはずがない。
「当たり前だろうが!こいつらは俺の自慢の仲間だ!俺なんかのために体張る馬鹿野郎どもだがそこら辺の冒険者なんかよりよっぽど良い奴らなんだよ!」
仲間の話が出た途端、グラドの眼光はさらに鋭いものへと変わる。
仲間を大切にしている事がよくわかる返事だった。
キドにとってはそれが聞けただけで充分である。
キドの笑顔は最高潮に達し、純新無垢な少年を思わせるものになる。
「最高だな!更にパーティーを組みたくなったよ!どうだ?俺をこのパーティーに入れてくれないか?」
グラドのゴツゴツとした右手をキドは両手で握り、キラキラと目を輝かせてその巨体に言い寄る。
言葉に詰まるグラドはオロオロと後退り、困った表情でカイルとキールに助けを求める。
しかし二人は猫が暖炉の前で丸くなる様に焚き火を囲いながら爆睡していた。
「......分かったよ。ただ、二人の了承を得られればだ。いいな?」
グラドは深くため息をつくと、気持ちよさそうな寝顔とともに獣の鳴き声のようなイビキを発するカイルとキールに人差し指を向けた。
「それなら明日にするよ。今起こしたら可愛そうだしね。」
キドは欠伸をしながら毛布を片手に、焚き火へと近づく。
今更気づいたが、グラドが起きるのを待っていたせいで随分と眠たそうである。
まぶたがいつ閉じてもおかしくない状況だ。
しかし、焚き火に辿り着いたキドはそのまま横になるかと思いきや、何か言い忘れていたのか突然後ろに振り返る。
「俺もそろそろ寝るよ。えっと...」
「グラドだ。グラド・フォーゼンだ。」
「おやすみグラド...」
キドは眠たそうに目を擦りながら手を振ると、気絶するようにその場に倒れ込む。
そうしてまぶたが落ちきるとともに深い眠りへと誘われていった。
翌日、カイルとキールからパーティー加入への了承を得るために、キドは土下座で懇願していた。
なにせ一戦交えた次の日である。
少なくとも二人は自分に対して良い感情は持っていないだろうと思っていたからだ。
「お願いだ!俺を仲間に入れてくれ!」
キドは地へと頭を擦りすけ、今までにないくらい本気のお願いをする。
「「は??」」
二人の素っ頓狂な声が辺りに響く。
呆れているのだろうか。驚いているのだろうか。
二人の表情が見えないからそれも分からない。
キドは額に汗を流しながら、自分の心臓の鼓動が徐々に早くなっている事を感じる。
無理ならば仕方が無い。
パールバティで新たに仲間を探すしかない。
しかし、出来るならばこの人たちとともに旅がしたい!
「おい...」
「ああ...」
カイルとキールの小声が聞こえる。
やはり無理な話だっただろうか。
だいたい出会い方が悪かったんだ。
(畜生...)
ボソボソとした小声にすっかり弱気になったキドが諦めようとしたその刹那に有り得ない言葉が耳に入った。
「なに言ってんだよ。こっちからお願いしたいぐらいだぜ!」
「ほんとにこんなパーティーでいいのか?もっと良い貰い手は沢山あるんじゃないですか?」
カイルとキールの肯定的な意見に驚きとともに聞き返してしまう。
「ほ、本当にいいのか?このパーティーにはいっていいんだな??」
二人は無言で頷き返してくる。
それと同時に背後から図太い男の声が聞こえる。
「これで決まりだな!ようこそ竜の祠へ」
グラドからゴツゴツとした右手を差し出される。
キドはそれを強い力で握り返した。
神歴675年、ここから魔王と呼ばれる人間の物語が始まるのはまだ誰も知らない...
