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第一章・墓標を立てる者
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対峙した霧子と怪物は、しばしの間お互いを見つめあった。
接触不良からか、街灯が数回またたく。
次の瞬間、霧子は前へ飛び出した。
一瞬遅れて人面竜も地面を蹴り、アスファルトを削りながら突進する。たてがみが揺れて首がしなると、獲物に食らいつくヘビのように首が少女へと伸びる。
硬質な顔面が激突し、削岩機のように地面を割る。しかしそこに霧子はいなかった。
霧子は宙を跳んでいた。人間離れした跳躍力だった。そのまま人面竜の背中を蹴って後方へと着地すると、横なぎに振られた尻尾を身を伏せてかわす。
尻尾はすぐに軌道を変えると、今度は槍のように刺突を仕掛けてきた。
霧子はこれもとんぼを切って身をかわすだけではなく、空中で放った蹴りで尻尾を撃ち落とした。
突進力を逆に利用され、軌道を変えられた尻尾が地面に深々と埋まりこむ。人面竜が地面から抜こうとするものの、尻尾は散水するホースのようにうねるだけだった。
着地した霧子がワンピースのスカートの下に両手を差し込んだかと思うと、次の瞬間には二挺のオートマチックピストルを握ってあらわれた。
怪物に向けた銃口は全部で四つ……拳銃にはそれぞれふたつの銃口が垂直についていた。
銃声が続けざまにあがり、四つの火花とともに銃弾が吐き出される。連射を浴びた尻尾は血を流し、トゲから先がちぎれ飛んでいく。
苦痛を伴う解放に怪物がひるんでいるあいだに、霧子が拳銃から空の弾倉を振り出し、しゃがみこむ。彼女の脚を覆うスカートの端が持ち上がると、まるで手品の如く垂直に立った新しい弾倉が忽然とあらわれた。
激痛による怪物の悲鳴が、手傷を負わせた相手に対する怒りを帯びてゆくなか、霧子はゆっくりと銃の台尻を地面に近づけ、弾倉を装填した。その口の端はそれまでと変わらず持ち上がっていた。
闘志をとり戻した人面竜の突進を、霧子がふたたび跳躍して避ける。
人面竜のたてがみはその一本ずつが剃刀のような鋭利さと切れ味を持っていた。が、たてがみは空中ですれ違う霧子のワンピースの裾をわずかに切り刻んだだけだった。
怪物はなおも小さな獲物の後ろを回り込み、飛びつき、噛みつこうと執拗に追いまわした。しかし霧子はそのすべてを幽霊のようにかわしていった。
そうした攻防を続けるにつれて怪物の動きは鈍っていき、尻尾の傷口から出るどす黒い血の量も減り、ついに動きを止めた。
怪物から正面から対峙していた霧子は銃を持ち上げると、怪物の顔を狙ってふたたび弾丸を連射した。その表情から、先ほどの笑みは削ぎ落されていた。
弾倉ふたつ分の弾丸によって顔面を潰された怪物はしばらくその場に佇んだあと、地響きとともに横倒しになった。苦し気に上下していた腹部が萎み、それきり動くのをやめる。
接触不良からか、街灯が数回またたく。
次の瞬間、霧子は前へ飛び出した。
一瞬遅れて人面竜も地面を蹴り、アスファルトを削りながら突進する。たてがみが揺れて首がしなると、獲物に食らいつくヘビのように首が少女へと伸びる。
硬質な顔面が激突し、削岩機のように地面を割る。しかしそこに霧子はいなかった。
霧子は宙を跳んでいた。人間離れした跳躍力だった。そのまま人面竜の背中を蹴って後方へと着地すると、横なぎに振られた尻尾を身を伏せてかわす。
尻尾はすぐに軌道を変えると、今度は槍のように刺突を仕掛けてきた。
霧子はこれもとんぼを切って身をかわすだけではなく、空中で放った蹴りで尻尾を撃ち落とした。
突進力を逆に利用され、軌道を変えられた尻尾が地面に深々と埋まりこむ。人面竜が地面から抜こうとするものの、尻尾は散水するホースのようにうねるだけだった。
着地した霧子がワンピースのスカートの下に両手を差し込んだかと思うと、次の瞬間には二挺のオートマチックピストルを握ってあらわれた。
怪物に向けた銃口は全部で四つ……拳銃にはそれぞれふたつの銃口が垂直についていた。
銃声が続けざまにあがり、四つの火花とともに銃弾が吐き出される。連射を浴びた尻尾は血を流し、トゲから先がちぎれ飛んでいく。
苦痛を伴う解放に怪物がひるんでいるあいだに、霧子が拳銃から空の弾倉を振り出し、しゃがみこむ。彼女の脚を覆うスカートの端が持ち上がると、まるで手品の如く垂直に立った新しい弾倉が忽然とあらわれた。
激痛による怪物の悲鳴が、手傷を負わせた相手に対する怒りを帯びてゆくなか、霧子はゆっくりと銃の台尻を地面に近づけ、弾倉を装填した。その口の端はそれまでと変わらず持ち上がっていた。
闘志をとり戻した人面竜の突進を、霧子がふたたび跳躍して避ける。
人面竜のたてがみはその一本ずつが剃刀のような鋭利さと切れ味を持っていた。が、たてがみは空中ですれ違う霧子のワンピースの裾をわずかに切り刻んだだけだった。
怪物はなおも小さな獲物の後ろを回り込み、飛びつき、噛みつこうと執拗に追いまわした。しかし霧子はそのすべてを幽霊のようにかわしていった。
そうした攻防を続けるにつれて怪物の動きは鈍っていき、尻尾の傷口から出るどす黒い血の量も減り、ついに動きを止めた。
怪物から正面から対峙していた霧子は銃を持ち上げると、怪物の顔を狙ってふたたび弾丸を連射した。その表情から、先ほどの笑みは削ぎ落されていた。
弾倉ふたつ分の弾丸によって顔面を潰された怪物はしばらくその場に佇んだあと、地響きとともに横倒しになった。苦し気に上下していた腹部が萎み、それきり動くのをやめる。
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