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アリーシャ編■夢世界
8.聖域
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アルハザードには、四つの種族が確認されている。
アリーシャやスコットのようなエルフ族。
野蛮で荒っぽい性格のオーク族。
排他的で血統主義の魔族。
そして、適応能力に優れた人間族だ。
かつて世界が一つの大陸だった頃。
四つの種族は大地を四等分し、互いの領地を侵さない、絶対不可侵の協定を結んでいた。
干渉し合わなければ争いで血が流れることもないし、種の保存を考えれば、わざわざ侵略戦争を行う必要も無いからだ。
長きに渡る平穏は、それぞれの種族に繁栄を齎した。
誰もが怒りや憎しみなどという醜い感情を忘れ去る程に年月が経ち、いつからか互いの種族の存在すら記憶から遠のいていた。
だが、平穏はいつまでも続くことは無かった。
均衡が破られる出来事が世界を真っ二つに両断し、暗黒の時代が到来する。
ベリオール火山の頂に安置されていた神殿が、何者かによって破壊され、魔族が崇拝していた邪神が姿を現し、大量の生贄を要求したのだ。
生贄を献上しなければ皆殺しにするという邪神の言葉は、魔族を追い詰めるには充分すぎた。
何故なら魔族は、全モンスターを従えた圧倒的な数が強さであるが、魔族自体は雌個体が少ないため、数が非常に少ないのだ。
後がなくなった魔族は、代わりの生贄になる奴隷を求め、アルハザード全土に手を伸ばした。
邪神の存在も、生贄集めなどという非人道的な行為も、魔族以外は誰一人として知らなかった。知るすべがなかった。
だから、彼らは魔族が協定を破って略奪や殺戮の限りを尽くすためだけにやってきたと思った。
だが、今更弁明できる者は一人もいなかった。
──世界の半分近くが魔族に侵略されようとしていたその時、世界戦争に発展することになる。
魔族軍に対抗するために、エルフ・オーク・人間による連合軍が結成され、全面戦争となった。
数では魔族軍が圧倒的であったが、個々の戦闘力の差は埋める事が出来なかった。
少しずつ連合軍は領地を奪取し、異なる種族による見事な連携で徐々に敵を屠り、その大軍を後退させることに成功した。
戦いの火蓋が切られ、しばらくたった頃。
邪神はいつの間にか跡形もなく消えており、魔族にとっても、もはや戦う理由など何一つなかった。
だが、一度始めてしまった戦が簡単に収束するはずもなく、双方が、勝てば官軍を信じて戦った。
戦意を喪失した魔族軍に勝ち目などなく、多くの魔族とモンスターの屍の山が築かれ、地獄のような世界が広がっていった。
味方の大半を失った魔族軍の首領たる魔王ネロは、降伏する代わりに二つだけ条件を提示した。
自分を殺す代わりに、これ以上同胞を殺さないこと。
邪神の存在を風化させない事。
ただそれだけだった。
しかし、双方の失われた命はあまりにも多すぎた。
魔族は人口の六割、連合軍はそれぞれ三割ほどを消耗した。
本来ならばネロのたった一人の命でどうこうなるレベルの話ではない事は、百も承知だった。
だが、ネロには自分の命以外に差し出せるものは、何一つなかったのだ。
──ネロは他者には冷酷で残忍なことも容赦なく実行する文字通りの悪魔であったが、味方にはこれ以上ない程に仁と義を持って接し、魔族の誇りと名誉を現世まで守り抜いてきた。
その事は連合軍の誰もが知っており、ネロに畏敬の念を抱く者も少なくない。
邪神さえいなければ──
戦争さえなければ──
誰もがそう思い、願った。
だから、これ以上血が流れないために──
ネロの条件を却下した。
──月日が流れ、世界には一時の平和が訪れていた。
再び四種族は大陸を四等分し、それぞれの領主が土地を収め、二度と戦争を起こさない誓いを立てた。
仁と義の魔王ネロだった物は、今は小さな祠の中で深い眠りについている。
三種族による三重の結界で封印されたネロは、世の安寧を願いながら、再び目覚めるその時まで、目を瞑ることにした。
