ワールドエンドなんて言うもんじゃない

ユザメ

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繰り返される悪夢

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「もう駄目だ、この世の終わりだ。もう沢山だよ、人を殺すのも仲間が殺されるのも。全くもって度し難いよ。何が悲しくてこんな……」
「ヘルス、泣き言を言うもんじゃない。それにこの世の終わり<ワールドエンド>なんて言うもんじゃない。君は狙撃が上手い、君の後ろに死体があっても目の前に転がっていたりはしないだろう。君が全て命中させ、仲間を救い、そして敵の死体を乗り越えてきたんだ。それに、もうすぐだ。もうすぐ我々を救ってくれる救世主メシアが必ずやってくる。それまでの辛抱だ、行くぞ」
「待て、ジャン!!そっちは――!!」


何かが炸裂した音。遠くまでよく響く。そして残響の後の静けさ、微かな硝煙の匂い……。


男の、野太い悲鳴のような声。怒号、そして慟哭。空の青さとは対照的な、悲痛な叫びがこだまする。

「またこの夢か……」

ここ最近、繰り返し見るこの夢に僕は悩まされていた。夢だと言うのにあまりにもリアルな戦争のワンシーン。匂いや音、それから感じる地響きまで、酷く鮮明に映し出される。こんな夢を毎日見るのは、実際に戦争を経験した人間や、稀に居る戦争の歴史を趣味として調べ、そのグロテスクな画像や動画を観漁るマニアだけのものだろう。
僕は戦争とは全く関係のない時代に生まれ、今となってはすっかり物と情報に溢れた現代社会を生きるごく一般の受験生だ。強いて言うなら受験もまあ、戦争と例えることはあるが……。

毎日だ。毎日こんな夢を見続けているのだ。本来夢は日常生活で深層心理まで蓄積されたストレスを逃がすためのものである。しかしこんな夢を毎日見ていては、ストレスは発散するどころか蓄積する一方だ。たまには性的な夢でも見たいくらいだ、と毒づくようにすらなってしまった。いくら受験範囲に戦争が含まれているからとはいえ、僕はそこまで悲しい過去の惨劇に思いを馳せたことは無い。
それなのに。

毎日繰り返される戦争のワンシーン。もう一か月は同じものを見ている。これは夢からの何かのメッセージなのだろうか?

本来、「夢からのメッセージ」なんてものは僕は考えないし信じてもいない。しかしここまで来ると流石に考えざるを得なくなってくる。何か調べて答えが分かることにより、この悪夢から解放されるのであればもう何でもよかった。仕方なく僕は受験勉強、という名目のもと、戦争について、過去の歴史を遡ってみることにした。



夢の中に出てくる人物達は、どれも外人のように思えた。ただ、アジア人にもああいった外見の人達は沢山居る。ただ、話している言葉は日本語だった。だから僕にも理解ができたのだ。

「黒人ぽい人も居たし、白人ぽい人も居たしなあ……。でも、何で日本語で喋っているんだ?日本の戦争なのか……?いや、それはないか。何で敵の言語で喋ってるんだ……。でも今の所、日本兵らしき人間も見てないしなあ……。言語は日本で、外人ばかりで。どうなってるんだ。」

あの炸裂音は、銃砲ではなく地雷なのではないだろうか。だとすれば、アフガン?いや、黒人だと南北戦争の可能性も。
しかし、調べても調べても何となく違う気がする。別段、僕は歴史に詳しいわけでもないし、得意分野ともしていないが、それでも直感的なものがあったのだ。これは、違う。
それに言語の理由が解明できていないし、そもそも夢の話だ。もしかしたら同じ夢を数回見たことによって、僕の頭の中にそれが刻まれてしまって、無意識のうちに投影を繰り返すようになってしまっただけのことかもしれない。つまり僕の妄想だ。

図書館で手当り次第に調べてみたが、納得のいく資料は見当たらなかった。実際にあった戦争ではないのか?

「だとしたら何なんだよ……。そもそも、実在しない戦争って」

実在しない戦争。そんなもの戦争ゲームくらいだ。でも僕はそんなゲームはやってないし持ってすらいない。そんなことをぐるぐる考えているうちに、気付けば夜になってしまっていた。ああ、今日は受験範囲に何も触れていない。これはまずい……。

「たかが夢に、ご苦労な事だな……」

そう自分に悪態をついて、図書館を後にした。



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