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悲劇と歴史
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物語の構造という事を書いたが、これを簡単に外れる方法がある。それは歴史を書く、ことだ。歴史にはただただ事実関係しかないため、収まるところに収まるような物語構造が、そこには用意されてない。簡単に言えば、正義が負けることもあるし、謎が解けないこともある。無論、恋愛も成就しない。
ある意味ではこれは悲劇だ。ただ、最近よく言われるようになった『バッドエンド』と悲劇とは、ちょっと違うと思う。バッドエンドというのは、ハッピーエンドの期待を裏切って、敢えて『悪い』終わり方をするものである。そこにはハッピーエンドへの期待があるのだ。
けど悲劇というのは、最初からハッピーエンドを期待しているわけではない。悲劇というのは、その主人公を巻き込む運命の巨大な残酷さに震え、それがある種の『荘厳』の域に達するものが悲劇だ。
実は人類史上、初の本格的物語分析論は悲劇論だ。アリストテレスの『詩学』がそれにあたる。ギリシアでは悲劇の公演が盛んで、一番、崇高な芸術と見做されていた。これは読むと結構面白いので、オススメだ。
ちなみに、この『詩学』のなかで、アリストテレスは歴史より悲劇の方がより哲学的である、と言っている。その理由は歴史が個別的な事を語るのに対し、悲劇は普遍的な事を語るからだ。
少し補足すると、歴史は「起こった事」を書くのに対し、悲劇は「起こりうる事」を書く、とアリストテレスは書いている。この「起こりうる事」は、例えば僕らのよく知ってる言葉なら、「スコシフシギ」とかに置き換えてもいいかもしれない。これはもちろん藤子・F・不二雄先生のSFの定義だ。
例えば社会問題やある個人に起きた事を事実そのままに書くのは、それがリアルな分、共感を呼ぶだろう。特に、その境遇に近い人や、同じような経験のある人には。けど逆に、それが限界でもあり、個別的ということだ。
が、創作物の出来事は、その「リアル」を越えて、境遇とか全く違う人に届くかもしれない。例えばファンタジーというジャンルなんかは、その本質にあるのはそういう普遍性なのだろうと思ったりする。
ある意味ではこれは悲劇だ。ただ、最近よく言われるようになった『バッドエンド』と悲劇とは、ちょっと違うと思う。バッドエンドというのは、ハッピーエンドの期待を裏切って、敢えて『悪い』終わり方をするものである。そこにはハッピーエンドへの期待があるのだ。
けど悲劇というのは、最初からハッピーエンドを期待しているわけではない。悲劇というのは、その主人公を巻き込む運命の巨大な残酷さに震え、それがある種の『荘厳』の域に達するものが悲劇だ。
実は人類史上、初の本格的物語分析論は悲劇論だ。アリストテレスの『詩学』がそれにあたる。ギリシアでは悲劇の公演が盛んで、一番、崇高な芸術と見做されていた。これは読むと結構面白いので、オススメだ。
ちなみに、この『詩学』のなかで、アリストテレスは歴史より悲劇の方がより哲学的である、と言っている。その理由は歴史が個別的な事を語るのに対し、悲劇は普遍的な事を語るからだ。
少し補足すると、歴史は「起こった事」を書くのに対し、悲劇は「起こりうる事」を書く、とアリストテレスは書いている。この「起こりうる事」は、例えば僕らのよく知ってる言葉なら、「スコシフシギ」とかに置き換えてもいいかもしれない。これはもちろん藤子・F・不二雄先生のSFの定義だ。
例えば社会問題やある個人に起きた事を事実そのままに書くのは、それがリアルな分、共感を呼ぶだろう。特に、その境遇に近い人や、同じような経験のある人には。けど逆に、それが限界でもあり、個別的ということだ。
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