彼が封印されている祠は、ある場所に安置されている。
──人々は、ここを『フェルミナの洞窟』と呼ぶ。
アリーシャやスコットのようなエルフ族。
野蛮で荒っぽい性格のオーク族。
排他的で血統主義の魔族。
そして、適応能力に優れた人間族だ。
かつて世界が一つの大陸だった頃。
四つの種族は大地を四等分し、互いの領地を侵さない、絶対不可侵の協定を結んでいた。
干渉し合わなければ争いで血が流れることもないし、種の保存を考えれば、わざわざ侵略戦争を行う必要も無いからだ。
長きに渡る平穏は、それぞれの種族に繁栄を齎した。
誰もが怒りや憎しみなどという醜い感情を忘れ去る程に年月が経ち、いつからか互いの種族の存在すら記憶から遠のいていた。
だが、平穏はいつまでも続くことは無かった。
均衡が破られる出来事が世界を真っ二つに両断し、暗黒の時代が到来する。
ベリオール火山の頂に安置されていた神殿が、何者かによって破壊され、魔族が崇拝していた邪神が姿を現し、大量の生贄を要求したのだ。
生贄を献上しなければ皆殺しにするという邪神の言葉は、魔族を追い詰めるには充分すぎた。
何故なら魔族は、全モンスターを従えた圧倒的な数が強さであるが、魔族自体は雌個体が少ないため、数が非常に少ないのだ。
後がなくなった魔族は、代わりの生贄になる奴隷を求め、アルハザード全土に手を伸ばした。
邪神の存在も、生贄集めなどという非人道的な行為も、魔族以外は誰一人として知らなかった。知るすべがなかった。
だから、彼らは魔族が協定を破って略奪や殺戮の限りを尽くすためだけにやってきたと思った。
だが、今更弁明できる者は一人もいなかった。
──世界の半分近くが魔族に侵略されようとしていたその時、世界戦争に発展することになる。
魔族軍に対抗するために、エルフ・オーク・人間による連合軍が結成され、全面戦争となった。
数では魔族軍が圧倒的であったが、個々の戦闘力の差は埋める事が出来なかった。
少しずつ連合軍は領地を奪取し、異なる種族による見事な連携で徐々に敵を屠り、その大軍を後退させることに成功した。
戦いの火蓋が切られ、しばらくたった頃。
邪神はいつの間にか跡形もなく消えており、魔族にとっても、もはや戦う理由など何一つなかった。
だが、一度始めてしまった戦が簡単に収束するはずもなく、双方が、勝てば官軍を信じて戦った。
戦意を喪失した魔族軍に勝ち目などなく、多くの魔族とモンスターの屍の山が築かれ、地獄のような世界が広がっていった。
味方の大半を失った魔族軍の首領たる魔王ネロは、降伏する代わりに二つだけ条件を提示した。
自分を殺す代わりに、これ以上同胞を殺さないこと。
邪神の存在を風化させない事。
ただそれだけだった。
しかし、双方の失われた命はあまりにも多すぎた。
魔族は人口の六割、連合軍はそれぞれ三割ほどを消耗した。
本来ならばネロのたった一人の命でどうこうなるレベルの話ではない事は、百も承知だった。
だが、ネロには自分の命以外に差し出せるものは、何一つなかったのだ。
──ネロは他者には冷酷で残忍なことも容赦なく実行する文字通りの悪魔であったが、味方にはこれ以上ない程に仁と義を持って接し、魔族の誇りと名誉を現世まで守り抜いてきた。
その事は連合軍の誰もが知っており、ネロに畏敬の念を抱く者も少なくない。
邪神さえいなければ──
戦争さえなければ──
誰もがそう思い、願った。
だから、これ以上血が流れないために──
ネロの条件を却下した。
──月日が流れ、世界には一時の平和が訪れていた。
再び四種族は大陸を四等分し、それぞれの領主が土地を収め、二度と戦争を起こさない誓いを立てた。
仁と義の魔王ネロだった物は、今は小さな祠の中で深い眠りについている。
三種族による三重の結界で封印されたネロは、世の安寧を願いながら、再び目覚めるその時まで、目を瞑ることにした。
彼が封印されている祠は、ある場所に安置されている。
──人々は、ここを『フェルミナの洞窟』と呼ぶ。
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