唐突な頼みに訝しく思うグラドは射るような眼差しでキドを睨みつける。
当たり前だが、突然農民にパーティーを組もうなどと言われたのは初めてであったし聞いたこともない。
グラドが不審がるのも当然であった。
「そのままの意味だよ。俺は農民から冒険者に転職しようって思ってて、パールバティの冒険者ギルドに行くつもりだったんだ。」
キドは相変わらずの間の抜けた口調で喋り続ける。
子供のような屈託のない笑顔でだ。
しかしキドは楽しげに話すが、グラドの疑問は尽きない。
ここまでの実力者がわざわざ格下とパーティーを組みたがるだろうか。
ましてや昼間に恐喝まがいの出来事を起こしたばかりだ。
王国騎士団に通報されても無理はない。
「何故俺たちなんだ?別に俺たちじゃ無くてもこのご時世、幾らでも魔法を使う奴はいるだろ。それにそんだけ強けりゃ有名冒険者からも声がかかるはずだろうが」
「俺はこんな童顔だろ?強さを確かめる以前に話すら聞いてもらえないはずだ。何より俺の理想のパーティーは仲間思いの奴と決めていたんだ」
キドはゆっくりと腰を上げ、グラドを指差す。
「そんな時にお前達と出会ったんだ!ただの悪人に命を懸けてまで守ってくれる仲間なんていないだろ?それともただのならず者か?」
キドは自信満々のキメ顔でニヤリと笑みを浮かべながら話す。
当然、上から目線の物言いにグラドが黙っているはずがない。
「当たり前だろうが!こいつらは俺の自慢の仲間だ!俺なんかのために体張る馬鹿野郎どもだがそこら辺の冒険者なんかよりよっぽど良い奴らなんだよ!」
仲間の話が出た途端、グラドの眼光はさらに鋭いものへと変わる。
仲間を大切にしている事がよくわかる返事だった。
キドにとってはそれが聞けただけで充分である。
キドの笑顔は最高潮に達し、純新無垢な少年を思わせるものになる。
「最高だな!更にパーティーを組みたくなったよ!どうだ?俺をこのパーティーに入れてくれないか?」
グラドのゴツゴツとした右手をキドは両手で握り、キラキラと目を輝かせてその巨体に言い寄る。
言葉に詰まるグラドはオロオロと後退り、困った表情でカイルとキールに助けを求める。
しかし二人は猫が暖炉の前で丸くなる様に焚き火を囲いながら爆睡していた。
「......分かったよ。ただ、二人の了承を得られればだ。いいな?」
グラドは深くため息をつくと、気持ちよさそうな寝顔とともに獣の鳴き声のようなイビキを発するカイルとキールに人差し指を向けた。
「それなら明日にするよ。今起こしたら可愛そうだしね。」
キドは欠伸をしながら毛布を片手に、焚き火へと近づく。
今更気づいたが、グラドが起きるのを待っていたせいで随分と眠たそうである。
まぶたがいつ閉じてもおかしくない状況だ。
しかし、焚き火に辿り着いたキドはそのまま横になるかと思いきや、何か言い忘れていたのか突然後ろに振り返る。
「俺もそろそろ寝るよ。えっと...」
「グラドだ。グラド・フォーゼンだ。」
「おやすみグラド...」
キドは眠たそうに目を擦りながら手を振ると、気絶するようにその場に倒れ込む。
そうしてまぶたが落ちきるとともに深い眠りへと誘われていった。
翌日、カイルとキールからパーティー加入への了承を得るために、キドは土下座で懇願していた。
なにせ一戦交えた次の日である。
少なくとも二人は自分に対して良い感情は持っていないだろうと思っていたからだ。
「お願いだ!俺を仲間に入れてくれ!」
キドは地へと頭を擦りすけ、今までにないくらい本気のお願いをする。
「「は??」」
二人の素っ頓狂な声が辺りに響く。
呆れているのだろうか。驚いているのだろうか。
二人の表情が見えないからそれも分からない。
キドは額に汗を流しながら、自分の心臓の鼓動が徐々に早くなっている事を感じる。
無理ならば仕方が無い。
パールバティで新たに仲間を探すしかない。
しかし、出来るならばこの人たちとともに旅がしたい!
「おい...」
「ああ...」
カイルとキールの小声が聞こえる。
やはり無理な話だっただろうか。
だいたい出会い方が悪かったんだ。
(畜生...)
ボソボソとした小声にすっかり弱気になったキドが諦めようとしたその刹那に有り得ない言葉が耳に入った。
「なに言ってんだよ。こっちからお願いしたいぐらいだぜ!」
「ほんとにこんなパーティーでいいのか?もっと良い貰い手は沢山あるんじゃないですか?」
カイルとキールの肯定的な意見に驚きとともに聞き返してしまう。
「ほ、本当にいいのか?このパーティーにはいっていいんだな??」
二人は無言で頷き返してくる。
それと同時に背後から図太い男の声が聞こえる。
「これで決まりだな!ようこそ竜の祠へ」
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